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00059CHAP2JDT

 大狼に乗り滑走する。

 長いこと、そのデュースの背で揺られ、

 やがて草原の先に建物が見えてきた。


 今まで見たことがない。

 あれは何だろう?

 と思って目を凝らしているうち、

 だんだんとその正体が掴めてきた。


 あれは、――お城だ!

 うっそうとした森に囲まれている、お城だった。

 まるでシンデレラ、白雪姫、眠り姫に出てきそうな、お城だ。

 大きくはないし、ややくすんでいるのが気にかかる。

 それでも、女の子が「お城」と言って、

 最初にイメージするのはあれだろう。


 森が近づくにつれ、デュースの速度もどんどん落ちる。

 それにあわせ、お城も木の先に少しずつ隠れていった。

 あんなものまであるのか、影世には。


 森の前まで着くと、デュースはゆっくりと足を止めた。

 首をひねってハッハッと息を吐き、

 俺達の方を見ようとしてくる。


 ここまで乗せて来たこと、褒めてほしいんだ。

 ジョーカーが頭を撫でると、嬉しそうに眼をつむっていた。


 どうやら目的地は、あの城の方にあるらしい。

 森には木々が多い。

 体の大きなデュースでは走りにくくて、中に入れない。


 ジョーカーが先にデュースから飛び降り、

 俺もジョーカーの手を借りてデュースから飛び降りた。



「川辺は、あの城の中にいるのか?」

 と、俺が聞くと、ジョーカーは、

「いや、城の中にはいないよ。

 森の中央に小川が走っていてな。

 その川沿いに、城のお姫さま、お気に入りの場所があるんだよ。

 今日も恐らく、そこだろうな」

 と、答えた。


 城の、お姫さまだって……?


 そんなものまでいるのか、と思い、

 森の方に目をやって、その様子をうかがう。


 森は、奥が暗くて中の方がよく見えない。

 侵入者を拒絶しようとしているのか、

 あるいは心待ちにし、誘っているのか、どうも曖昧な感じがする。

 自分から、わざわざ中に入りたいとも思わない。


 ジョーカーは鼻で軽くフフと笑って、

「純一、あのお城のお姫さまは誰だと思う?」

 と聞いてきた。


「誰だと思うって?」

 と聞き返すと、

「純一もよく知ってる人間だよ。

 もし誰か当てれたら、

 ……そうだな、

 デュースを貸してやろう。

 俺の手を借りずに、しばらく自分で色々なことを試したいというのなら、

 デュースのような足は必要なはずだしな」


 改めて城のある方角を俺は見た。

 俺が知っている人間って、誰のことだろうか。

 目を細めながら、人の顔を思い出そうとする。

 すると、

「ヒントは」

 とジョーカーが切り出す。

「影世は現世の本質を表すということだ。

 津秋と大月、特に津秋の方は現実に生きるタイプだったから、

 影世でも現世とそう変わらずに見えたが、

 あの城を根城にしている人間は、ちょっと違うらしい。

 そして、俺達がここに来た目的が何だったか」


 俺達がここに来た目的が、何だったか……、

 それは、川辺を奴隷化するためにやってきたんだ。

 だがそれとこれがどう関係あるんだ、と思って、「あっ」、と気がつく。

 きっと川辺と、あの城のやつは知り合いなんだ。


 川辺との共通の知り合いなんて、俺にはいない。

 学校の、クラスメイトだけだ。


 それも、影世が本質を表すというのなら、

 川辺とそいつは、かなり親しい仲に違いない。


 そして、お姫さまと言うからには、女の子。


 心当たりのある人間は、

 一人しか思いつかない。


「崎本か?」

 と聞くと、

 ジョーカーはうなずく。


 あの城は、クラスメイト、崎本の居城だったんだ。

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