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第248話:エルシオン争奪戦1

「お待たせ」


 アルゼリカ理事長との話が終わった俺は理事長室を出ると、外で待機していたサヤに声をかけた。既にシュラ、セレナの二人は帰宅したのか姿が見えず、サヤが一人残っているだけだった。

 ……いや、一人だけでは無かった。サヤの隣には今日はまだ一度も会っていなかった金髪の縦まきロール……ローゼの姿があった。


「なんだ、ローゼも来ていたのか?」


「……ええ」


「アルゼリカ理事長に会いに来たんだろ? 今空いているはずだから入れば―――」


「いえ、そうではありません」


「?」


「今日、用があるのはあなたですわ、クロウ」


「俺?」


「そうですわ……場所を移しましょう。ここではその会話は出来ませんわ」


「? ……まあ、いいけどさ」


 ローゼは闘技場に来るようにとだけ言い残すと、この場から姿を消した。

 一体なんだ? 闘技場って……何、もしかしてローゼもそっち関係で覚醒しちゃったの? サヤに感化されちゃったの?


「……私も行く……」


 話を聞いていたサヤも闘技場に一緒に行くと言った。


「別にいいけど……なんで闘技場? サヤは何か聞いた?」


 俺の問いにサヤは首を横に振った。どうやらサヤにも何も話していないようだ。話を聞きたくても当の本人は既にいないしな……仕方ない、闘技場に向かってみるとするか。



==========

 闘技場は前の戦争の被害を免れており、魔武大会をしたときのままだった。


「お待ちしていましたわ」


 闘技場に向かってみると、そこにはローゼの姿があった。その手には剣が握られており如何にもこれから戦う雰囲気を出していた。

 この時、俺はただのお話で済まないだろうと覚悟をした。話すだけなら他の場所でも良いのにわざわざ広い闘技場、そして手に持つ剣……一体何が始まるのだろうか。


「で、話とは?」


「聞きましたよ。あなた、エルシオンの領主になったそうではありませんか」


「ああ、なったけど……それがどうした?」


「結論からいいますわ。テルファニ家にエルシオンを譲りなさい」


「……何を言っているんだ?」


「言葉の通りでございますわ」


 オーケー落ち着こうか。

ローゼは一体何を言っているんだ? エルシオンを譲れ? 俺の代わりにエルシオンを治めるとでも言いたいのか? 何故そんな事を?

 そういえば……前に自己紹介したときにエルシオンから来たと言ったら変な反応をしめしていたな……それと関係があるのか?


「……取りあえず理由を聞きたいな。いきなりそんな事を言われてもこっちは全く意味が分からないぜ?」


「……説明……」


「……エルシオンは元々テルファニ家が治める街でしたわ」


「……それは初耳だな」


「とは言っても、今から100年ほど前のお話になりますが……あのヴグラの祖父の頃にとある理由でテルファニ家は全領土を没収されハルマネに屋敷を構えるだけとなりましたわ」


「……ちなみにその理由とは?」


「冤罪……ありもしない罪を着せられましたわ」


 あっ、何となく予想は付くわ。だってあの子供のおじさんだぞ? ヴグラの奴は子供の癖に上納金納めろとか言い出していたし、リーネを集団リンチしたかと思えば、どこで仕入れたか知らないが危ない薬を飲んで大暴れして死んでいったし……散々だった記憶しかないな。


「以来、エルシオンを始めとする領土奪還はテルファニ家の願望となりましたわ。そして戦争でアルダスマン国が滅び、ヴグラたちも死んだ今がチャンスだった……チャンスだったはずなのに……」


「そこに、俺が出て来てしまったと」


 ローゼは何も言わない。代わりに僅かばかりに頷いた。


「……とばっちり……」


 俺の後ろでサヤがポツリと呟く。そうだね、俺何も悪いことしていないよね? 完全にとばっちり受けているだけだよね?


「クロウ……あなたの能力の高さには驚いていますわ……恐らく、今後の領土運営も上手くいきエルシオンは発展することでしょう。ですが、そうなればなるほどテルファニ家の願望は夢のまた夢になってしまう……なら、不可能になる前にここで雄雌を決してもらいますわ! クロウ・アルエレス……私と勝負をしなさい、そして勝負に勝った暁には、テルファニ家にエルシオンを譲りなさい!」


 えぇ……どうしてこうなるの……。


「……アホらしい……そもそもクロウに勝てる訳が無い……」


「アホらしい……? そんな事が言えるのは外部者だからでございますわ! サヤ、あなたに何がわかるの? 私の先祖がどれほどの事を成しえてエルシオンを作ったのかあなたは知っていますの?」


「……それは……」


「知らないのであれば口を出さないで下さいます? これはあなたの問題ではありません!」


「……」


 そのような事は無駄とサヤは言いたいのであろうが、当の本人には無意味だったようだ。むしろ、これは火に油を注いだのと何一つ変わらないような気がする。ローゼに一喝されたサヤは引き下がるほか無かった。戦闘に関しては文句なしに強いサヤではあるが、このような舌戦には弱い傾向がある。まあ、普段の話口調からおおよそ見当は付くけどな。

 しかし、本当にどうしたものか……彼女の口調から察するに本気なのだろう。だが、先ほどから少し気になる事がある。それはローゼの話し方だ。例えば勝負をして勝てばエルシオンを譲れと言った時「エルシオンをテルファニ家に譲りなさい」と言った。

 これが「エルシオンを私に譲りなさい」なら別段気になる事はなかったであろうが、ローゼの言い方から察するに、これはテルファニ家の意志であってローゼの意志では無いように感じる。

 それを確認するために俺は一つの質問を投げた。


「……ローゼはエルシオンにそこまで執着を持っているのか?」


「……何が言いたいのです?」


「ローゼの話し方がさっきから気になるからだよ……まるで自分の意志では無くテルファニ家としての意志とでも言いたいような気がしたんだ」


「……仮にそうだとして何を言うのですか? 自分の意志では無ければ諦めろとでも言いたいのですか?」


「そうだな。諦めてくれるのが手っ取り早く済むから是非そうして欲しいのだが」


「残念ながら、その気はありませんわ。確かにこれは私の本当の意志ではありません。自分の命を救ってくださったクロウと戦うなど私だけの意志では決して行おうとはしなかったでしょう。ですが、私がここで諦めれば、私の父、そして祖父の意志は水の泡となって消えてしまいます」


「なので、戦うか……」


「そうでございますわ」


「……いいよ、その話乗ってやる」


「……クロウ……!!」


 俺の言葉にギョッとするサヤとあっさりと乗った事に驚くローゼ。まあ、俺もちょっと迷った末での選択だけどな。


「ただし条件がある。もし俺が勝てば……俺の言う事を何でも聞け」


「……構いませんわ。では、いざ勝負と参りましょうか」


「……クロウ……本気……?」


「本気も何も、こうでもしないと止められないだろ? まあ、俺が勝てば問題ない話さ」


 流石に殺すのは気が引けるからな(知った顔ですし)適当な所で勝たせてもらいましょう。


 誰かの為に戦う事って本当に良い事なのでしょうか?

 ゲームとかではよく聞く言葉ですが、私は時々それでいいの? と問いたくなります。

 まあ、時と場合によりますけどね。


追記

 新しく人物図鑑を書き始めました。

 名付けて『【異世界転生戦記】~人物図鑑を書いて行く~』です。えっ、タイトルにセンスがない? ……気にするな(キリッ)


 私のプロフィールから移動できますので「こいつ誰だっけ?」となった場合はここをご確認ください。

 また、作中には載せていないステータスも公開しますので「こいつどれくらい強いの?」という場合でも確認できます。

 ただし、内容はネタバレを含みますので閲覧は自己責任でお願いします。

 また、現在私の作業が追いついておらず殆どの人物が書かれていません。作業順位といたしましては主要キャラクター→現在かかわりのあるキャラ→その他となっていますので、ご了承ください。


===2017年===

08/18:後書きに追記

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