炎と闇の中に落ちたユリウス
城壁には数千人の弓矢を構えた弓兵達と木の杖を構えた魔導兵達。
堅牢な城門を前に攻撃を防ぎながら城門を破壊する機会を伺っていると、橋ごと我々を葬り去る為に『魔導爆雷イフリートのため息』を数百個投げ込まれた。
親父達とユキミを助けられてよかった……
背中に刺さる矢や、様々な所に当たる魔法。
そして『魔導爆雷イフリートのため息』の爆炎が身を焦がす!!
そして足場の橋を失い、俺は意識を失った!!
【グレイ視点】
グレイ達は落ちる橋を急いで戻り、第二鉄城門まで引き返していた。
橋は真ん中辺りまで崩れ落ちている。
その闇の中にユリウスが落ちて行くのを……
「イヤ!!!! イヤ~~!!!! ご主人様~、ご主人様~」
ユキミちゃんが取り乱し、闇の中に飛び込もうとしている。髪の毛を振り乱し、大きな瞳から大粒の涙を流して必死に手を伸ばしてユリウスの後を追いかけようとする。
「ちょ、ちょと待っててくれ。ユキミちゃん。あのバカ息子が簡単にくたばる訳がないから……」
俺はは必死に引き止めるがユキミちゃんは混乱していて、しょうが無いのでユキミを気絶させて一時的に撤退した。深い闇の底に向かって
「ユリウス、死んでんじゃねーぞ!! 死んでたら俺がぶっ飛ばすからな。ユキミちゃんをこれ以上悲しませるなよ!!」
宿営地に帰りユキミちゃんを寝かせて、状況を確認する。城塞都市ジュルソヴァ・ジャグーザに掛かる唯一の道である橋は落とされて残る道はない!!
ユリウスは落ちて生死は不明!!
状況は良くないが……少しこのまま時間を置くしかない。ユリウスが戻るかもしれないしな。
その後、三日経つがユリウスは戻る事もなく過ぎていく。
「ユキミちゃん、さっき連絡が来てフローラちゃんの策が成った!! 俺達には城塞都市ジュルソヴァ・ジャグーザを陥落させる!! ユキミちゃんはどうする!? ここでユリウスの帰りを待つのかい!? 向こう側に渡っているかもしれないよ」
崖の方に向いて一日中座り込んでいるユキミちゃんに声をかける。ユキミちゃんはピクリと肩を震わせてから
「お義父様、申し訳ありませんでした。大丈夫です。ユキミも参ります!!」
ユキミちゃんは立ち上がり今まで泣きはらした顔を拭うとしっかりと前を向いて歩き出した。
強い子ださすがに不知火の副リーダーだけはあるな!! 気持ちをもう切り替えているな。
「じゃあ、行こうな。城塞都市ジュルソヴァ・ジャグーザは今日で陥落させるぞ!!!!」
俺達は兵達の一部を残して城塞都市ジュルソヴァ・ジャグーザより離れて一日の距離にいるアルブル王国兵の元に訪れると、
「皆様、お待たせしました。アンフェールホールを渡れる橋の作成を終えました。どうぞご武運を……」
そこには樹木魔法で作られた道がアンフェールホールの底の方に向かい伸びている。それは上からは見えない所まで降りてそこには橋が架かっていた。
アルブル王国兵はこの階段と橋をツトラ王国に悟らせないように樹木魔法を行使していた。
時間はかかったがこれで城塞都市ジュルソヴァ・ジャグーザを陥落させなくてもツトラ王国の王都へ行くことが出来るがユリウス捜索の為に、グレイ達は攻略する為に引き返す!!
まる一日かかり……城塞都市ジュルソヴァ・ジャグーザに帰って来た。
「ここで夜まで待って城塞都市ジュルソヴァ・ジャグーザに夜襲をかけるぞ。一般人には、手を出すなよ。夜までここで待機!!」
それぞれが夜までの時間を過ごして夜になる。
その夜は空に雲が広がり月や星の輝きすら見えない、闇夜が広がっていた。少し寒い空気が肌を刺す。
城塞都市ジュルソヴァ・ジャグーザはツトラ王国側は高さがある程度は、フラットで防壁も高さは無かった。
アンフェールホールを越えられるのを想定していない構造だからだ。
しかもアルブル王国側の橋が落ち自分達を脅かす者はいない。城塞都市ジュルソヴァ・ジャグーザは連日、お祭り騒ぎであった……
グレイ達、サウス辺境伯軍は街道を外れたところから確実に城塞都市ジュルソヴァ・ジャグーザに近づく。闇夜は都合良くグレイ達の姿を包み隠し、お祭り騒ぎはグレイ達の音を消す。
まさに後ろから忍び寄る死神のように、喉元に突きつけられた鎌の存在に気がついた者はいなかった!!
「クソ~!! 中の奴ら飲んで騒いて羨ましいな。こんな時に門番なんて……やってらんねーよ!!」
「そうだよな。俺だって酒場のレミーアを誘うはずだったのに……」
門番はツトラ王国側でそこにいるだけの仕事に嫌気がさしていた。仕事だからやっているだけ。そこに死神が迫っているとも知らずに……
「それにしても、最後に橋を壊した時に突っ込んで来た連中は憐れだよな。本当は奴らの本隊を全て巻き添えにするつもりだったらしいぞ。だけど、やったのは先頭にいた黒髪だけだったんだよな!! アンフェールホールに落ちていくとき、俺は思わず笑って……」
言い終わる前に門番の二人は氷の棺の中へ……
「ご主人様……」
ユキミは氷漬けになった門番の前で身を震わせていた。




