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71話 後の祭り

「……ったく、霧? 他に影霊の気配は?」


 灯が霧にそう尋ねる。


『なし、ここに感じた反応はあの赤鬼のものだったみたい』


 それは良かった、あの面倒な赤鬼と戦った後にまた影霊が出て来て連戦! みたいな事態は避けられたようだ。


「真鶴さん無事……あれ、あの人どこ行ったん?」


 地下空間を見渡す、確かに彼女の姿が見えない。


 と、その時だった。地下空間の片隅にあった鉄の扉がガコンと開く。そうしてその中から真鶴さんが出てきた。


「あれ、いつの間に……」


 どうやら、この空間内を調べていたようだ。


「その中何があったんですか?」


 私たちの元に歩いてくる真鶴さんに向かってそう聞いてみた。


「知らない方がいいわ」


 神妙な面持ちで首を振る真鶴さん。


 ……なんか、あの中に何があるのか予想出来てしまったかもしれない。


「はぁ、嫌な気分だぜ」


 と、変身を解いた灯。それには凄く同意だ、なんだか胸の辺りが物凄くどんよりとした気分。


「紫電ちゃん、そっちの状況はどう?」


 耳につけたインカムを手で押さえながらそう呟く真鶴さん。どうやら紫電さんと何か会話をしているようだ。


「そこの……第四実験室以外に特に目ぼしい手がかりが残ってそうな場所は無いわね」


 チラリと先ほどの鉄の扉で閉ざされた部屋に視線を向けるながら会話を続ける彼女。


 と、その時だった。バタバタとした足音が聞こえてくる。


 そうして私たちが入ってきた通路から、"MP5K PDW"を携えたいかにも特殊部隊で御座います。みたいな出立ちをした人たちが!


「──っていやいや、追っ手!?」


 一瞬、この施設の黒服連中の上位種かと思い臨戦態勢を取ろうとするが……


 何故か、その人たちからは私たちに対する敵意は一切感じなかった。


「ご苦労様です沖宮一尉、それと退魔巫女のお二人も」


 そのうちの一人がこちらに向かってきて敬礼をする。彼らから感じたのは寧ろ、私たちに対する敬意や感謝みたいな雰囲気だった。


「ご、ご苦労様です……!」


 取り敢えず、私もそう返答しておいた。


「あの……この方たちは?」


「安心して、私たちの味方だから」


 と、真鶴さん。いやまあそれは何となくわかってるんだけど……


「施設の関係者と思わしき人物は全て拘束済みです」


 特殊部隊の男性がそうきびきびとした言葉で報告をする。



 そうしてその後、この地下空間の調査を真鶴さんと彼らに任せて私たちはそこを出た。


「はー、終わった終わった」


 上へ戻る地下通路を歩く。


「ねえ、あの人達は?」


 私は隣を歩く灯に聞いてみる。


『陸自の特殊部隊だよ、影霊専門のね』


 答えてくれたのは霧だった、そんな部隊が自衛隊に存在するとは完全に初耳だ。


「そんな部隊があるの?」


「あー、らしいな。私あんま詳しくないけど」


 灯はあまり興味がなさそうな様子であった。


『あの人達は全国に散っている四家……いや北條(ウチ)を除いた三家の遠縁とか、そういう"素質"を持った人達の集まり』


 なるほど、彼らも退魔巫女(わたしたち)に関わりがある人達なのか……


 そんな会話をしながら通路を歩いていると、正面から見慣れた人物が歩いてくるのが見えた。


「──遅刻?」


 私は彼女に声をかける。


「人聞が悪いわね、それじゃ私がサボってたみたいじゃない」


 退魔巫女姿の雫がそう答える。


「どこ行ってたんだよ?」


「調査よ」


 灯の問いかけに短くシンプルな答えを返す彼女。


『この近くにももう一つ、関係ありそうな施設があって。雫ちゃんにはそっちを調べてもらってたよ』


 あぁ……だからこっちには居なかったのか。


「で、そっちの方はどうだったの?」


「大外れね、もぬけの殻だったわ」


 と、大きなため息をつく雫。どうやら彼女の調査はどうやら徒労に終わってしまったようだ。


「そりゃご苦労さん、こっちも似た様な感じっぽいけどな」


 やれやれ、みたいなジェスチャーをする灯。そうして彼女はさっさと歩いて行ってしまう。


「戻りましょうかあげは、あとは大人達がやってくれるわ」



〜〜〜〜〜〜〜〜



 地上の違法カジノ部に戻ると、そこに待ち受けていたのは先ほどの様な特殊部隊の人たち。


 また、客や従業員達が拘束されていた。その中にはあの横柄な態度の先輩女性従業員も……


「いや〜……私の知らないところでこんな事になってたなんて」


 まさか自分たちの裏でこんなプロフェッショナルな人達が控えていたとは。


「だから言ってたでしょ、真鶴が『素敵なバックアップがついているから安心してね♡』って」


 と、雫。いやいやそんな語尾じゃなかったと思うんだけど……


 その人たちは皆一様に、私たちの事を見ると敬礼して。「ご苦労様です!」と声をかけてくる。


「なんかむず痒いんだけど……私たちってどういう立ち位置なの?」


「まあ、あの人たちにとって"退魔巫女"って対影霊のプロ中のプロだから」


 まあ確かに、いつも影霊と戦ってるのは私たちだ。実際彼らはどんな場面で動いているのだろう?


 そんな疑問を残しながらも。私初めての"潜入調査"は無事終わったのであった。




 ────あれ、てか今更だけど。特殊部隊の人。真鶴さんを"沖宮一尉"って読んでなかった?


「公務員ってそういう事だったんだ……」

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