第2章 第5話:お茶会で仲良し大作戦!(後編)
リリーの住む特別寮の中庭にある様々な花に囲まれた白いガゼボにて、リリー、アイリス、セシリアの三人で『女子会』という名のお茶会が、クロエとマリーの給仕を受けながら行われていた。
お茶を一口、口にしたアイリスがリリーに話しかけた。
「とても香りが良い紅茶ですね。これはどこで取れた茶葉なんですか?」
「これは北のアララ山脈のふもと、標高2000メートルあたりで取れる茶葉で、朝晩の激しい寒暖差と、発生する深い霧が茶葉に最高の香りを与えてくれるんです。そしてその中でも、今回は春に摘まれる『ファーストフラッシュ』を使っているんですよ」
「それでこんなにも華やかで気品のある香りがするのね」
「アイリス様に飲んでいただきたくて特別に用意させていただいたものなんですよ。もし、気に入っていただけたのであれば、今度うちの商会を通して注文しておきますわ」
「ぜひお願いするわ。今日はこの紅茶に出会えただけでも十分な収穫ね」
そう言ってアイリスは紅茶の香りを楽しむのであった。
一方、セシリアは紅茶などあまり飲んだことがなかったこともあり、なにが良いものなのかよくわからなかった。
カップを見つめながら、少し居心地悪そうにしているセシリア。その様子に、リリーはいち早く気がついた。
(いけない! 紅茶の話ではあまり紅茶慣れしていないセシリアが会話に入ってこれてないわね。でも大丈夫!そのためのケーキやお菓子なんだから)
「ねえ、セシリア。よかったらこのケーキ食べてみてよ!寮の近くのケーキ屋さんなんだけど、とてもおいしいのよ。セシリアに食べさせたくって買ってきてもらったんだからね!」
(リリーが私のことを思って!これはしっかり味わって食べないと)
「そうなんだ。すごく嬉しい。さっそく食べてみるね」
そう言ってフォークでケーキを口へと運んだ。
ケーキを口の中に入れた瞬間、程よい甘さとミルクの香りが口の中一面に広がった。
「リリー、このケーキとってもおいしいわ!ほっぺが落ちてしまいそう」
セシリアは幸せそうに眼を細めてケーキを食べていた。
「気にいってもらえてよかったわ。おかわりもあるからよかったら食べてね」
ここでアイリスの方を向き声をかけた。
「アイリス様のお口にはいかがですか?」
「おいしくいただいていますわ。リリーさんはこういうものを選ぶのがお上手なのね」
「ありがとうございます。でも実はこれらの紅茶やケーキにたどり着くまでに色々試したんですよ。どうしてもお二人に喜んでもらおうと思って……」
それを聞いた二人は嬉しそうな顔をした。
ここでアイリスが素朴な疑問を尋ねた。
「でも私たち今日知り合ったばかりだと思うのだけれど?」
「そうですね。でも以前よりアイリス様のお噂は聞いていましたから。それに今日一日一緒に過ごしてみて、アイリス様は噂以上に素敵な方だと確信しましたわ」
「そんな風に思っていていただけたなんてとても嬉しいわ」
そう言ってアイリスは嬉しそうに微笑んだ。
リリーは次にセシリアの方を向いた。
「私、セシリアのこともすごいと思っているのよ」
「わたしが?」
「うん。だって私とあなたが初めてあった時、あなたは見ず知らずの人のために命を懸けて助けようとしていたじゃない。私はそんなあなたの気高い志を好ましく思っているのよ」
「ホントに?もし本当ならすごく嬉しい」
「本当に決まってるでしょ。だから、私はアイリス様とセシリアのどちらとも仲良くしたいと思っているの」
そう言って美しい花のような笑顔を二人に向けるのであった。
(リリーさんは私と同じぐらいセシリアさんのことも好きということなのね。でも公爵令嬢として決して負けないわ!)
(リリーは本当に素敵な人ね。たとえアイリス様が相手でもリリーの一番になって見せるわ!)
ここでリリーが二人に向けてお願いをする。
「だから、できたら二人にも仲良くなってもらって、三人で一緒に学園生活を楽しみたいって思っているんですよ」
「リリーさん……」
「リリー」
ここでリリーが席を外した。
「ごめんなさい。少しお花を摘んできますわ」
そう言って席を外すと少し離れた樹々の影から二人の様子をうかがうのであった。
ーーー
リリーが席を外したガゼボではアイリスとセシリアがお互いのことを見ていた。
先に口を開いたのはアイリスであった。
「先ほどのリリーさんの言葉お聞きになりまして?わたくしとしてはリリーさんの言葉を受け入れて差し上げたいと思っているのですが……」
「私もそこに関しては異論はありません」
「ではこれからは友人兼ライバルとして付き合っていくのはいかがでしょうか?」
そのアイリスの提案にセシリアは同意した。
「私もそれが一番いいと思います。でもリリーの一番を勝ち取るのは私だからね!」
「いいえ、リリーさんの一番になるのは私に決まっていますわ」
セシリアの宣戦布告にアイリスも強気に返したのであった。
そしてお互いに言いたいことを言ったのち、お互いの顔を見て楽しそうに笑うのであった。
「これからは、公の場以外では友人として『アイリス』と呼んでくださって構わないわ」
「わかったよ、アイリス。なら私のことも『セシリア』と呼び捨てにして!これからライバルとしてもよろしくね」
そう言って熱く握手を交わすのであった。
その光景を目の当たりにしたリリーは心の中でガッツポーズを決めていた。
(私の作戦成功よ!二人が笑顔で握手までしてるなんて仲良しの証拠じゃない。これは席に戻って、じっくりと、どんなお話をしていたのか二人から聞かないと)
リリーは席戻ると二人に声をかけた。
「今、お二人が握手しているところを見てしまいましたわ。いつの間に二人だけでそんなに仲良くなられたんですか?少し仲間外れは寂しいです……」
「リリーのことを仲間外れになんてするわけないじゃない」
「そうですわよ。私達はお友達なんですから。そうだ。よかったらリリーさんのこともこれからは『リリー』と呼び捨てにしていいかしら?もちろん私のことも呼び捨てしてもらって構わないわ」
「それはさすがに失礼にあたるのでは……」
リリーの言葉を聞いて寂しそうにするアイリス。
「正直セシリアとリリーさんが呼び捨てでお互いのことを呼んでいるのを聞いて、羨ましく思っていたの……。どうしてもだめかしら?」
寂しそうな表情をリリーに向けるアイリスであった。
(アイリス様にそんな顔されたら断れるわけないじゃない!ええーい、覚悟を決めるのよ、リリー)
「わかりましたわ!そこまでおっしゃっていただけるのなら喜んで呼ばせてもらいますわ。……『ア、アイリス』」
「はい、リリー」
アイリスは呼び捨てで呼んでもらえたことがよほど嬉しかったらしく、とても幸せそうな顔をしていた。
(ああっ、アイリス様のあの儚げで上品な、それでいて破壊力抜群の笑顔……! 反則よ、可愛すぎるわ……っ! アイリス様の笑顔、眩しすぎる……!)
アイリスの魅力に悶絶するリリーであった。
ここでセシリアがリリーに話しかけた。
「そういえばリリーは冒険者登録してダンジョンに行っているんだよね?」
「リリーはダンジョンに行ってらっしゃるんですか?」
アイリスが目を見開いて尋ねた。
「実はそうなんです。内緒にしていてごめんね、……アイリス」
リリーは慣れないながらに頑張ってアイリスを呼び捨てにした。
「リリー、これからは隠し事はなしですからね!」
アイリスがほほを膨らませてリリーに注意した。
「わかったわ。それでそのことがどうかしたの?」
リリーがセシリアに尋ねた。
「よかったら私たち三人が仲良くなった記念に、三人で冒険者パーティーを組みましょうよ!」
(それってまさにゲームで百合モードに突入した時のオープニングにあった、アイリスとセシリアが背中合わせで戦うあれの再現じゃない!セシリアから最高の提案来たぁ!)
心の中でガッツポーズを決めるリリー。
「冒険者ですか……。ちょっと面白そうですわね。その話乗りましたわ!」
アイリスが賛同したのを見て、その後ろでおろおろするマリーであった。
二人が同意したことでリリーも腹を決めた。
「二人がいいなら私もそれで構わないわ。これからよろしくね!」
「二人とも受け入れてくれてありがとう!当然リーダーは冒険者の先輩であるリリーだからね!」
「わかったわ。でも、もし途中でリーダーやりたくなったら言ってね」
リリーがここで一つ提案をする。
「リーダーとして提案があるんだけど、お互いの名前の呼び方ですけど、三人だけでのお茶会と冒険者の時にお互いに呼び捨てで呼ぶことにしない?」
「それは素敵ですわ!私たち3人だけの秘密の関係ということですね。なんだか考えただけでドキドキしてしまいますわ」
「私もそれで構わないわ。はっきりと区別してもらった方が学園とかで失敗しないで済むと思うし」
こうしてアイリスとセシリアはリリーの提案を受け入れたのだった。
「それでパーティー名はどうする?ちなみにセシリアは何かいい案はある?」
「うーん、私名前とか付けるの苦手だから……。アイリスはどう?」
「そうですわね、『高貴な薔薇』なんてどうかしら?」
セシリアがあから様に嫌そうな顔をする。
「それはちょっと嫌かな。リリーはどう?」
「なかなか思いつかないわ……」
ここでクロエが手を挙げた。
「クロエは何か思いついたの?」
「はい。ただこれには条件があります」
「それはどんな条件?」
「私とマリーさんを冒険者仲間に入れてくれることです」
唐突に名前が出て驚くマリー。
「わ、私もですか?私全く戦えませんよ」
「マリーさんはともかく、クロエは普段から私の護衛も兼ねて、ダンジョンにも何度か一緒に潜ってるから慣れているし、セシリアとアイリスがいいなら構わないわよ」
「私は構わないですよ」
「私も別段問題はありませんわ。それとマリー、よかったらあなたも一緒にパーティーに入って、雑用を引き受けてくれませんか?」
「アイリスお嬢様がそうおっしゃるのなら……」
「マリーさんありがとう!あなたのことは絶対に私が守るから安心してね」
そう言ってリリーは嬉しそうにマリーに抱きついた。
(クロエやマリーさんが付いてきてくれるなら、冒険中もまずい保存食でなく、おいしいご飯にありつけるわ!)
抱き着かれたマリーは、リリーの奇麗な顔が真横にあることにドキドキが収まらなくなっていた。
そんなマリーをアイリスたち三人はうらやましそうに見ていた。
リリーがマリーから離れると、クロエに尋ねた。
「それでクロエ、パーティー名は?」
「『リリーズ・コート』です」
それを聞いたアイリスが口を開いた。
「素晴らしい名前ですわ!この名前はリリーが女王で、私たち4人が(そのリリーに求愛する)4人の騎士ということね」
「まさに私たちにぴったりね」
アイリスとセシリアがクロエの意見に賛同した。
(よく言葉の意味は分からないけど、女王と騎士ってことは向こうの世界で言うところの『アーサーと円卓の騎士』みたいな感じかしら。『アーサーと円卓の騎士』も名前しか知らないんだけどね。それに『リリーズ・コート』ってなんか名前の響きがかっこいいしこれでいいかな……)
「みんながそれでいいなら『リリーズ・コート』でいきましょう!」
こうして、リリーの『アイリスとセシリアのイチャイチャを見たい』という純粋な欲望が、後に伝説のパーティーとして有名になる『リリーズ・コート』を結成させたのであった。
第2章第5話をお読みいただきありがとうございます。
この話で第2章は最終話になります。
今回結成されたリリーズ・コートが今後どのように活躍していくのか、今後の投稿をお待ちください!
お願い:パーティー結成のご祝儀(ブクマ&評価★)を心からお待ちしております(^o^)皆さんのご祝儀で5人の門出を祝ってあげてください!




