00050PJBSTK「奴隷作りの提案」
俺は唾を飲み込んで聞き返す。
「クラスメイトを……奴隷に?」
「ああ」
と、ジョーカー。
「それ、どういう意味?」
「どういう意味も、そのままの意味だよ。
単に影世と現世の加減を勉強するのもつまらないだろう?
目的があるとやる気も出る。
お前の言うことを何でも聞くような奴隷に、
クラスメイトを調教するのはどうかって話だ」
話を聞いてても、何を言ってるのかすぐには飲み込めない。
クラスメイトを調教……?
こいつは一体、何を言っているんだ。
「そんなことまで、できるのか?」
「できる。
やり方は様々だがな。
躾けてやれば、大抵のやつは何処かで折れてくるよ。
お前が想像するより簡単だ。
そして影世で堕とすことができたなら……」
「……現世でもそうなる?」
「ああ、そういうことだ。
川辺を殺すのはその後でもいい。どうだ?」
と、ジョーカーが聞いてくる。
現実感がいまいちわかなくて、
俺は曖昧な返事をしながら頷いた。
……大月は殺した。
川辺も、……殺す。
けど、他の奴らのことは深く考えていなかった。
思えば、殺すか、殺さないかの2択だったと思う。
それがここに来て、奴隷に堕としてやればいいという提案……。
影世から現世に戻り、
学校からの帰りの電車の中で、俺はジョーカーの言葉を思い返していた。
バラバラ殺人の犯人はジョーカー。
琥太朗のレポートに貼ってた事件もほとんどそうだろう。
けど、違和感に気づいてる人もいる。
たとえば佐野というおじさんの警察官。
他の事件と絡めて気づいてるかはわからないが、大月の件は他殺と判断している。
バラバラ殺人の方もそうだ。
捜査は他殺を前提にしていたみたいだし、
俺が見た特集記事には、他の事件との関連を……
そうだ、他殺と見られてるだけじゃない、
連続する変死や怪死が関連してると皆、既に気づいてはいるんだ。
琥太朗だって気づくくらいなんだから。
ジョーカーは証拠が残らないから大丈夫だと言ってたけど……
俺は用心すべきだと思う。
特に、俺の周りでは大月が死んだんだから。
動機のある俺は疑われる。
影世のことがバレないよう、
今まで以上に注意した方がいい。
そう考えると、
クラスメイトを扱いやすく堕としておく案も、
もしかすると、理にかなってるのか。
悪くないかもしれない。
いや、想像してみると、
どんな風になるのか、面白そうでもある。
人の心を奴隷に堕とすというのは、どういう感じなんだろう?
電車を降り、
家への道を歩いていると、
携帯にメールが届いてきた。
差出人は、津秋だった。
件名は、「お疲れさま!」
内容は、
「今日は突然ごめんね!
絵の件なんだけど、金曜の放課後でも良いかな?
ウチの部屋掃除しとくから!」
それはハートと顔文字付きで、
女の子らしくて可愛らしいメールだった。
金曜の……放課後。
ウチの部屋を掃除ってある。
これって、……まさか?
い、いや、考えすぎか。
考えすぎか……?
俺は少しニヤけながらメールの返事を考えた。