第231話:都市国家エルシオン1
「おいおい、どういう事だよ……」
「帝国が占領したかと思えば、また次の領主が?」
「しかも次は冒険者だとか」
「それも、15歳の若者だろ? まだ復興途中なのに一体この街はどうなるんだ……」
グラムス皇帝がエルシオンを出立する当日の朝。それは急に伝えられた。
伝えられたのはここエルシオンを先の戦争で帝国を勝利に導いた冒険者に送るということだった。当然エルシオンの民たちは混乱した。
龍族の襲撃があり、ついこの前に帝国に占領されたと思ったら次の者へと変わる。しかも、次の領主は帝国から独立してエルシオンを都市国家とするらしいでは無いか。
都市国家は大陸にいくつか存在する。だが、それは圧倒的な軍事力や立地条件的に都市国家にならざる得ない場合が多い。エルシオンは独立した軍事力があるわけでもとりわけ厳しい地形に囲まれている訳では無い。そのため都市国家としては不適切な都市といえる。
市民の心配を他所に皇帝は淡々と話を続ける。街の中央部にあるギルドの前で突如行われだした皇帝の演説は徐々に観衆を増やしていた。
「では、これより新領主に登場してもらう。エルシオンの者どもは彼の元で発展していくことを切に願おう」
皇帝がそう言い終わると、その背後から一人の少年が現れる。
その少年の顔を見たとき、市民の反応は様々だった。知らない者は怪しげな目で見つめ、知っている者は驚きの表情を浮かべ、少年に命を救われたものはその場に跪き祈りを捧げ、ギルド内に存在する店でよくお世話になっている者は驚きと同時に、これからのエルシオンの発展を楽しみにしていた。
「始めて見る者もいるだろう。彼こそはこの度の帝国での反乱の鎮圧にもっとも貢献した者であり、その功績とその持ち前の力を持ってしてこのエルシオンを任せるに値するクロウ・アルエレスだ」
クロウと呼ばれた少年は一礼をすると、エルシオンのこれからを話し始めたのだった。
―――称号【都市国家の主】を取得しました。
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「あっ、おはようございます、クロウさん……じゃなくてクロウ様」
ギルドに顔を出してみるとミュルトさんが挨拶をしてきてくれた。
「クロウ様って……いいですよ、今まで通りクロウさんで」
今までさん付けされてた人からいきなり様付けをされるとすごい違和感がある。
「では、お言葉に甘えて……それにしても凄いですね。一介の冒険者が都市国家とはいえ領主になった例なんてありませんよ」
そりゃないと思うよ。むしろホイホイある方が恐ろしいと思う。
「そう言えば……先日の戦い、街でも噂になっていますよ」
「あー……やっぱり?」
「『獣族十数人が大軍相手に無双してた』とか『大爆発が起きて平原が火山地帯になった』とか『無双してた獣族が少年の前に行くと芯が抜けたかのように腑抜けになって淫乱じみた言葉を発していた』などなど」
うん、知ってた。というか最後! やっぱり噂になってるじゃねぇかチクショウ。
「クロウさんはただの冒険者じゃないと思ってましたけど……やっぱり只者ではありませんでしたね」
「……その只者にはどんな意味が含まれているのですか?」
「えっ? え、いや普通にすごいと言う意味ですよ」
「なら、なんで目が泳いでいるのですか?」
「な、なんのことでしょうか?」
「……まあ、いいです。今日はミュルトさんにお願いがあってきたのですよ」
「えっ、お願いですか?」
「ええ、前回の戦争から街の中枢はギルドになっているじゃないですか?」
「そうですね。前回の領主は戦時中に亡くなられましたし、帝国に運営権を渡していませんでしたからね。あっ、クロウさん渡す準備はもう始めていますよ? 早ければ数日中にでも―――」
「いや、それなんですけど。ミュルトさんに全部委任します」
「そうですか。分かりまし……ファァ!?」
「おっ、ナイスノリツッコミ」
「あ、ありがとうございま―――って違います! どういうことですか!?」
「いや、俺領主のノウハウとかゼロなんですもん。都市経営とかしたことありませんし、そんな人材もいませんし。それなら既に運営を行っているギルドに押し付けるのがいいのかなって」
「だ、駄目ですよ!? ギルドが管理というのは本当に臨時の事で前回みたいに異種族との戦争時だけなんですよ。普通国家間への不干渉のためにやったらダメなんですよ!」
「ちぇ、やっぱりこっちでやらないと駄目か」
「当り前です。ギルドはなんでも屋じゃないのですよ」
「そうなると当面は人材集めかー。よくよく考えたら一都市といえどもそれなりの人数が必要ですよね?」
「そうですね。最低でも10人程度はいないと最低限のことは出来ないと思いますよ」
「うわ、そりゃ簡単には集まらわ……仕方が無い、ミュルトさん時間がある時でいいのでギルドで動かしていた時のことを教えて下さい」
「それは構いませんよ、クロウさんにはお世話になっていますし……でも、私に出来る事は本当に初歩的なことだけだと思いますよ?」
「ああ、大丈夫。残りは引っ張って来るから」
「引っ張る?」
「あ、そうそう、ついでにこれお願いしていいかな?」
そう言って俺は一枚の紙を手渡す。
「なんですかこれ……はぃぃぃ?」
その用紙の序盤辺りを見た辺りでミュルトさんから変な声が発せられる。その声に気付いた他のギルド員がクスクス笑っているのが見えた。それに気付いたのかミュルトさんはコホンと露骨にせき込むと居ずまいを正した。
「魔法学園の移転計画にそれに伴う生徒募集……く、クロウさん魔法学園ってあのハルマネの……?」
「ええ、帝国から買いました向こうも手放したいようだったので」
「か、買ったって……ど、どうするのですか!?」
「そりゃ買った物は仕方が無いですからね。ハルマネからエルシオンに移転させて都市で色々させようかなって、人材集めも出来ますからね」
「で、でもクロウさん、それこそ学校の運営何て……」
「やったことないです(キリッ」
ズコォと地面にヘッドスライディングを決めるミュルトさん、漫画以外で初めて気がするよ、そのリアクション。
「や、やったことないって……」
「まあ、学園は学園の人に任せればいいのですよ。私が関与するのは場所と設備といくつかの魔法指導だけですから」
「そ、そうですね。ギルドの再建時のこともありますし、設備とかはクロウさんに任せても大丈夫と思いますけど……」
「で、ミュルトさんにやって欲しいのはギルドで新規生徒の募集をかけて欲しいのです。条件はそこにあるのをクリアしててればいいので」
「え、えーと、条件はエルシオンの市民であること……だけ?」
「ええ、正式にはエルシオンで市民権を持ちかつ一定の税金を納めている者ですが」
「えっ、に、入学金とかは……?」
「ないですよ。基本税金で賄いますから、だからこそのエルシオンで納税をしている者って制限をかけているのですよ」
「ああ、自国民内で回すと言う事ですね」
「それに資金は足りなかったら私のを使えばいいですしお寿司」
「お、おすし……と、取りあえずギルドに提示しておけばいいのですね?」
「ええ、あとは噂任せで勝手に広がるでしょう。エルシオン内だけなら1か月もあれば十分かな? じゃ、私は用事がありますのでこれにて」
「えっあっ、ちょ―――」
「あっ、分かりやすい所に貼って置いて下さいね」
そういうと俺はギルドを後にして次なる目的地ハルマネの魔法学園へと向かうのだった。
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称号:都市国家の主
取得条件
・都市国家のトップになること
効果
・生命+100
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よくよく考えれば何も知らない人が領主って不安の塊ですね。
な、なんとかなるよきっと。だってクロウですもん。




