斗亜とめのくりだま
弁当を広げた机に頬杖をつき、崎口斗亜はため息をついた。
空き教室にて、昼食を共にする約束をした友人を待っているのだが、それが遅いから、というわけではない。たしかに、時計の針はそろそろ三十分を指そうとしているが、すでに弁当には手をつけている。
教室の前方にある教卓を見て、先週の金曜日の光景がフラッシュバックする。日頃、あまり使われていない教室の片隅で、ズボンを脱いだ二人の男が——……。
そこまで思い出して箸を置くと、いすの背もたれに肘をかけて、天井を仰いだ。
俺も、あの人抱きたいなぁ。
先週の金曜日、片思いしている相手の“行為”を目撃して以来、斗亜の脳内はそのことばかりだった。
大きくため息を吐くと、ほぼ同時に前方のドアが開いた。入ってきたのは待ち人である友人の彼方だった。
「でかいため息だね」
「遅せぇー、やっと来た。先食べてたよ」
「ごめんごめん、片付けが長引いて」
この男が、先日、斗亜の片思い相手を抱いていた当人である。
何食わぬ顔で向かいのイスに座る彼に、罪悪感だとか、気まずそうな雰囲気だとかはいっさい感じられない。
「あーお腹すいた」などとのんきなものだ。
弁当を取り出すのを眺めながら思い返す。
金曜日の放課後、あまり使われない教室に入っていく、あの人と彼方を見かけた。好奇心に負けて盗み聞きしたのが間違いだった。一部始終というわけでもないがへたに動けず、結果的には最後まで聞くはめになっていた。
付き合っているわけではない。セフレでもない。
考えてぼんやりとしていたせいか、彼方が口を開いた。
「何か悩みでも」
「……別にぃ、明日の持久走だりーって思ってただけ」
「確かに。絶対一緒にゴールしようね」
「それ、絶対先行くやつじゃん……彼方早いもんなぁ」
にやりと笑う友人はいつも通りのように見える。それで、ようやく弁当を食べる手が動き出した。
先に食べ終えた彼方は、キョロキョロと室内を見回す。
「ここで食べるの珍しいね。初めて入ったかも」
「……俺も行くの遅くて、いつものとこ埋まってた」
と説明すれば彼方は納得したように頷いた。隠し事やウソをつくしぐさというものは御多分に洩れず彼にも存在するが、今のところは見受けられない。
しばらく普通に雑談をしたあと、いつもの話を切り出す。
「あの人を抱くためにはどうすればいいか」
という話。
「考えたけどさぁ、そもそも、僕のお世辞にも大きいと言えないから、満足してもらえなさそう……」
「そんなことないだろー? でかさじゃないでしょやっぱ、テクニックが大事だよ、テクニックが」
と、おもむろに立ち上がった斗亜は机をつかんで腰を振るマネをする。
事実、先週の彼はそのお世辞にも大きくないというモノをあの人に突き立てていた。
「ちょ、バカやめろ学校で」
「誰もいないじゃん」
「そういうことじゃないでしょー?」
と言いつつも彼方はゲラゲラ笑っている。
そして、実はこの空き教室が現場だったりする。
『お前の今の記憶は消させてもらう』
『そんな……どうして……』
『言いふらされたりしても、困るんでな』
『そんなこと……』
情事後、二人の会話がふつりと止んで、しばらくしてどこかぼんやりした彼方が空き教室から出てきた。
物陰に隠れたこちらに気づくことなく、ふらついた足取りで自分のクラスの方へ歩いていった。
少しして、あの人も出てくる。自分が隠れているところで足を止めたから、バレたのかと思ったが、彼はそのまま過ぎ去っていった。
『初めて入ったかも』
という言葉から、本当に記憶を消されているようだ。嫌だなぁ……どうしたら、そのときの記憶を消されずに済むんだろう。もしかすると、自分も実は彼としていて、消されているのかもしれないし。
そんなことを考えるうちに予鈴が鳴ってしまった。
昼食を終えて教室に戻る最中、あの人が渡り廊下を歩いているのを見かけた。あまりに見すぎたのか、気づかれてしまう。自然を装って視線を逸らすが、わざとらしかったかもしれない。
通り過ぎた頃を見はからってもう一度見ようとするが、すでに校舎に入ってしまっていた。
少し前を歩いていた彼方が振り返る。
「どしたぁ?」
「あー今、あの人いたから、見てた」
「え、僕も見たい」
「校舎入っちゃったよ」
素直に悔しがっている友人を見て、少しの嫉妬が消えた。だって、彼は何も覚えていない。
しばらくして長期休みに入り祖母の家に帰省することになった。斗亜には、両親と兄と姉がいる。
リビングに入ると、兄の和斗は寝転んで、姉の緒斗羽は座ってスマホを見ていた。姉はゲームをやっているようで、真剣な顔で指を素早く動かしている。
定位置のソファに腰掛けて、何気なく聞くことにした。
「なんかさぁ、特殊な能力かき消せるやつとかないかなぁ?」
「はぁ? そんなのねーよ」
寝っ転がったまま、兄はにべもなく答えた。うん、まあそうだろう。想定通りの返事だ。
「マンガじゃあるめーしよ」
「そうだよねー」
「……あたし、聞いたことあるけど」
「え! ほんと?」
ゲームに集中して聞いていないと思っていた姉が、ふと顔をあげて言った。
「何とかさんのマナコって言うのがいいらしいよ」
「何とかさんって誰だよ!」
「マナコ? って目だっけ」
「そうそう」
「で、それをどうすんの?」
と聞いたのは兄だ。いつのまにか起き上がって、興味津々なようだ。それに同調するように斗亜も前のめりになる。
「何であんたまで……そこまでは知らない。うわさで聞いただけだし」
さっそく調べてみるが、何も情報が出てこない。「まなこ 能力 無効化」「まなこ 売っている店」……。目の別名ということや、語源ばかりが表示される。他は、カラコンだったり、義眼についてだったり。
「それってどこで手に入んの? 調べても出てこないし、SNSも誰も書いてない……」
「えー、そうなん、じゃあやっぱデマだったのかも」
「なーんだ、期待させんなよつまんね」
「は? うざ、そもそも兄貴に言ってないし!」
と立ち上がった姉が拳をつくって殴ると、兄は呻き声をあげた。
「やめろゴリラ女!」
「誰がゴリラだよ!」
見慣れた兄妹喧嘩を尻目に斗亜はこっそりリビングから出て、あらためて調べ始めた。
隠語とかだろうか。漢字に変換したり、別の言葉に置き換えたり、色々と調べてみるもやはり目当ての結果は出てこない。
「斗亜、やつどきだぞ、カステラ食べるか」
ふと、祖母のヨネ子がやってきてそう言った。祖母のなかではまだ小学生の頃のままなのだろう。
茶の間にやってきて話を切り出す。
「ねーばあちゃん、マナコって知ってる?」
「眼? 知ってるよ」
「何かそれが良いって聞いて、何とかさんのマナコがいいって……」
テーブルに乗った中皿に二切れ置かれたカステラのうち、一つを頬張り、もう一つも腹に入れた。ザラメがついている好きなやつ。兄と姉はとっくに食べてしまったようだ。
祖母は熱い煎茶でふやかしたオウメせんべいを食べている。さすがにあやふやすぎるか。と思ったが、祖母の返答は想像と違った。
「目のくり玉じゃあないか」
「え……? めのくり、だま?」
ぽつりとそれだけ言って、また黙ってせんべいを食べる。調べてみるものの、やはり目の別称としか出てこない。
ふふふ、と笑う祖母にたずねる。
「それ、何?」
「ジジババしか知らんよ」
「ばあちゃん……ほっぺからよだれ出てる」
頬にある口から鋭い牙と赤い舌が覗く。久々に見た、祖母のもう一つの口。前の家ではよく見たが、ここの家に引っ越してからは見なくなっていた。ちなみに、斗亜のもう一つの口は腹にある。
「んん、思い出した」
「何を?」
「味。美味しいのよ、百目鬼さんの店のは、とくに」
にこりと笑う祖母のもう一つの口が頬をぺろりと舐めた。
ドウメキさんの店のは、ということは他にも売っている店があるのだろうか。
「その店ってどこにあんの?」
「豹造さんの、左っ方行ったとこの隧道にある」
豹造さん、もとい豹造神社の左側の雑木林。そこをさらに奥に行くとトンネルがある。隧道というのはトンネルのことだ。
祖母いわく、そのなかの商店街で売られているらしい。
あの古めかしくて汚いところ。小さい頃、父親に連れられて行ったことがある。あのときは別の入り口からだったけど。いくらレトロが人気といえ、あそこはさすがに近寄りがたい。湿気でジメジメしているし、ほこり臭くて魚みたいな生臭いにおいもする。
「他は?」
「他のはあんまし合わなかった。それに閉じたとこもあるからな……百目鬼さんの店しか近場には残ってない」
「ふーん……」
「見るか?」
「…………。え、あるの?」
「うん。あと一個だけどな」
そう言って、後ろの棚から大きな瓶を出してきた。中には、白い球体が一つだけ液体に浸かっている。
「あっ」
祖母が揺らした拍子に向きが変わって、目玉だということがわかった。気のせいかもしれないが祖母をジッと見ている気がする。
「本当は、先週、[#ruby=火車便_かしゃびん#]が届けてくれるはずだったんだが、こちらに来れなくてな。来年になるんだと。買いに行くには、ばあちゃんは越えられる自信がない」
と祖母は残念そうに言った。
来年か……。
「じゃ、俺が買ってこよっか? 俺も、ちっちゃい子供じゃないから行けるよ」
良い案だと思うが、祖母の顔は曇ったままだ。頬の口までも、への字に口を曲げている。
「こっちっ側からだと、大人でも取り込まれてしまうことがあるからな……[#ruby=荒淵境_あらふちざかい#]を通って、[#ruby=寥冥境_りょうめいざかい#]から行ったほうが危なくない」
荒淵は斗亜の住む地域から自転車で数分のところにある。幼少の頃もそこから隧道商店街に行った。
思い出してはいけない、振り返ってはいけない、引き返してはいけない。
それさえ気をつければ何てことない、古ぼけた商店街だ。
「線を越えれば大丈夫だけれどね」
「線?」
「行けばわかるよ。でも、無理せんでいい」
「わかった、大丈夫だよ。危ないと思ったらトンネルに入る前にやめるし、三つをちゃんと守るよ」
というと、祖母は少し安心したように口角をあげた。
買ってきたら目玉を二つばかりもらう約束を取り付けて、その日は早く寝てしまった。
次の日、祖母の家の近所に住む同い年の友人を連れていくことにして、その場所へ向かう。彼は怖い話が好きなようで、隧道商店街に行くと話したときに「おれも行きたい!」と言うのを二つ返事で承諾したのだ。
周囲を写真に収める友人に、三つの約束を教えながら雑木林を抜ける。すると、目の前に、真っ暗闇に繋がるトンネルの入り口が現れた。雨が降っていたらしく、足元がぬかるんでいる。
トンネルを通る、低く唸るような風の音に、スマホを構えていた友人がその手を下ろした。
「こ、これ、入るの?」
「そうだよー」
「……腕掴んでてもいい?」
「いいよ、足元滑るもんね」
このとき、友人の顔に後悔が滲んでいたことに気づくべきだった。
反発力のある不思議な入り口を通り抜け、後方から聞こえる老若男女どれとも取れない声や気配すべてを無視して、ようやく線を越えた。
いつのまにかかいていた汗を拭ってホッと一安心したのも束の間、友人の足が止まってしまう。腕を掴まれていた斗亜も、必然的に止まることになる。
振り返ると、青い顔をして今にも泣き出しそうな友人が震えながらその場に立ち尽くしている。
「お、おれ……」
「どうした?」
「おれっ、やっぱり、帰る!」
「えっ、ちょっと待っ……」
引き止めようとする前に、友人は踵を返して、つんのめりながらも元来た道を駆け出してしまった。線の内側に足を踏み入れると同時に、あきらかに空気が変わる。
中程まで行くと、目の前の境界線内でびちびちと何かがうごめきざわついた。波打つ黒い何かがすばやく友人にたかる。
友人が、だんだん沼地にハマるようにして沈みだした。思わず駆け寄ろうとしたが、境界線を前にびたっと進めなくなってしまう。
振り返った友人はこちらに助けを求めているようだ。
ただ、距離はさほどではないというのに、その声はとても小さい。表情だってよくわかるのに。
行ってはいけないという理性が働き呆然と見つめるばかりで動けなかった。「助けて、斗亜!」という声がかすかに聞こえる。
友人の背中が、頭が、徐々に闇に沈んでいく。そのうち、抵抗してばたつく手もついに飲み込まれ、とぷんっと波打った。
残ったのは静寂のみ。あんなにざわめいていた闇も、今は凪いでいる。
友人が消えてしまったあたりを見つめ、何もないことを自覚する。
動悸と息苦しさに、足に力が入らなくなり、尻餅をついた。友人の助けを求める表情がこびりつく。
「今のは、友人か」
頭上で男の声がして、見上げると、黒いスーツを着たがたいのいい男性が見下ろしていた。ゆっくり、友人がいた方向を見る。
「は……はい」
駆けてくる音がして、もう一人男性がやってきた。
「[#ruby=京ヶ瀬_きょうがせ#]さん、急にいなくなるのほんとやめてくださいよ……ん? この子は……」
「さあ、ここで尻餅ついてた」
「友人は、どうなったんでしょうか……」
「知らずに来たのか」
「……いいえ。彼にも、伝えたんですが、急なことで反応できませんでした」
彼が沈んだ方を見て気がついた。線が近づいてきている。
「……あまり、ここで話すことではないな。移動しよう」
二人は、それぞれ京ヶ瀬と[#ruby=一宮_いちみや#]と名乗った。
焦って立ちあがろうとしても、足に力が入らない。差し伸べられた手をつかむと、それは意外にも強面な京ヶ瀬のものだった。
手を離して歩こうとしたが、震える足のせいでうまく歩けず、結局二人の肩を借りることとなった。恥ずかしかったが、二人は——主に一宮は震えが収まるまで親切にしてくれた。
「崎口くんは、何の用事でここに?」
一宮は、京ヶ瀬と正反対で愛想がよく、優しそうな人で話しやすかった。
「ドウメキさんという方のお店に行きたくて……」
「……京ヶ瀬さん知ってますか」
一宮は、笑顔を固まらせて、なぜか悔しそうに京ヶ瀬の方を向いた。
「当たり前だろ」
「……ですよね。……崎口くん、店まで送るよ」
「えっ、でも、申し訳ないですし、場所を教えてもらえれば……」
「どうせ、向かう方向は同じだから変わんねえんだよ」
「……はい」
「京ヶ瀬さんただでさえ顔怖いんだからもう少し優しく言ってください」
「あ?」
「だ、大丈夫です。あの、ありがとうございます……」
二人に連れられてやってきたのは、『五百旗目百目店』と書かれた店らしき建物。
「……これでドウメキって読むんですか?」
「いや、イオキメと読む。イオキメヒャクモクテン」
「ドウメキというのは……」
「種族だ、その看板に書いてあるのがそう」
入り口の脇にある看板を見ると、『百目鬼』と達筆で書かれていた。
「知らないで来たのか」
「はい……」
来ればわかるかと思って、いちいち調べもしなかった。来たことがあっても、調べてから来たほうがいいことを理解した。
京ヶ瀬が先に中に入ると、「あれ、京ヶ瀬さんも入るんですか」と一宮が意外そうに言った。
ここで別れることになるのかと思っていたから、少し安堵した。
「僕らも入ろう。お先にどうぞ」
という一宮に促され店に入る。
「いらっしゃいませ。あら、京ヶ瀬くん、今日は何をお探しですか」
店内では、白いまんじゅうのような、見るからにやわらかそうな丸い生き物が、柔和なおばあちゃんといった声色で迎えてくれた。線香の匂いがばあちゃんちを思い出させる。白檀というらしい、落ち着く匂いだ。
「こいつが探してるもんがあるんだとよ」
と京ヶ瀬が斗亜を指す。まんじゅうのような店主は目が合うと細い目をさらに細めて微笑んだ。
「どんな目のくりだまをお探しですか?」
「どんな……」
多くの目が売っているようで、黒、赤、緑と色もさまざま、大きさも数センチほどの物から巨人サイズのものまでたくさん並んでいる。
すぐ横にあった瓶を見ると、触ってもいないのに、中に入ったたくさんの目玉がくるりと回ってこちらを向いた。視線の多さに、ギクッとする。
それに気がついた店主は
「あら……もしかして、あなたはヨネコちゃんの……」
聞き覚えのある名前に、斗亜は店主の方を見る。
「ヨネ子は祖母の名前です」
「やっぱり……いや、懐かしなぁ……ヨネコちゃんはお元気?」
「はい。でもちょっと足が悪いので……」
祖母から、目のくりだまを頼まれて買いに来たと告げると、納得したように案内してくれた。
「これはヨネコちゃんがお気に入りなのよ」
と言ったのは、斗亜を見つめる目玉が入った瓶だった。確かに、昨日見たものと瓶の形が同じだ。目玉に圧倒されて気がつかなかった。
何でも、店主と祖母は同級生で親友だったらしい。そして厳密にいうなら店主ではないそうだが、ここしばらく店主代理をしているようだ。
目玉を購入する際、祖母への手紙を預かった。「中、読まないでちょうだいね」と真っ白い体をほんのりピンクに染めて、恥ずかしそうに笑う姿は、とても可愛らしかった。
「ありがとうね、ヨネコちゃんによろしくお伝えください」
店主に見送られて、目玉に似た模様の布に包まれた、五百旗目特製目のくりだま漬けを持って店を出た。
もしかしたら、中の目玉が見つめているのかもしれないと思うと少し怖いが、ばあちゃんのためだ、と落とさないようにしっかり抱きかかえた。
ここまで付き合ってくれた京ヶ瀬と一宮に礼を言う。
「京ヶ瀬さん、一宮さん、お付き合いしてくださってありがとうございました」
「いやいや、僕も百目店って初めて見て、楽しかったよ」
「一人だとちょっと不安なとこあったので本当に助かりました! お二人がいてくれてよかったです」
と言うと一宮は照れくさそうに笑っていた。京ヶ瀬は始終眉間に皺を寄せて仏頂面だったが、一宮が「あんまりお礼言われることないから困ってるだけだよ」とこっそり教えてくれた。
二人と別れて、隧道商店街の途中の道を曲がり、脇道に入っていく。
来たときは怖かったけど、二人のおかげで楽しかったな。そういえば、誰かと一緒に来た気もするけど……?
天井から滴る水の音を聞きながら出口に向かう。外の明かりが見えたときには、考えていたことも忘れてしまった。
家に帰る道中、見知った顔と偶然会った。祖母宅の近所に住む同い年の友人で、心霊写真やそういうスポット、呪われた人形といったものが好きな心霊マニアだ。この包みも目玉模様だし、好きそう。
「何? その大きな荷物。重そうだね」
「ばあちゃんに頼まれてさ、その帰りなんだよ。何かこれ模様が目玉っぽくない?」
「んー? そうかな。ただの、丸い模様だよ」
あれ、いつもなら何かにつけて写真を撮るのに。もう飽きてしまったのだろうか。
「じゃあ、僕、もう行くね」
「ん、またメッセージする……ね……」
斗亜の言うことを皆まで聞かず、友人はどこかおぼつかない足取りで家の方へと帰っていく。
首を傾げつつ、ともかく買ってきたものを祖母に届けるため、斗亜も帰路についた。
無事、家に着いて、祖母に瓶と手紙を渡すと、それはもう、少女に戻ったかのような喜びようだった。買いに行ってよかった。
手紙を持ってコソコソと自室に戻る姿は、自分にも覚えがあるなと思う。媒体は違えど、友人とのやりとりは見られたくないものだ。
でも、目玉をくれる約束、忘れてないといいけど。




