第232話:都市国家エルシオン2
「……エルシオンに移転……?」
「そうだ」
エルシオンに移転。唐突な決定を伝えに来たのは現ラ・ザーム帝国グラムス皇帝でした。皇帝が態々足を運んで来たという事に驚きました。そんなお偉いさんと話すのはあまり好きではないのですが魔法学園の最高管理人である私が会わない訳には行かないので会う事になりました。
ハルマネが帝国に占領されたのはつい先日のお話です。当然魔法学園もハルマネにあるので帝国に組み込まれるはずだったのですが。
「残念だが帝国に魔法学園を運営するノウハウは勿論、その時間も人材も資金も不足している。そこで今度エルシオンは帝国から独立して完全に都市国家として運営されることになり、そのエルシオンに完全売却をすることになった。その際、エルシオン新領主はハルマネからエルシオンに魔法学園を移転することを決定したのだ」
とのことです。何と言うか私の知らないところで話が進んでいきますね。もっともアルダスマン王国時代からこの魔法学園は王国の資金を元に運営をされていたので、その決定権の殆どは王国にあったのですけどね。無理もない話です。
それにしてもエルシオンが都市国家として独立するとは……聞けば帝国ではちょっとした反乱があった危うく負けかけたとのこと、そこから逆転勝利をしてたとのことですが、その際勝利に貢献したとある冒険者に街を譲ったとのこと。
いくら勝利に貢献したと言っても街一個を譲るとは……一体その冒険者はどんな交渉をしたのでしょうか。詳しい情報はまだハルマネには届いていないので何とも言えませんが……。
「ちなみにその冒険者の名前は?」
当然、私の興味はそこに行きます。
「クロウ・アルエレスと言う者だ」
……今なんと? 私の耳がおかしくなってなければ今確かにクロウと聞こえたのですが。
「今回、帝国はこやつに助けられたと言っても過言ではない。そのこやつがこの度エルシオンを治める領主となったのだ」
……本当ですか? 嘘では無いですよね?
いや、待って下さいクロウさん、あなたは一体何をしているのですか? ただの冒険者が一都市の領主になった? そんな話聞いたことありませんよ? でも何ででしょうか、彼がやったと言えば謎の納得感を感じらずにはいられません。
私の動揺を感じ取ったのでしょうか。
「……その顔だとあ奴を知っているようだな」
皇帝が彼のことを聞いてきました。
「彼はこの魔法学園で特待生として在学しています。と言ってもここ最近はエルシオンの方に戻っていたのですが、彼には私たちもずいぶん助けられました」
「ほう、お主らもか」
「はい、ハルマネは前回の戦争中に二度ほど魔族に攻め入られたのですが、その2度の襲撃は彼一人の手で撃退されたと言っても過言ではないですね。その時でた負傷者の治療も彼が行ったおかげで致死傷のダメージを受けていた者も数多く助かりました、私も治療してもらいましたよ」
「あやつめ、回復魔法も使えるのか……?」
「そうみたいですね。クロウ君は私たちも底が知れない存在と言わざる言えません」
「ふむ、分からん奴だ。奴隷を持っているようだが、その奴隷も家族だと言い出す奴だ、聞けば今までの経験があ奴をそうさせているらしいが一体どこで……」
「他の世界でも旅してたのでは? 彼ならいいだしかねませんよ」
「ふむ、それもありえそうだな。あ奴なら」
「まあ、クロウ君がエルシオンの新領主となるのであれば私たちも特に問題無く移転出来るしょう。問題は今の生徒たちが何を言いだすかと言う事ですが」
「その辺は、お主やあ奴に任せる。我らはそこまで手を回せぬし、回す気も無いからな」
「回す気ないのですね、いや、多分そうだとは思っていましたけど。まあ、クロウ君とならなんとかなるでしょう」
「……お主は随分とクロウを気に入っているようだな」
「ふぇ!? そ、そうですか?」
そ、そんな風に見えたのでしょうか!? 私はそんなつもりでは無かったのですが、そもそも私は先生です。一生徒に贔屓するのは間違えです、あっでもクロウ君には色々お世話になっているので、す、少しぐらいなら……いやいや、私は(以下ループ)
「……何を考えているかは知らぬが、近いうちにクロウが顔を出すだろう。そこから先はお主たちに任せるぞ」
「えっ、あっ、はい」
私と皇帝の話はここで終了しました。
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「お邪魔しまーす」
そいういって窓からお邪魔をする俺。
「……クロウ君、あなたはドアから入って来ると言う常識は無いのですか?」
「ありますよ。ただ、人を介さないといけないので面倒なだけです」
だって、アルゼリカ理事長に会おうとしたら許可とか待ち時間とかがあるから面倒なんだよね。という訳でいつかやったように窓からお邪魔という訳だ。もっとも前回みたいに急いでる訳じゃないので窓を割って入るような野蛮な事はしない。えっ、窓から入る時点で十分野蛮だって? ナンノコトデショウカー?
「……まあ、いいでしょう。話はグラムス皇帝から聞きました。この魔法学園をエルシオンに移転させるのですね?」
「ええ、そこでアルゼリカ理事長には移転準備をお願いしたいのですが、その様子ですと既に始めているようですね」
「ええ、戦後の後片付けに加えて移転処理と仕事が増えました」
「あ、それはすいません。でもアルゼリカ理事長なら何とかなりますよ。アルゼリカ理事長ですから」
「えっと……それは期待していると言う事でいいのでしょうか?」
「当り前じゃないですか」
「……期待に応えられるように頑張りますね」
アルゼリカ理事長はそう言って一つため息をする。でも何でだろう、その割には顔喜んでいるように見えるのは俺の気のせいだろうか?
「っと、今日来た理由を忘れると事でした。はい、これ」
そういうと俺は束ねられた資料を手渡した。
「? なんですかこれは?」
「移転までの流れと移転場所、その後の生徒や先生たちの身振り取りあえず近場で必要な情報をまとめた資料です」
「は、早いですね」
そりゃあ、徹夜して作りましたもん。考え自体はまとまっていたんだけど、いざ紙に記載するとなるとどうもうまく書けなかったんだよな。なんか書いている途中で《執筆》とかいうスキル入手しちゃうし。
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スキル名:執筆
分類:生活スキル
効果
・文章を書く能力に補正が付く
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「どれどれ……ふぁい!?」
「えっ、不味いことでも書いていましたか?」
「い、いや、この新しい学園の間取り図はなんですか!? 少なく見積もっても今の学園の3倍はありますよ!?」
「いやぁ、エルシオンの中心部に作る場所は無かったのでだったら郊外に作ろうと思いまして、郊外だと俺が作った畑以外に何もないので、作りたいものを作ったらそうなりました」
「しかも、多目的ホールとか食堂に魔法演習場……なんか知らない名前の場所も見えるのですけど? 魔法研究室? なんですかこれ?」
「魔法学園はエルシオンに出来ますからね。どうせなら生徒たちの中で有志を集って魔法を作る場所を作ろうかなって思いまして」
「な、なるほど……」
「それと次のページに寮の説明もいれています」
エルシオンに移転、それに場所は郊外となれば今までハルマネに住んでいた者や新たに魔法学園に入る者も遠い場所に住んでいると移動に不便になる。そこで近場に住む場所を提供しようという魂胆だ。最初はスクールバスなるものでも作ろうかなと思ったが、そうなるとまずエルシオンに規格の整備をしないといけないし、そもそもバスを作らないと行けないし、バスの乗り方も浸透させないといけないしと色々と面倒な事が多いのだ。それなら住む場所を作った方が早いと判断し作る事にしたのだ。
「いや……それはいいのですが、この寮の規模も大きくないですか? 建物自体は複数に分けられているようですけど、これ全部合わせると数百人は住めませんか?」
「もちろん、それくらいははいれると思いますよ」
「え、えーと……これ誰が作るのですか? と言うか、移設予定が3か月後とあるのですが、どう考えても3か月で出来る代物じゃないと思うのですが?」
「知り合いに建築仲間(一人)いますので彼に任せます」
と言うかその建築日数アーキルドが自分で指定したんだけどな。「わしにかかればそれくらい余裕じゃい!」と豪語していたので大丈夫だろう。……君まだ街の方の建設も残っているんだけどね。
それ以外にも寮の周りに商店を作成したりと、この近くは暫くの間大規模な工事が行われるだろう。ちなみにここに元からあった農地は他の場所に移転してかつ規模も大きくしておいた安心しろ農民たちよ。君たちには暫くバシバシ働いてもらわないといけないからな。
「ま、まあ建物は任せますね……あと、この生徒の今後なのですが」
「ええ、彼らも帝国に占領されて生活が一変する者もいるし、そもそも親元を離れれない者もいるでしょう。ですので、移転後に残るかどうかは自由に決めさせて構いません。あと今後入学するのはエルシオンの市民権を持ったものといくつかの例外に限られますが、今いる生徒はその対象外となりますので、こちらから追い出すと言う事はさせません」
まあ、追い出さないだけで出て行くやつはかなりいるだろう。今回の戦争で精神的に参った者は多いはずだ。彼らが学園に残り続けるとは思えない。今の魔法学園の生徒数は百人程度。そこから脱落する者を考えれば残りは半分程度と言った所だろうか。勿論、これ以上少なくなる可能性も十分あり得る。
もっとも今は少ない方が助かる。いくら広大な場所を用意しても運営するには人が必要だ。ただえさえこの前の戦争で学園側の先生も多少なりとも損害を受けている。その人材を集めるのにも時間がかかる。そもそも外から引き入れる事は今の所考えていないので必然的に育成からと言う事になる。育成するにも指導者が必要だし何をするにも人が必要だなー。
「さて、俺もやる事はありますので、あとはその資料を見てお願いします。一応、3日後ぐらいに顔を出しますので疑問があったらその時にお願いします」
「あっ、まって、待って下さい一つ聞きたいことが」
「ん? なんですか?」
ミュルトさんの時はスルーしてこっちに来たけど、こっちにはあまり顔を出せないからあんまりスルーするのも悪な。
「なんでクロウ君は魔法学園を買ったのですか?」
「あー……まあ、理由は色々あるのですけど、一つは帝国が残すことが出来ないと聞きましたので、こっちで買って色々利用しようと思ったのが一つ、二つ目にそもそも学校は作ろうと思ったのですが、何もない所から作るよりは名がある魔法学園の名をそのまま引き継いだ方が何かと都合がいいから……あとは、せっかくアルゼリカ理事長がもう一回頑張ると言ったに、それを無しにされるのは嫌だった……ですかね」
「えっ、それは……」
「という訳で、頑張って下さいねアルゼリカ理事長。応援していますので」
それだけ言うと俺は理事長の部屋を後にした。どうせなのでサヤたちにも顔を出そうかなと思ったが、あんまじ時間的余裕は無いので今回はパスさせてもらった。
エルシオンに戻ったら次は、アレをするかな。
《執筆》スキル超欲しいです。
久しぶりにクロウのステータスを公開します。今回から称号も載せて行こうと思っているのですが、前の分とかはまだ集計しきれていないので、ご了承下さい。
※称号以外の【】内は《鑑定》で見られる数値です。
名前:クロウ・アルエレス
種族:龍人族(龍族・人間)【人族】
レベル:350 【51】
筋力:110,770 【1290】
生命:110,690 【1300】
敏捷:110,310 【1700】
器用:101,021 【2000】
魔力:171,700 【1790】
スキル
・固有スキル
《理解・吸収》《神眼の分析》《龍の眼》《千里眼:10》《絶対透視:4》
・言語スキル
《大陸語》《龍神語》《妖精語》《兎耳語》《獣族語》
・生活スキル
《倉庫:10》《換装:10》《調理:8》《野営:8》《暗視》《マッピング》《魔法道具操作:9》
《家事:7》《演算:6》《商人の心得》《ポーカーフェイス》《詐術:5》《探索:5》
《解析:7》《装飾技師》《土木建築技術》《マップ》《プロジェクトマップ》
《悪人面:1》《執筆:1》
・作成スキル
《武器製作:10》《武器整備:10》《防具製作:9》《防具整備:10》
《装飾製作:9》《装飾整備:9》《錬金術:10》《SLG》
・戦闘スキル
《身体強化:9》《見切り:8》《気配察知:9》《回避:9》《遮断:9》《跳躍:8》《六感:8》
《射撃:7》《罠:8》《不殺:10》《斬撃強化:10》《対人戦:10》《対龍戦:8》
《威圧:8》《一騎当千》《絶倫》《動作中断》《瞬断》《力点制御》《梟の眼》
《指揮》《武神降臨》《掃射》《全属性装填》《精根尽きない者》
《対女性(営み):10》→《夜の天敵:4》
・耐性スキル
《状態異常耐性:9》《火耐性:6》《水耐性:5》《雷耐性:5》《悪臭耐性:2》
(《精神耐性:10》《誘惑耐性:10》)→《無心:5》
・武器スキル
《二刀流:7》《細剣:10》《刀:10》《大剣:10》《槍:9》《投擲:7》《斧:8》《弓:8》
《クロウボウ:8》《鈍器:10》《盾:10》《格闘:10》
・魔法スキル
《賢者の心得》《創生魔法:4》《瞬間詠唱:6》《記憶:5》《明鏡止水:5》
《魔力支配:5》《特異魔法:5》《契約》
・戦術スキル
《人形操り》
・特殊スキル
《龍の力:6》《意志疎通》《変化》《次元作成》
《門》《惑星創世》《共鳴》
・特殊能力
《性質変化:4》《天駆:4》《咆哮:7》《交換》
・筋肉スキル
《筋肉鼓舞》
称号
【初級技術者】【中級技術者】【上級技術者】【魔法技術者】【特殊技術者】
【夜の帝王】【都市国家の主】




