00038CJD「完全犯罪(二)」
洞窟を出てジョーカーと並んで歩く。
狼のデュースも後ろについてきていた。
目的地は大月がいるところ。
そのはずだったのだが、しかしすぐに違和感を覚えた。
「ジョーカー、こっちの道だったか?」
大月を最初に見た場所と、違う方角に進んでいる気がしていた。
確かあれは、向こうの方だったはずだ。
「こっちで、合ってる。
純一が殺しやすいように、大月は捕まえておいたんだ」
と、ジョーカーは言う。
「捕まえておいたって?」
「ああ。殺すのに逃げ回られたら困るだろう?
逃げないよう、牢屋にぶち込んでおいたんだよ」
そこまで、しているのか……。
ありがたい一方で、その周到さに驚く。
「影世で殺したら、本当に現世でも死ぬことになるのか?」
と聞いてみると、ジョーカーは短く
「なる」
とだけ、答えた。
「死因は?」
「それは殺し方や状況による。
よくあるのは飛び降りや、ショック死」
「ショック死はわかるけど、……飛び降り?」
「状況による。
飛び降りる場所が無ければ当然、飛び降りにはならない。
その場合はショック死になることが多い」
「どうなるかはわからない?」
「そうだな。
ある程度、絞ることはできるが。
今回も飛び降りかショック死のどちらかになるだろう」
現世で飛び降りかショック死になるのなら、俺が殺したとはわからない。
上手いことできてる。
やがて大月がいるという牢屋についた。
人里から離れている。少し盛り上がった丘だった。
人気はない。
コンクリート製の四角い建物。
窓はあるがガラスが張っていない。
中は暗そうで、外壁は汚れている。
あまり綺麗な感じではなかった。
ジョーカーは「俺が作った。これは大月の墓場だ」などと言っていた。
たしかに墓標と言われたらそんな感じもするが……。
建物に入ってもそこに大月はいなかった。
机や椅子、本棚が置かれている。
家具は少なく、殺風景だ。
しかしここで誰かと誰かが争ったようにも見える。
紙が散らばり、家具の位置はめちゃくちゃだ。
「大月は?」と聞くと、
ジョーカーは床を見て片足をトントンとさせた。
地下牢があるらしい。
机をどけると、色の少し違う床が現れる。
鍵を開けて地下牢へと降りた。
地下は湿っぽく、臭かった。
鼻にツンとくる臭いがある。
外とはだいぶ違う。
慣れるのに時間がかかりそうだ。
壁もじめじめしていて、汚そうで触りたくない。
入り口を塞ぎ、
松明に明かりをつける。
聞こえる音は、俺とジョーカーの足音だけ。
デュースは上階に残してきていた。
階段を降りきると、鎖がすれる音が聞こえてくる。
誰かが囚われているんだ。
恐らくは、……大月。
階段を降りきり、牢屋が並ぶ通路を通る。
牢には誰も入っていない。
……一番奥か。
進んでいくと、ジョーカーが足を止める。
牢屋の小鍵を渡され、
顎で、そのまま進めと合図された。
一人で殺れと言いたいんだろう。
心を決めて、俺は大月の居る牢まで近づいていく。




