00018CBT「馬場の頼み(一)」
ゴクリと唾を飲んで目が釘付けになっていた。
もっとじっくり見ていたい。
そう思っていた。
正義のために、ぜひ。
お願いしたい。
俺の思考を読んだのか、
「欲しいなら、やるよ」
と、馬場が言う。
びっくりして馬場の目を見た。
無表情だった。
でも観察されている。
俺を試すかのように視線が動いてる。
俺は居心地が悪くて、
写真集やエロ本に目を戻した。
こっちを見ても居心地悪かった。
人にジロジロ見られるのは、苦手だ。
特にエロ本を前にしてるときなんかは。
恥ずかしくなる。
「津秋、可愛いよな。俺も津秋好きなんだ」
と、馬場は続ける。
こいつは全く照れてない。
「え、馬場も?」
おずおずと聞くと、
「ああ、俺も授業中たまに見てるし」
と、馬場が返す。
『俺も』って言い方が引っかかる。
「お前ほどじゃないけどな」
「そ、そんな俺見てるかなぁ?」
と、少し焦りつつある俺。
「見てる。
すごくわかりやすくな。
お前があんまり見るから、
俺はいつか津秋に穴があくんじゃないかと思ってたぜ」
うぁぁ、マジかよ。
こっそり見てたはずなのに、
こんな直球に指摘される日が来るなんて。
……猛烈に恥ずい。
顔が、かあっとなってしまう。
津秋本人にならまだしも、馬場にすらバレていようとは。
ひどい。
馬場はおもむろに、
「俺も津秋とやりたいな。大月が羨ましい」
と言う。
どうやら馬場も二人の関係を知ってたらしい。
「お前もそう思うだろ?」と聞かれて、「あ、ああ……」と生返事。
「まぁ津秋は大月と付き合ってるしなぁ」
と、俺が答えると、
馬場は不思議そうな顔をした。
「付き合ってるかどうかは別によくないか。
俺はやりたいだけだから」
すごいことを平然と言うな、と思った。
顔に似合わない。
とんでもないことを言い切ってる。
「お前は違うの。
付き合うとか面倒くさいよ。
エロいからやりたい。俺はそれだけで良い」
と、馬場は言う。
付き合ったことないからよくわからなかった。
馬場は誰かと付き合ったことがあるんだろうか。
「やるだけの関係なら後腐れもないしね」
「そんなもんかな」
馬場は写真集やエロ本を指して、
「これ、サッカー部の部室に置いてるけど、本当は俺ンだから。お前にやるよ」
と言った。
「どういうこと?」
「そんかわり、お前に頼みたいことがあるんだ」
「な、何だよ」
「俺に勉強、教えて」
一瞬、言ってることの意味がわからなかった。
「勉強?」
「うん、勉強。ダメ?」
「何で俺?」
「頼みやすいから。
断ったら、
津秋の写真盗み撮りしてたこと、皆にバラすし」
こいつ……なんてやつだ……。




