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春の終月の一日
いつの間にか春も終月になってしまった。
この春はあまりに忘れられない出来事が多かったように思う。
ヘスティアとレティの対立については、リリーナやイリアの耳にも入ってきたらしい。三人で聞いた話を突き合わせた限りでは、よくある話のようだ。
塔へ入る人間は入らない人間の向上心のなさを、塔に入らない人間は入る人間が側仕えも乳母もない環境で「平民のごとく」生活しようとしていることを、お互い馬鹿にするのだ。
特に女子は塔に入るか入らないかで嫁ぐ家の種類が変わる。若く高貴な娘を好む家は塔の「蓮っぱ」は嫌がるし、女官などを排出する家では「輪なし」は論外だ。
こういうそこはかとない対立は国全体にあって、リカドの泣き所になっている。
下手な双王妃を立てると両王妃がそれぞれに担ぎ上げられてしまったりするのも難しいところだ。
ただ、今回はその対立が変な傷になってしまっているのが辛い。
新入生がヘスティアを意図的に除外していたとは思えない。でもそういう事情なら確実に一人で浮いてしまっていたろう。
一年もすればそんな違和感は消えてしまっていたのかもしれないのに。
ヘスティアが死んでしまった以上、そんなことを言っても愚痴にしかならないのだけど。




