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72話 陸上自衛隊対超常生物部隊"ヤタガラス"

 その後、現場の後始末や調査は紫電さんや特殊部隊の皆さんに任せて私と雫は真鶴さんの車で探偵事務所に帰宅。


 ついでに灯も帰るのが面倒という事で探偵事務所に泊まることになった。




「ヤタガラス……?」


「ええ、私たちの部隊の名前よ」


 帰り道の車内。運転席の真鶴さんがそう答える。陸上自衛隊対超常生物部隊、通称"ヤタガラス"、それがあの特殊部隊の名前であるらしい。


 "超常生物"というのは勿論、影霊のことだろう。あれを生物と呼んでいいのかは一先ず置いておくとして──


「真鶴さんや紫電さんはその部隊の一員なんですか?」


「まあね」


 驚いた、まさか二人が自衛隊の人だったとは。いや……まあよくよく考えるとしっかり来ることもある。


 二人とも、銃器を当たり前のように調達できるし。確実にタダの一般人じゃないことはわかってた。


「あれ、でも研究所で働いてたとか聞いたことが──」


「あぁ、それも間違いじゃないわ、私ら一時期国の研究所に出向して影霊研究の手伝いしてたし」


 なるほど、そういう経緯があったのか……


「普段は全く頼りにならなそーな探偵やってるのに、色々とギャップがすごいわよね」


 助手席にいる雫がからかうようにそう言ってみせる。


「あ、それ言えてる」


 私の隣にいる灯もそれに同意する。


「ちょっとそれどういう意味〜?」


 と、軽い雰囲気でそう返して見せる真鶴さん。


 ……うん確かに、今の彼女は私が知ってるなんとなくふわふわした感じのお姉さんだ。



 そんなこんなで探偵事務所に、地下のオシャレなガレージに到着。


 私は車を降りる、深いワインレッドのカラーリングをした四ドアのスポーツカー。フロントの"菱"のロゴが照明を浴びてキラリと光っている。


 その車は、これまた見事にカッコいいエアロパーツが各所に施されておりいかにも"走り屋"的な雰囲気が漂っていた。


「こんな車も持ってたんだ……」


 五千万は下らない超高級スーパーカーを持ってるかと思えば、こうした国産のイカした走り屋の様なスポーツカーも持っているとは、幅が広い……


 ちなみに、紫電さんが乗っていたあの車もどうやら真鶴さんのものだったらしい。本人曰く「ちょっと借りてる」とか言ってた。


「血生臭い仕事してるとね、これくらい派手な趣味が欲しくなるのよ。これくらいしか楽しみがないし」


 そう冗談っぽく言ってみせる真鶴さん。趣味ってレベルを超越している様な。


 ホント何台車持ってるんだろう、維持費を考えてみただけでもちょっと頭が……



 そうして、私たちはようやく探偵事務所に帰宅。


「つかれた……」


 中々に大変な一日だった。まあそれだけ結構大事な収穫もあったけど。


 探偵事務所、バッグを机に置き応接用ソファーに座り込む。


「それにしても、あげはのあの格好……写真に収めておきたかったなぁ」


 灯がそんな事を呟く。


「いや……マジでやめて」


 思い出しただけでも顔が赤くなってくる。


 あの衣装は、しっかりと湾岸プラントを出る時にロッカールームでちゃんと着替えてきた。もう二度と出会うことのないだろうバニー衣装よさらば。


「はぁ、もう二度とバニー衣装なんて着たくない……」


「勿体ねえなぁ、メチャクチャ可愛かったのに」


 そりゃどうも。ってか私より……


「私的には、灯のその衣装の方が凄いと思ったけど。似合ってるし」


 灯は今も、高そうなチャイナドレスに身を包んだままだ。チラリとスリットから見える太腿がセクシーだ。


「お、なんだ? 私に惚れた?」


「うん、惚れた惚れた」


 なんて冗談を言い合ってると、探偵事務所に桜子ちゃんがやってくる。


「お疲れ様です、先輩方」


「あ、うん」


 労いの言葉をかけてくる彼女。生意気だけどこういうところはちゃんとしてる。


「何か収穫はありましたか?」


「うーん、どうだろう。取り敢えず今は紫電さんたちが色々施設の調査をしてくれてるけど」


 取り敢えず今はそれ待ちなのかなぁ……


「そうですか、潜入調査が徒労に終わらないといいですね」


 それだけ言って彼女はさっさと探偵事務所を去っていった。


「相変わらず生意気な奴……」


「ま、まぁ。あれでも普段よりは大人しかった方じゃない?」


 普段のやたらツンツンして攻撃的な感じに比べたらまだ可愛いものだったと思う。


「はぁ、まあいいや……あ、シャワー借りるぞ」


 そう言って灯も事務所を出て行った。私は静かな探偵事務所に一人取り残される。


「……あ、そういえば」


 誰もいなくなった部屋の中、私は"ある物"を持ってきたままだったのを思い出す。


 机の上に置いてあるバッグ。Vz61(スコーピオン)……じゃない、これだ。


 "未来予測計画"と書かれたファイリングされた紙束。表紙にはあの人のサイン。


 これ見よがしに「見てください!」と言わんばかりに放置されていたそのファイル。


「見てもいいのかな?」


「……私に聞いてます?」


 と、私の隣に現れた揚羽がそう呟いた。


「どうでしょうか、真鶴にでも渡しておけばいいんじゃないですか?」


「だね、真鶴さんに渡しておくかぁ」


 私は真鶴さんの机にファイルを置いておく、彼女はまたすぐに湾岸プラントに戻っており今ここにはいない。


 「湾岸プラントで拾いました」のメモを添えておく。


「はぁ……シャワー浴びたら寝よ」


 とにかく色々あって疲れた。今日はさっさと休むかな……

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