00021JT「女体化女装・変装計画(一)」
「どうかしたか」
と、ジョーカーが言う。
「いや、ジョーカー、今日は何か良いことがあったのかと思ってさ」
「別に、何もないが」
と、ジョーカーは首を傾げて、
「純一が復讐にやる気だからかな」
と答えた。
傍から見たら凄い会話をしている。
「その件なんだけど、大月を嵌める良いアイデアを思いついたんだよ」
と、俺はジョーカーに切り出した。
ジョーカーは草の上に座り、「話してごらん」と言って先を促してくる。
「影世の大月も、津秋が好きなんだろ?
だったら、大月は津秋で殺そうって思ったんだ」
俺の言葉を聞いても、ジョーカーは黙ったままだった。
きっと、俺が話しやすいように口を挟まないようにしているんだ。
そう思ったから、俺は構わずに話を続けることにした。
「皮膚を再現して、のっぺらぼうになったりすることもできるというのなら、
誰かに化けることだって、できるはずだろ?
それなら、津秋の姿に変装すればいい。
津秋の格好なら、大月は油断する。
大月を油断させて、
そこからドン底に落として、なぶり殺すんだよ!」
想像しながら言っていたら、少しだけ興奮してしまった。
ジョーカーは口を開いて、
「誰が津秋に変装するんだ?」
と、聞いてきた。
俺はジョーカーの目を見て、
「ジョーカー頼むよ」
と言った。
ジョーカーは顔を上に向ける。
わかりやすい。
狐の面からクククと笑う声が今にも漏れてきそうだ。
「本気か?」
「半分だけな。だって俺、皮膚の再現もまだできないから」
「そうか。全部じゃなくて良かった。
俺は津秋にはならないからな。
大月に犯される役なんてまっぴら御免だ」
まぁ、そりゃそうだよな。
大月の相手するのなんて、俺だって嫌だし。
「だが、純一が津秋に変装するのは、手伝ってやるよ。
普通に殺るより大変だと思うが、面白そうだ」
そう言うと、ジョーカーは立ち上がる。
「ついて来い」
と、言われて、
俺はそのまま、洞窟の中まで連れ戻された。
戻ってきたのは、風呂場の脱衣場のところだ。
「試しに俺が今一回だけやってやろう。
津秋の写真とかないか?
無ければ無いでも良いんだが」
「いや、あるよ。ちょっと待ってくれ」
俺は服からスマホを取り出して、津秋の画像を開いた。
今日盗み撮りしたやつだ。
バッチリ撮れてる。
ジョーカーに手渡すと、
「現世の津秋も、可愛いな」
と、ジョーカーがぼそりと言った。
「じゃあ、じっとして」
「目は? 閉じておく? 開けておく?」
「開けてても良い」
ジョーカーの狐面がゆっくり近づいてくる。
面の隙間から澄んだ瞳が見えた。
真剣そうだ。
「まずは皮膚を塗る。
化粧と感じは似てる。
完成形を思い浮かべてやるんだ。
誤魔化しもきくから、そんな難しくもない」
と、ジョーカー。
顎に手を添えられ、もう片方の手で塗るように顔を押された。
持ち手を変えたりして、顔の全面に皮膚を塗ってくる。
一通り終わると、ジョーカーは手鏡を取り出して、俺に見せてきた。
「どうだ?」
と、言われるままに手鏡を覗いてみると、
鏡の中の俺は、日焼けしたように、すっかり小麦肌になっている。
悪くない。
でも輪郭も少し変わってるな。
全体的にほんの気持ち、自分の顔が大きくなってるような気もする。
本当に皮膚を上に乗せているんだろう。
手触りも、皮膚そのものだった。
そして、解説をもらいながら、
目や鼻、口もとと順々に作ってもらったのだが、
「ジョーカー、本当に上手いな……」
鏡を見るたびに驚かされ、
最後には驚きのあまり、開いた口が閉まらなくなってしまった。
俺の顔は、いつの間にか、本物の津秋そっくりになっていたんだ。
自分だとわかっていないと津秋だと思ってしまうほどに。
「練習すれば純一もすぐにできるようになるよ。
次は上半身をやるから、脱げよ。
胸は、どれくらいの大きさが良い? 純一は、巨乳が好きか?」
巨乳が、好きか、だって?
今俺に、巨乳が好きかと聞いたのか?
それ、
「マジで言ってんの?」
と聞くと、
「マジだよ」
とジョーカーは答えた。
今、ここに、胸も作ってくれるのか。