第6配信 元から清楚だけどな?
「ふんふん」
ニコニコの笑みで足元に花が見える錯覚をするほどの浮いた足取りで道を歩くアラサー。
「楽しそうですね、恵那さん」
「あ、わかります?」
「はい、うざったいほどにわかりやすいです」
泣くよ?まぁ、でもそりゃ楽しみよ。だって、
「4期生全員の歌みたの収録ですもん!」
初めて生のお二人と会える!これは最高!
「襲わないでくださいよ?」
「流石にw」
スタッフさんが普段どんなふうに私をみているのかが気になる。でも、流石に襲うわけないよ。
そんなふうに思ってた時期が私にもありました。
「恵那さん、ステイ」
「待っていられるかぁ!」
私の目の前には、
「おはようございます」
と耳が孕むような声音で、若々しい見た目のスイカを抱えた(比喩)女性がいる。
「おはようございます!」
それに、ひまわりの様に明るく跳ねるような声で、少し、童顔の女性がいた。
「この、可愛い彼女たちの前で、待って、いろと、お前は言うのかぁ!」
「はい」
襲うなと言われても、これは無理だ。ってか襲うなって言う方が悪いぞ、これ。
「通報しますよ」
「誰だ!この子達を襲おうとしてるのは!」
「あなたですよ?」
この子達の純潔は私が守る!私が、一番に汚すんだぁ!
収録現場から離れ、不審者を探そうとしたところで、
「はーい、そこまで、クァワイイ子達」
やけにスタイリッシュで、イケメンな女性が変な口調で出てきた。
「収録現場から離れるのはクァワイくないから、やめてね、お嬢様」
え、誰?何?誰?
いつまでも情報が完結しない無量空◯みたいな感じになったが、唯一喰らっていないのが、
「あぁ、こんにちわ、結兎さん」
スタッフさんだった。
「ごめんなさい!誰ですか!」
「あ、ちょっと、ひまり!」
「誰すか?」
「え、恵那さんまで!?」
いやー、そりゃ我慢できんでしょ。………!もしかしてこの人が不審者!?
シュッと私が身構えると、
「うむ、元気なクァワイイ子らだね」
微笑みながらそう言った。
「死ぬほど警戒されてますね、結兎さん」
「まぁ、突如現れた見ず知らずの人間だしね、彼女たちにとっては。当たり前の反応さ」
「いやまぁ、誰かは予想つき始めましたけどね…」
うん、まぁ、この喋り方って、あれだよね。ってか、冷静に考えるとスタッフさんと話してる時点で関係者だし。
「まぁ、ここは名乗ったらどうですか?」
「ふむ、では、クァワイらしく名乗りをあげようかな」
しなやかに、しかし、芯があり華麗な礼をして、彼女は名乗りあげた。
「クァワイイとは何か、それを探究し、深め、世に広めることが生きがいの、ナルク・エルトだ」
しばしの沈黙。その場にいた誰もがその華麗な名乗りに見惚れていた。
そして、顔を上げ、私の目を一身に見つめてきた。
「……何か顔についてます?」
沈黙を破るよう、そう問うと、
「いや、何も」
絶対何かある。そんな顔してる。ニヤついてるもん。
そんなふうに怪しんでいると、
「君は、クァワイイね。とても理想に近い」
そう、呟いた。あまりに小さい声だったので、聞こえなかったが、まぁ、いいだろう。彼女のような人が、聞こえない声で言うって言うには意味があるだろうし。
「いや、普通に本名で名乗ってくださいよ」
「え、スタッフさん…」
「雰囲気が……」
「すげぇ!」
えぇ、スタッフさん……。まぁ、それもそうか。ここは事務所、本名で呼ぶのが一般的だしな。
「おっと、これは失礼。私の名は樫見結兎だ。どっちの名で呼んでもらっても構わない」
「それじゃ、結兎さん、いや、先輩?」
「さんでいいよ」
「わかりました。結兎さん、今回はどんな要件でここに?」
「あぁ、それはね」
「それに関しては私から説明するわ」
「クァワイイスタッフよ、私に出番はくれないのか?」
「はい」
「クァワイイ返事だ」
基準がよくわからない…。
─────
───
─
「今回の概要はこんな感じです」
「なるほど」
「ほへぇ」
「すごい!」
「だからこそ、私なんだよ」
今回の歌ってみたは結兎さんが監督をするらしい。その理由としては、
「にしても、3期生のアイドルとしての可愛いさが少ないからって、ねぇ」
「失礼だぞ!」
「うむ。可愛い」
「恵那さん、ハウス」
「私の力を持ってしてもできるかわかんないのが恐ろしいね。いとクァワイイ」
そう、3期生のアイドルとしてのとても少ない可愛いさを限界以上に引き出すのが目的らしい。
「私だって最初は断ったんですが…」
「クァワイらしさがどうも欠けすぎてるらしくてねぇ」
「直々に頼みがきたと」
まぁ、九割は私が原因だな。だって、私以外の二人とも、結構アイドルっぽかったもん、初配信。アイドル路線で2人は行って、私は初の、いや、二回目かな?のネタ路線に行くつもりだったんじゃないかな。でもまぁ、私がそれをぶち壊したんだけどね。
「ちなみに私もその計画に入ってます?」
「えぇっとですね…」
「入ってないね」
ですよねー。でも、入ってたらそれはそれで驚きだし。
「でもね、君だけ除け者じゃクァワイくない。そこで、だ」
徐に間を空けて、こう言った。
「アイドル人格を作ってみないかい?」
「アイドル人格?」
なんだそれ。何?人格増えんの?ネタ枠のエナとアイドル枠のエナどっちもいることになるの?
「アイドルとして君をまたデビューさせるんだ」
「今だって十分アイドルですけど?」
「あはは!」
「えwガチでw?」
「アイドル……?」
おい…。まぁ、本音じゃないがな。にしてもまぁ、アイドル人格かぁ。憧れがないって言えば嘘になるけどなぁ。
「あぁ、恵那さん。そういえばもうすでにアイドルとしてのV体できてますよ」
「私に、聞いた、意味、で検索って可能ですか?」
「検索するまでもないよ。答えはNOだ」
「今の時間なんやねん」
「方言出てるぞ!」
でもガチかぁ。これで私もアイドルかぁ。
「あ、それにエナだけにV体作るのは不公平かと思って残りの2人の分は新衣装を作るって形にさせてもらったよ」
「やったぁ!」
「ふふ、とっても嬉しい」
うむ。可愛い。
「恵那さん、近い。離れなさい」
チッ。少しだけだし。ほんの少しだけ近づいて匂い嗅ごうとしただけだし。先っぽだけだし。
そんなアホみたいな一幕をしているうちに結兎さんは整理をし終えたようで、
「これで大方説明は終わったかな」
パッと笑顔で私たちに話しかけた。
「何か質問はあるかな?」
「な、なぎっすね」
「ないでーす!」
「ないですね。……なんでチー牛返事?」
「ありませんね。それとこの後恵那さん、説教です」
「え゛」
やだぁ…。
「それじゃ、収録行こうか!」
─────
───
──
そのあと、収録はすんなり終わった。
まぁ、すんなりとは言ってもあの喧騒まみれだった昼から日が落ちたぐらいまでは続いたが。
収録が終わった今は、帰るために駅へ向かっている。
打ち上げも考えたが、どうやら2人は未成年らしい。成人は一応しているらしいが。でも、私が飲酒して何をしでかすか分からんし、未成年を飲み屋に連れて行ったってネットに書かれたら色々終わりそうだ。
だからまぁ、今回はなしになった。
「はぁ!」
やたら元気なため息をひまりちゃんが吐いた。
「あら、ひまりがため息なんて珍しい」
「え、あれってため息にカウントして良いんですか?私聞いたことありませんよ?あんなため息」
「あんなとはなんだ!です!」
「語尾が変になっちゃってるよ」
「喋り方は気を付けなかあかんよ」
「経験者は語る、か」
そんなふうに談笑しながら歩いていると、
「あ、私たちはこちらですので」
「あ、そうなんですね」
「お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
それぞれ挨拶を交わし、帰った。
ちなみに歌みたは一ヶ月後にプレミア公開されるらしい。
「楽しみだなぁ」
今から夜が眠れない!
………小学生かな?あと普通に一ヶ月眠れないとか◯ぬぜ?
─────
───
─
プレミア公開当日。
・おっほ
・MV凝ってんな
・いいゾォ!
・可愛い
・ナイスですねぇ
・声がやっぱいいな
・ひふふ
・凄くいい
・尊い…
・…………?
・?
・……?
・……???
・誰?
・え?
・何この清楚な人
・ん?角?
・これエナ?
・えぇぇええぇぇえぇぇ!?
・まじかぁあぁぁ!
・ウッソだろこれ!
・清楚だぁ!このエナ
・え、てか変わりすぎじゃね?
・やばいよこれ
・くっそマジか!
・wwww
・笑うしかねぇwwww
・誰ぇ……
・別人やろこんなん
・別人です(確信)
・清楚なエナでセナは?
・ええなそれ
・まじで誰ぇぇ!
・あぁ!もう終わってしまう!
・セナァァァァアア!
このように阿鼻叫喚の嵐に包まれて、終わった。
この後、本格的にアイドル人格としてのエナ、『セナ』が定着していった。
次回もよろしくお願いします。




