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第258話:俺は悪くない!

 セラに自家発電(意味深)に使われていることを聞かされ、本気で対セラ用に個室を作ろうと決心した日から3日後。俺は再び魔王のいるグレムスに訪れていた。

 今回は《(ゲート)》による訪問なので道中の心配をしないで済むので非常に楽だ。


「さて……時間になるから行くか」


 俺はエルシオンの自宅で《門》を展開すると、周りに見られない様にこっそりと門をくぐった。魔王の城にお邪魔だからな。この門のことを含めて見られるわけには行かないので慎重になるのは当然だろう。

 門をくぐると次の瞬間には、3日前に見た魔王の部屋の光景が広がっていた。よしよし、問題なく移動が出来たな。


「魔王いるのか―――」


 そう言いながら部屋の中を見渡した俺は部屋の隅でゴソゴソと動く物体があることに気付き目を向けた。


「「あっ」」


 結論から言おう。ゴソゴソ動いていたのは絶賛お着替え中の魔王だった。そう、お着替え中だった!!!

 部屋着から着替えようとしていたのか、すぐ近くには乱雑に脱ぎ捨てられた服が転がっており、代わりに魔王の手には俺が訪れたときに来ていた服と同じ物を持っていた。だが、着始めだったのか、その見事な胸を支える下着が丸見えである。ついでに言うと下の方も丸見えだ。いや、下着を着ていた分まだセーフだと思うべきか。

 そんな着替え中の魔王の姿を見た瞬間、逃げる間もなく魔王とも目が合ってしまったという訳だ。


「「……」」


 しばしの間固まる両者。ちなみに俺の感想だけど素晴らしいの一言に尽きます。いや、魔王って本当に体つきがいいんだよ。しかも魔族的特徴は頭の角ぐらいしか無くて、あとは人間と全く同じだから美人な人間を見ているのと変わらないのだ。あと、下着の色は紫か……意外と派手好き?


「い……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 現実に戻って来ることが出来た魔王が顔を真っ赤にしております。そして、なんということでしょう。手にはいつか見た魔法が見えているではありませんか。間違いありません。あれは俺と魔王が初めて会った時に使われた魔法と全く同じです。つまり3日前に使われたばかりということになります。


「ちょっと待て! 落ち着け!」


 慌てて《魔力支配》を使って魔王の魔法をかき消す。


「何で来ているのよ! 変態! 変態!」


 魔法が消されたことには一切触れず、魔王は自分の近くにあった物をこちらへと投げつけてくる。


「ありがとうござい……じゃねぇよ! この時間に来るって言っておいたじゃねぇか!」


 言い訳という訳ではないが、初めて出会ったときの別れ際に3日後のこの時間にまた来ると言っておいたのだ。決してアポイントメントを取っていない訳では無いのだ。あと俺はMではないからな? ありがとうございます。と言いかけたけどあれはお約束ってやつだからな?


「まだ約束の時間前じゃない!」


「5分前だぞ!? 普通呑気に着替えている場合かよ!」


 この世界の人間……いや魔族もどうやら時間にルーズなようだ。いや、それでも5分前に着替えますか? あなたは休み時間に体操服に着替える学生ですか? 学生はしょうがないけど、あんたはダメだろ!? おまけに突然の訪問という訳でもないのに。


 ブンブン物を放り投げてくる魔王を何とか落ち着かせるべく、俺はその飛んで来る物を回避しながら言葉を探した。


「と、取り敢えず服を―――」


そして、取り敢えず服を着させるべきという判断に至り、すぐさま声をかけようとしたのだが、その判断はすぐに無駄になってしまった。

何故か? それは魔王の投げてきた物の中に着替えかけていた服が混じっていたからだ。なので、今の魔王は正真正銘の下着姿という訳だ。あろうことか部屋着まで既に投げられている始末である。


「着替えるからあっちを……あっ」


 さらに魔王自身がそのことに気付いていなかったことが事態を更に悪化させる。ようやく自分が下着だけの姿になっていることに気付いた魔王は隠そうにも隠せないその胸を手で隠しながら、俺から背を向けた。ん? なんか嫌な予感が……


「あはははは、何をやっているのかしら私は、なんで私が魔王なんかやっているのかしら? なんで自分が着ようと思っていた服を投げているのかしら、馬鹿なの? アホなの? しかも男性の前で……もういやだ、いっそ消えてしまおう―――」


「は、早まるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 なんでこんなことになったんだよ!!



==========

「うっ、うっ……もうお嫁にいけない」


 なんとか落ち着かせて服を着た魔王はなぜかベッドの中に潜り込んでいた。


「自業自得じゃねぇか」


「うるさいわよ! バカぁ!!」


「……帰ろうかな―――」


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!! 嘘ですごめんなさい! 私が悪かったので許してください!」


 俺が背中を向けた瞬間、気付けばベッドから這い出て物凄い速さで俺の足元まで来た魔王は、そこで土下座をしていた。


「全く……分かったから顔を上げろ。そんでもって立て。これじゃあ俺が悪者じゃねぇか」


「……はい」


「じゃあ、本題にはいるぞ? 今日来たのはコレを渡すためだ」


 そういうと俺は《倉庫》から腕輪を取り出す。腕輪は全体が黒色で、中央に白い横線が通っており、その白い線からは枝分かれをするかのように、さらに細い白線が外側に向かって描かれてあった。


「? これは……?」


「《意思疎通》を封じる腕輪だよ。これを付けている間は《意思疎通》のスキル能力が無効かされる。少なくともこれを付けている間は神の方から魔王を見に来ることは出来ないはずだ」


「!? スキルを無効化する腕輪……? そんなの聞いたこと無いわよ?」


「そりゃそうだろ。だってこれは俺が作った物なんだから」


「作った……?」


 驚く魔王。そりゃ無理もない。スキルを付与するアイテムですら国宝級の扱いを受ける世界だ。それを簡単に作ったと言ってホイホイ他人に渡すなど聞いたこともないだろ。


「いいから付けて見ろ。そしたら自分のステータスを確認してみろ、おそらく《意思疎通》が見えなくなっているはずだ」


 言われるがままに渡された腕輪を付ける。そして魔王は恐る恐る自分のステータスを覗いてみた。


「……ほ、本当だ……消えている……!?」


「じゃあ、成功だな。これで一先ず、神と言われる者から接触をすることは出来なくなったはずだ。あと、おまけで《情報共有(インターネット)》っていうスキルも付与されたはずだ。以後、なんかあったら俺に向けてメッセージを送るといいよ。直ぐに答えることが出来るからは分からないけど」


 勿論、神の事だからこんなのを平然と無効にして来ることも考えられるが、そこは組み込んでおいた《交換》が機能することを祈ろう。


「じゃあ、次の案件だ。あんたが魔王の座から降りるためだが、要は他の幹部から降ろさないといけないと思われるようになればいい。そこを見計らって自ら魔王の座から降りればいい」


「で、でもどうやって……?」


「即座に思いつくのは魔王が悪い政治をすることだろうな。ただ、それをすると早めに消したがる奴も出てくるから、急速かつ一気にやってしまわないと駄目だな。あとこっちにまで被害が来ないようにしないといけない……そこは流石に3日でどうこう出来るような案は思い浮かばなかったから、もう少し時間が必要だからその間、魔王自身は変な行動をするなよ?」


「わ、分かっているわ」


「じゃあ、今日はこれくらいかな。あと聞きたいことはあるか?」


 そういうと魔王は少し考えたのちに、こう切り出した。


「……全部見たよね?」


「? 何がだ?」


「その……わ、私の……し、下着姿……」


「ああ、それのことか。バッチリ見たよ。眼福でした」


 その後のフォローは大変だったけど。


「~~~~! ぜ、絶対誰にも言わないでよ?」


「言わねぇよ。てか、他人に話せる内容じゃねぇだろ」


「そ、そうだよね……」


「あっ、でもちょっと意外だったわ」


「?」


「紫色とか……意外と派手なのを着けるんだな」


「!?」


 その言葉を聞いた瞬間。魔王の手が俺の胸元を掴むまで僅か0.5秒。(俺から見れば)敏捷性がない魔王にしては意外な速さだった。


「忘れなさい! そのことは全部忘れなさい! いえ、忘れて下さい! お願いします!」


 最初は強気気味な魔王であったが。最終的には地べたに座り込み土下座を開始する魔王。ねぇ、君にはプライドと言うものはないのかな? こんなに土下座されると逆に土下座の価値が薄まると思います。というか土下座ってこの世界では最も屈辱的なことじゃなかったっけ?


「まあ、あれでしょ? たまたまでしょ?」


 一葉フォローは入れておこう。そう思った俺はたまたまだろうと言った感じで声をかけた。これがフォローになっているかは置いといてくれ。


「た、たまたまです! 本当にたまたまです! 赤とか黒とか決して持っていませんから!」


「……」


「……あっ」


 その後、再び魔王を落ち着かせるために必死になったのは言うまでもないだろう。


「いっそ消えてしまおう」魔王だけにってか? AHAHAHAHAHAHA~


 ……すいません。今の事は忘れて下さい。

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