アリナ姫《ユウト目線》
「なんで……君がここに…?」
「姫様のご友人を助けるのだ! 進めぇ!」
「「「オォォォーーーッッッ!!」」」
な、なんだ!? アリナの後ろから沢山の兵士達が出てきた!
「な、なんだっ!? お、おいお前! 何を呼びやがった!?」
「俺も知らないよ! あ、アリナ!? この人たちは?」
「悪いけど話は後よ! とりあえずコイツらを縛りつければ良いんでしょ!?」
「あ、はい」
それからはもう一瞬だった。瞬く間に捕縛されていくリベンジャーズの人達。大男も縄で何重に縛り付けられ、舎弟の大勢も、鎧を着た兵士たちにはタジタジでその場はすぐに制圧された。
「ではアリナ様! ここらで私達は撤収致します!」
「えぇ。お疲れ様」
「護衛の者をおつけ致します!」
「いいわよ、別に。それに私を守るのはユウトがやってくれるし 」
「えっ、えーと…アリナ? 一体どういう」
大勢の兵士さんたちに睨みつけられ、生きた心地がしない。その内、リーダー格らしき人が前に出てきた。
「貴様……うちの姫様になんのようじゃい?」
「さっきと喋り方違くないですか!?」
スキンヘッドである。片目に傷を負っていて、片手には長い刀を持っています。怖いです。
「うちの姫様に手ぇ出したら分かっとんやろな……? いてまうぞゴラァッ!!」
「ひぃぃぃっ!?」
さっきのリベンジャーズの人達の方がまだ優しかった気がするよ!? こっわ! なにこれこっわ!
「えっ、ていうか、さっきから言ってる姫様って…?」
「あぁん!? んなこと分かっとるやろがい! うちの姫様、アリナ=ウィンドブルム=ランド姫に決まっとるやろがい!」
「アリナが?」
「ふ、ふふん! つまりそういうことよ!」
アリナは長い髪を指に巻き付けくるんくるんと回している。照れているようだった。
「君は…姫様だったのかい!?」
「えぇ…まぁ。でもユウト、敬語とかは良いわよ? だって私達の仲だし…」
「? ごめん、後半声が小さくて聞こえなかったんだけど」
「いいから! ほら!あんたたちも帰りなさい!」
「で、ですが姫様」
「ええから帰れ言うとるやろ! ええ加減にしとき! ウチの言うこと聞けへんのか!?」
「サーイエッサー!!」
イチニ、イチニと足を揃えて帰っていく兵士さん達。というかアリナ? 今の喋り方はなに?あれ?
「…ありがとう」
「ふんっ! 良いわよ別に! でもどうしてもお礼がしたいって言うんなら今度私の家に来なさい!」
「アリナの家って…どこ?」
「ウィンドブルムよ。ここから北へ行ったところにある国」
「じゃあアリナはそこの?」
「第1王女よ。正確には王女候補、だけどね」
「えぇぇぇぇぇええぇぇぇぇっ!?」
アリナはまたもや恥ずかしそうに髪をいじるのだった。
「ユウト君、もう終わったの?」
「あっ、マリナさん! はい、なんとか」
マリナさんが協会の外から恐る恐ると言った感じで入ってきた。腕には眠っているゾーイを抱えている。あの混乱に乗じてゾーイを助けていたらしい。一体いつの間に…
「あら、あなたは?」
「あぁ、アリナ。この人はここの協会の持ち主さんで、同時に孤児院を経営してる凄い方なんだ」
「うふふ、そんなことないわよ。凄いだなんて」
「ちょっ! ちょっと待って!? 距離近くない!? それに、胸がついてッ」
「あらあら、うふふ。助けて頂いたお礼です。どうですか? ユウト君」
「いやっ! あの! あはは……いや待って? アリナ? その手に持ってるナイフはなに?」
「護身用」
「じゃあ護身に使ってくれないかな!? いま俺に向けてるのは何故なんだ!?」
その後、色々あったが、なんとか助かったのだった。ほんとに、なんとか、ギリギリ。
「いやー、疲れたよ。ほんとに」
「なんで俺の部屋に来るの?」
俺はアリナが呼んでいた馬車に乗せられ、王国へと無事に帰ることが出来た。
次の日、コトの事情を王様に話すと、財政管理をしている人に話をつけてくれるとのことだった。意外と話せば分かる物で、安心して任せて欲しいとまで言われた。
「なぁシュン! 凄くないか!? アリナって王女様だったんだって!!!」
「へー、凄いな。驚きだ。全く思ってもみなかった」
「アリナさんと言えば、先日お話した方ですね。ほら、ユウト様のお付の」
「イル、会ったことあったっけ。佐藤さん」
「アリナって言ったよね俺!? 確かに日本じゃ佐藤って苗字は1番多いけどここ異世界だから!」
「分ぁーった分ぁーった。元気が良いな」
そして、ベッドで横たわり気だるそうにこちらを見るシュンに、意を決して問いかける。
「それで、お願いなんだが一緒にウィンドブルム「断る」最後まで言わせて!?」
「嫌だよ、なんでお前と一緒に行かなきゃならん。せっかくの休日、休ませろ」
「遊びに行くのも休みだろ?」
「これが陽キャと陰キャの差な。遊びに行くのは休みじゃねえんだよ。人混み歩くの体力使うの、分かる?」
「分からない」
「だろうよ」
ん、そういや、話しておくことがあったんだった。
「シュン、ごめん!」
「あ? 何だよ藪からスティックに」
「ルー語? じゃなくて、ごめんなさい。1人で勇み足に動いて。考えて行動すべきだった。アリナが来なければどうなってたことか」
「そうかよ、まぁ良いさ。上手くいったんなら。悪いと思ってんなら俺の眠りを邪魔するな」
「そういえばアリナ、なんで俺が教会に居たの分かったんだろうな?」
「さぁな」
シュンは俺と反対方向に寝返りを打ち、手のひらをヒラヒラと振る。『もう帰れ』の合図だ。仕方ない、出直すとしよう。
「ユウト様、風の噂ではアリナさんの部屋に手紙が来たそうですよ。ユウトが危ないから行ってやれって。場所も丁寧に詳しく書かれていたので、信憑性があったとの話です」
「そうなのか! 一体誰が書いたのか、分かります?」
「イル、茶を入れろ。喉が渇いた」
「はい、かしこまりました」
イルさんがぺこりと頭を下げて紅茶を入れに行く。そろそろお邪魔するとしようか。
「じゃあ」
「ユウト、良かったな。あそこにも金が回るようになって」
「ん、あぁ、王様が話が分かる人で助かったよ」
それ以降、シュンは喋ることなく、俺もすぐにドアを閉じた。ちょっと疲れたし、俺もシュンを見習って昼寝しようかな。
ほんと、良かった。無理をした甲斐が有る……って言っていいのか分かんないけど。なんとか全部丸く収まってくれたみたいで。
…………あれ? そういえば俺、シュンに王様の話したっけ? まっいいか。
「シュン君、ちゃんとリューナ様に良く言っててくれるんだろうね!?」
「えぇ、言っときますよ。その代わりあの件よろしく頼みますよ」
「うむ。いやほんと無理言ったからね」
「あの宝物庫の宝売ればいいんじゃないですか?」
「シュン君んんんんぅぅぅぅッッ!?」
えっ、アリナ姫って名前を聞いたことがある?
はは、勘のいい読者は嫌いだよ。リスペクトだと思って許して(はぁと)




