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とんでもスキルで魔国建国 ~ネットスーパーの供物で魔王を餌付けしたら、最強のグルメ大国ができました~  作者: 限界まで足掻いた人生/大場 雷怒


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第36話:勇者たちのアルバイト生活

デヴォンの朝は、琥珀の翼号の巨大なシャッターが開く音と共に始まる。大広場には既に「天龍の食卓」の味を求める人々が列を成していたが、最近のレンには強力な助っ人たちがいた。


「おい、タカシ! 玉ねぎの千切りがまだ終わってねえぞ! 聖剣の加護はどうした!」


「やってるよ! そもそも聖剣エクスカリバーを厨房で、しかも極薄スライス専用に使ってる勇者なんて、歴史上俺だけだよ!」


厨房の片隅で、第一勇者タカシが叫ぶ。かつて魔王を倒すと豪語していた聖剣は、今や一点の曇りもない鏡面磨きの調理器具と化していた。


聖なる包丁捌き:タカシの精密作業

タカシが聖剣を抜くと、眩いばかりの神聖な光が厨房を包み込む。だが、彼が狙うのは魔物の首ではなく、うず高く積まれた大量の根菜だった。


聖技:閃光の千切り(フラッシュ・スライス)


タカシが光の速さで剣を振るう。一瞬の閃光の後、まな板の上には一ミリの狂いもなく均一に刻まれたキャベツと人参が、山のように積み上がった。聖剣の浄化作用により、野菜は鮮度を保ったまま、包丁では不可能なほど滑らかな断面に仕上がっている。


「……よし。次は豚汁用の大根だ。タカシ、お前マジで腕上げたな」


「レンに褒められると、魔王を倒すより達成感があるのが悔しいんだよ……」


タカシはそう零しながらも、すっかり板についた手つきで次々と仕込みをこなしていく。世界を救う力は、今、確実に目の前の空腹を救うための力へと変換されていた。


神速の配達(デリバリー):ケンタの爆走

一方、店のカウンターでは、第二勇者ケンタが不機嫌そうに、だが完璧な防備でヘルメットを被っていた。


「ったく、神速の勇者様をパシリに使うなんてさ。……で、次はどこ? 街の北側のスラム区まで五秒でいい?」


「ああ。冷めないうちに届けてやれ。今日のメニューは『特製・カツサンドBOX』だ」


レンが断熱材入りのバッグを差し出すと、ケンタはそれを背負い、不敵に笑った。


権能:神速(アクセル・ワールド)


パァン! という衝撃音と共に、ケンタの姿が消える。

デヴォンの街を縦横無尽に駆け抜ける一筋の光。ケンタは神速の力を使うことで、物理的な摩擦を無効化し、料理を一切揺らさず、湯気すら逃さない状態で配達を行う。


街の端で待つ避難民の親子が「あ、光った」と思った瞬間には、目の前にアツアツの食事が置かれている。ケンタはこの「最速記録の更新」をゲームのクエスト感覚で楽しんでおり、街の人々からは「黄金の配達神」として崇められ始めていた。


影で進む「特注リスト」の裏側

正午のピークを越えた頃、ヴェイルがさりげなくケンタに一枚のメモを渡した。


「ケンタ殿、次の配達先だ。デヴォンの外れ、王都へ続く街道沿いの廃屋に『特別な弁当』を届けてほしい」


「は? そんなとこ誰も住んでないじゃん」


「……これからの『仕入れルート』を確認するための重要な地点だ。あと、これ。弁当の底に忍ばせておいた」


ヴェイルが手渡したのは、一見するとただの領収書だが、その裏面には王宮地下監獄の魔力配線図と、衛兵の交代時間が緻密に暗号化されて記されていた。


ケンタはそのメモをチラリと見て、全てを察したように口角を上げた。


「……なるほどね。デリバリーのついでに『下見』してこいってことか。レンも人が悪いなあ、勇者を脱獄の片棒に担ぐなんてさ」


「人聞きの悪いことを言うな。俺はただ、ベルナルドさんに『一番美味い状態のメシ』を届けたいだけだ」


レンはフライパンを振りながら、背中越しに言った。


タカシの聖剣による大量仕込み。

ケンタの神速による情報収集と輸送。

勇者の力が「暴力」ではなく「日常の豊かさ」のために使われるこの光景こそが、レンが目指す美食の王国の雛形であった。


だが、その平和な空気を切り裂くように、デヴォンの北の空から、白く浄らかな、しかし圧倒的な威圧感を持つ「光の柱」が降り立とうとしていた。

状況:勇者の能力を平和利用し、レストランの供給網を確立。ベルナルド救出作戦の準備を密かに開始。


保有ポイント:プラス52,000

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