00032PBK「探偵ごっこ(二)」
探偵ごっこか。
琥太朗もまた、変なことをしているもんだ。
適当に驚いて見せてから一応、
「何か、わかった?」
と、聞いてみたところ、
「うーん。気になることはあるかな」
と、琥太朗は答えた。冗談かと思っていたのに、表情が意外に真面目だった。
「気になること? ……それって何?」
「ちょっと貸して」
と言われ、事件レポートのノートを返す。
琥太朗はそのノートをパラパラめくり始めた。
「被害者の死に方はさまざまだし、老若男女関係なしに被害にあっている。
けど、たとえばこの男の子。あとこっちの子。それから、こっちの女の子もかな。
まぁ要するに全部、未成年の子どもなんだけど、
子どもが被害者のときは、大げさな死に方をあまりしていない気がするんだよね」
「それは……」
と、意味を取りかねた。
「つまり、どういうこと?」
「大人が被害者になるときは悲惨な死に方をすることが多い。
一番最近のバラバラ死体なんかも、特に酷かったみたいだし。
それなのに子どもの方になると、そもそも事件の発生件数自体が少なくなる。
不審死の割には、まるで誰かに、選択的に殺されていっているかのように。そんな感じがするんだ」
「んー、変死や怪死ってそもそも、そういうもんじゃないのか。
危ない事件に巻き込まれたとか、そういうのだろ?
子どもがそういうのに巻き込まれるのは稀だろうしさ」
「そう。それで区別つかないから、わかりにくくなってる。
ただ、子どもの変死や怪死には共通点があるんだよ」
「共通点?」
「子どもたちは、……自分で自分の体を傷つけて死ぬんだ」
「そう……なんだ」
それって自殺じゃないのかよ。
妙な話を聞いてしまったと思って、少し後悔して、勉強に戻った。
帰り際になったとき、琥太朗から思わぬ提案をされた。
それは今までにないものだったから、びっくりした。
「次の日曜だけどさ。純一、ウチに泊まってかないか?」
と、琥太朗が言ってきたんだ。
「えっ、なんで?」
「日曜は学校ないじゃん? 親もいないし、やりたい放題できるぜ」
身を乗り出して提案してくる琥太朗。
しかしあいにくの俺は、即答できない。……たじろいだ。
今まで、友達の家に泊まったことなんてなかったからだ。
それに、日曜は大月を殺す予定だってある。
どうしたものかと、うーん、と悩んでいると、
「実はさ、ライフル銃、純一に貸したやつの他にもあるんだ。他のも見てみたくない?」
と、琥太朗がニヤリと言ってきた。
「それ、……マジ?」
あれ以外にも持ってたの?
「マジマジ。父さんガンマニアだから。沢山ある」
「どんなの?」
「それは見てのお楽しみだ。
俺も全部見たことないし。
一人で覗くのは、なんか怖いから」
これは見てみたい。
あれより格好いいのもあるのかな?
もしあるのだとしたら、この機会を逃す手はない。
「わかった。日曜、泊まる。でも夕方からでもいいか?」
大月は午前から午後にかけて殺せば良い。
「いいよ。純一は、何か好きな食べ物ある?」
「好きな食べ物?」
「うん。用意しておいてやるよ。
親には好きな物食えって言われてるから」
俺は少し頭をひねって、
「うーん、好きな食べ物かぁ。……バナナ、俺好きだよ」
と言う。
そしたら琥太朗は吹き出して笑った。
「なんだよそれ。バナナじゃ話になんないよ。
純一の家では晩飯にバナナ食べてるの?」
「食べてない」
「本当? 何本食べてるの? 俺にだけ教えてよ」
「うるさいな。何でも良いよ。
嫌いな物はそんなにないし、何でも食べるから」
「じゃあ、俺が作るよ。こう見えて、俺、料理、超上手いんだぜ」
「はあ? お前が?」
「そうだよ? 俺は天才シェフだからな。天才・琥太朗シェフ!」
と、どや顔決めて言う琥太朗。どや顔が少し腹立たしい。
「何を作るの?」
「そりゃ俺の得意料理よ」
「……何?」
「お寿司かな」
「それ、料理じゃないだろ」
「お蕎麦も作れるよ!」
「どっちも出前で取れるじゃないか」、と、ひとしきりじゃれ合うと、
「冗談だよ。何か適当なの用意しとくから、楽しみにしてて。
あ、学校に行く準備も忘れるなよ。日曜の次、すぐ月曜だから」
「わかった。忘れない」
友達の家に泊まるなんて初めてだ。
緊張するのかと思ったけど、今は好奇心の方が強い。
他にはどんなライフル銃があるんだろうか。
今から楽しみで仕方なかった。




