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新グライフトゥルム戦記~運命の王子と王国の守護者たち~  作者: 愛山 雄町
第十章:「奮迅編」

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第五話「軍師、祝宴に出席する」

 統一暦一二一七年二月一日。

 グライフトゥルム王国中部王都シュヴェーレンブルク、王宮内。マティアス・フォン・ラウシェンバッハ伯爵


 鷲獅子(グライフ)来訪という異常事態について、大賢者と話し合った後、祝宴会場である大ホールに向かう。

 大ホールに入ると、侍従が席に案内してくれた。


 私と妻イリスの席は国王の席に近い最前列。同じテーブルにはラザファムと婚約者のリーゼルだけでなく、ハルトムートと妻ウルスラの席もあった。

 以前であれば、侯爵家が最前列を独占していたが、国王の意向によって決められたようだ。


 国王たちがまだ戻っていないため、いろいろなところで話の輪ができているが、いずれも表情は明るい。


 私も見知った者たちと歓談しながら、鷲獅子(グライフ)の降臨について、大賢者と調整した内容をそれとなく伝えていった。



 しばらくして、パレードを終えた国王夫妻が会場に入ってきた。

 若い二人に疲れた様子はなく、楽しげに話しながら一段高くなった席に着く。準備が整っていることを確認した国王が王妃と共に立ち上がった。


「同盟国からのご出席者に申し上げます。私たちの結婚を祝うために遠路はるばる訪れていただき、感謝いたします……」


 同盟国であるグランツフート共和国からは国家元首でもあるミッター・ハウプトマン最高運営会議議長、フリッツ・ヴェーグマン外交部長、更にはランダル河殲滅戦で国王と一緒に戦った中央機動軍司令官のゲルハルト・ケンプフェルト元帥が出席している。


 もう一つの同盟国シュッツェハーゲン王国からは王太子であるアウグストゥス王子と宰相であるパスカル・ゲーレン公爵が出席している。


 共和国はもちろん、シュッツェハーゲン王国も国家元首級を送り込んでおり、同盟関係が強固であることをアピールする狙いがある。


 政治的な思惑はあるものの、両国の出席者も外交的な駆け引きを行うことなく、祝宴を楽しんでいる。もちろん、演技は含まれているだろう。それに明日以降には我が国の重臣たちとの会合が目白押しだ。


 しかし、若いジークフリート王とエルミラ妃の初々しい姿に心から祝福を送っているように見えた。


「また、我が家臣たちにも感謝したい。このように平和な時に家庭を築くことができたことは皆の努力の賜物である。これからも我が国の発展と平和のために共に歩んでいこう」


 そこで全員が立ち上がる。

 宰相であるマルクス・フォン・レベンスブルク侯爵がグラスを持って拡声の魔導具のマイクを握る。


「国王陛下が可憐でお美しい妃殿下を迎えられたことは真にめでたいことと存じます。お二方の今後のお幸せな結婚生活を祈念し乾杯したいと思います」


 そこで宰相はグラスを掲げる。


「乾杯!」


「「「乾杯!」」」


 このようなスタイルは国王の結婚の祝宴では珍しいらしいが、私やハルトムートの結婚式の話を聞いたジークフリート王がこのような形を希望したらしい。


 宰相や宮廷官房長官であるシュテファン・フォン・カウフフェルト男爵から相談を受けたが、陛下の気性にあっていることと同盟国からの出席者も形式に拘らない者ばかりなので問題ないと伝えた。


 私としては庶民的な祝宴の方が民衆に伝わった時に親近感が湧き、今後の改革にも協力的になってくれるのではないかと思っている。


 祝宴はモーリス商会に準備を依頼したため、料理や酒、装飾など超一流のものが取り揃えられているが、過度な派手さはない落ち着いたものだ。


 また、以前なら貴族の派閥間の争いが祝宴にも持ち込まれたが、反目し合う者もおらず、外国の関係者も我が国との関係を今の良好な状況に維持したいという目的があるため、場を乱すようなことはない。


 外国の来賓から順次、国王のテーブルにいき、祝辞を述べていく。但し、形式ばった祝辞ではなく、友人に対するあいさつに近いもので、国王の結婚という一大イベントにもかかわらず、和やかな雰囲気に包まれていた。


「いい祝宴ね。こんな宴ならドレスを着て出席してもいいわ」


 さっきまでは普段滅多に着ないドレスについてブツブツ文句を言っていたが、宴が始まり、美味しい酒と料理を前にしたことで機嫌が直ったようだ。


「エルミラ様も幸せそう。次はリーゼル殿の番ね」


 イリスがリーゼル・ヴァルデンフェラー伯爵令嬢に話を振る。

 彼女とラザファムは来月結婚する予定だ。


「私も姫様のように幸せになりたいですわ」


「大丈夫よ。そうでしょ、兄様」


 妻はラザファムに話を振った。婚約から二ヶ月も経っていないため、まだたどたどしさが見えるから助け船を出したようだ。


「もちろんだ」


 そう言って優しげな視線をリーゼルに向けていた。

 そんな様子を見ていたハルトムートがからかう。


氷雪(シュネーシュトルム)烈火(フォイエル)のラザファム様もそんな目をするんだな。大人になったものだ」


「それはどういう意味なのですか、ハルト殿」


 リーゼルが首を傾げて聞いた。


「氷雪烈火というあだ名は俺が付けたんですよ。学生の頃のことなんですけど、こいつは気に入らない相手だと、氷のように冷たい視線を向けながら身を焼くような辛辣で容赦のない物言いをしていたんで。そんなラズが優しい目をしていると、ついからかいたくなってしまったんですよ」


「そうなのですか? そんな風に見えてことは一度もないですが」


「やめろ、ハルト。それ以上何か言うなら、お前の学生時代のことをウルスラ殿に暴露するぞ」


 顔を赤くしたラザファムが反撃する。その言葉にハルトの妻ウルスラが面白そうに乗る。


「それは聞きたいな、ラザファム殿。ハルトは王都の時のことをあまり話してくれないんだ」


「いや、聞く必要はない。大した話じゃないんだから」


 学生時代の乗りに戻ったようで、私も妻も笑いが止まらない。

 そんな談笑の中、侍従がおずおずと話し掛けてきた。


「ご歓談中申し訳ございません。エッフェンベルク侯爵閣下、ヴァルデンフェラー様、国王陛下へのご挨拶をお願いいたします」


 ラザファムたちの順番が来たようだ。

 彼らは国王のテーブルの前で楽しげに話し、国王夫妻も笑顔で応じている。国王にとって守役であったカウフフェルト男爵を除けば、ラザファムとリーゼルが最も付き合いが長い。


 ラザファムたちが笑顔で戻ってきたところで、私たちの番になった。

 国王のテーブルの前で一礼し、祝辞を述べる。


「ジークフリート陛下、エルミラ殿下、おめでとうございます。お二人の幸せな笑顔を見ることができ、これ以上の喜びはありません」


「おめでとうございます」


 妻も笑顔で祝福する。


「ありがとう、マティアス卿、イリス卿。私たちが結婚できたのも卿らのお陰だ。これからもよろしく頼む」


 国王がそう言うと、エルミラ妃が笑顔で話し始める。


「マティアス卿、これからもジーク様のことを頼みます。イリスさん、ジーク様のこともお願いしますが、あなたは私にとってリーゼと同じ、姉のような存在です。これからもよろしくお願いしますね」


 エルミラ妃は北の辺境ネーベルタール城から王都に入った際、我がラウシェンバッハ邸に住んでいた。そのため、イリスとは姉妹のように仲が良い。


「もったいないお言葉ですわ。ですが、私にできることであれば、いつでもおっしゃってください」


 そんな感じで話をした後、国王が鷲獅子(グライフ)のことを聞いてきた。


「鷲獅子様がここに来られるとは思わなかった。卿も驚いていたようだが、大賢者殿から聞いていなかったのだろうか?」


「聞いていませんでした。先ほど大賢者様にそのことを聞きにいったのですが、あの方も知らなかったようで驚いたと言っておられました。大賢者様は鷲獅子様が舞い降りる前にここに来られた理由を確認されたそうです。そのお話では、大賢者様から陛下が結婚されるとお聞きになった後、初代フォルクマーク一世陛下の血筋が細くなっていることを思い出され、祝福に来られたようです」


「初代様の縁で来られたのか。なるほど……血筋が細くなっているか……確かに直系ではグレゴリウス兄上が行方不明になったからフリードリッヒ兄上と私しか残っていない。フリードリッヒ兄上にもまだ子供はいないからな。私に期待するというのはそういう意味だったのか……」


 第二王子であったグレゴリウスは帝国の工作員に拉致され帝都に移送されたが、その後行方不明になっている。帝都に入る直前に海の魔獣が活発し、多くの船が遭難したことから、それに巻き込まれ命を落とした可能性が高い。


 第一王子であったフリードリッヒはジークフリート王に王位を譲った後、グライフトゥルム市に移り住み、ライナルト・モーリスの次女ティルラと結婚した。しかし、まだ子供ができたという情報は受けていない。


 エルミラ妃は鷲獅子が国王に期待しているのは子供を作ることだったと気づき、顔を赤く染めている。


「まだお二人はお若いですから焦る必要はありませんよ」


 妻の言葉で国王も自分の発言に気づき、顔を赤くする。


「そ、そうだな」


 初々しい二人を見ながら、私たちは微笑んでいた。


下に前作のリンクがあります。こちらもご興味があれば、よろしくお願いします。

また、地図や世界設定などを集めた設定集もありますので、興味のある方はご確認ください。


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