00031BD「探偵ごっこ(一)」
八百屋さんで買ったのは、マスカットとバナナ。
マスカットの方は、種なしで皮ごと食べられて、バナナの方は、単に俺が食べたかったから。
フルーツは食べやすくて栄養価も高いし、風邪の人にも良いはずだ。
琥太朗の家の呼び鈴を鳴らすと、琥太朗本人が出迎えてくれた。
琥太朗は部屋着だった。学生服じゃないのは初めて見る。
だが、それが普通の部屋着じゃなかったから、俺は少し焦った。
部屋着と言っても、それはまるでキグルミ姿だったんだ。
トラの、……キグルミだった。
寝間着なのかフード付きのガウンなのか、フードが燈色のトラ顔になっている。
ガウン全体も燈色、トラ模様になっていて、
お腹は白く、胸元からおへそのあたりまでファスナーが通っていた。
後ろにはトラの尻尾までぶらさがっている。
お前それ、……何て格好してるんだよ。
とも思ったけど、ふと、こういうのはデュースが好きそうだな、とも思った。
これを見たら、デュースなら仲間が出来たって大喜びしそう。
そういえば、来月はハロウィンだし、
ハロウィンの日は俺も何か仮装して、デュースと遊んでやろうか。
屋敷の中に招かれながら、そんなことを考えていた。
あまり知られてないが、
ハロウィンのルーツは、イギリスの辺りにあるんだ。正確には、古代ケルト民族。
ただし、子どもたちが魔女やお化けに仮装して民家を訪ね、
「お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ!」っていうのは、アメリカで作られたやつで、
イギリスの方はそれを逆輸入した格好になっている。
アメリカ人は変な人たちだけど、こういうセンスは面白いし、悪くない。
トラのキグルミだなんて、まるで子どもか女の子みたいな趣味だ。
部屋も子どもぽい感じあったし、琥太朗はもともとこういうのが好きなのか。
もしも琥太朗が女の子だったら……? と思って、すぐさま頭を振った。
流石にそれはない。
変なことを考えてしまった。
琥太朗の体調は思ったほど悪くなかった。
お見舞いのフルーツは、勝手にライフルを使ったお詫びということにして、部屋で手渡した。
お見舞いに来たことが余程嬉しいらしく、フルーツはマスカットを特に喜んでいた。
俺もマスカットを摘みながら、バナナを食べる。
どちらも美味しい。たまには良いもんだ。
元気だと言うので、勉強も一緒に少しすることにした。
そこで、ふと、学習机に立てかけられているノートが気になった。
それは前来たときにはなかった気がする。
見出しに、「事件レポート」と書かれていた。
チラチラ見ていて、たまらず聞いてみた。
「それ、……何?」
「それ? ……って、どれ?」
「その、事件レポートってやつ。それ」
琥太朗はノートを取り出して、俺に見せてくれた。
「これ?」
俺が頷くと、琥太朗はパラパラとめくる。
「はい」、と言って、俺に手渡してくれた。
ノートの中には新聞の切り抜きや週刊誌の切り抜きが貼ってあった。
スクラップというやつで、特段注釈があるわけでもない。
ただただ、糊でペタペタと貼ってある。
変死事件や、怪死事件などが中心だった。
一番新しいページには、俺が最近知った猟奇殺人事件の記事も載ってある。
パトカーに呼び止められた日に知った。
あの、バラバラ殺人事件だった。
「これ何なの?」
と聞くと、
「探偵ごっこ」
と、琥太朗は答えた。
「変死や怪死事件を中心に、ここ一年、二年で起きた気になる事件をまとめているんだ。
何か最近、おかしな事件ばかり起きている気がしてさ」




