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青色エレジー②

『すっごぉーい! これはおっきいよぉ☆』


 いちいち、製作者が狙ってやっているとしか思えないセリフが聞こえる。


▯◎フォロー

自身に防御スキルが発動中、味方一名を対象にする事により、それに追従する。

ただし追従は能動的に行われ、このスキルはサポートに留まる。


 とりあえず私が今、最も必要であると思われるディフェンススキルのガチャを引いてみたわけだが、結果はこの通りである。


「具体的に、どんなスキルなんだ?」


「ちょっと説明しずらいけど、スキルで指定した対象に自分の意識が吸い寄せられるような感覚が発生するようになるにゃ」


 これが防御スキル扱いと言う事は、ようするに某RPGでいう”かばう”的なスキルなわけだろうか。


「ハズレだな」


 私が欲しかったのは自身を強化するスキルであり、他人に対してどうこうといったスキルはお腹いっぱいだ。


「それは仕方ないにゃ。”魔法少女・猫猫”の本分はあくまでサポート係な訳で、防御は本来、サンの役目だにゃ」


「スキルポーションは、その役割に応じたスキルが出やすくなってるホエー」


 いや、それにしても私の微妙な防御スキルで相手を庇う何て事、それは自殺行為では無かろうか。


「ああもう。言わんこっちゃない、ポイントを無駄にした」


「使いどころが難しいのは確かだが、使いようによってはかなり有効なスキルだガウ」


「猫猫はそういうの、得意だと思うにゃ?」


 それは私を評価してくれていると取ってもいいのだろうか。


「前から思っていたのでゴザルが、このデバフボトルというのは具体的にどのようなスキルが出るのでゴザルか?」


 実は私も気になっていたのだが、どうやらスイクンも同じことを思っていたようだ。


 デバフと言うのがその意味のままであるなら、それこそゲームで言う相手を”毒状態”とか”麻痺状態”にするようなスキルを指すのだろうが、それは明らかに現実的ではないだろう。


「まあ、引いてみればいいんじゃないかにゃ?」


「そんな軽い感じで言うなよ。これでまたポイントを無駄にしたらどうするんだ?」


「実際、デバフスキルは有効なスキルが多いのに、地味なせいかイマイチ人気が無いガウ」


「そう言う事を聞きたいんじゃなくて、私は具体的なスキルの中身を知りたいんだよ」


「どのようなスキルが存在するかは、出来るだけ言わない決まりになってるホエー。悪く思わないでホエー」


 いや、何でそう毎度毎度、そんな非効率的なんだよ。


「ケチケチすんなよとっとと引け」


 クソ、人のポイントだと思いやがって。


 私は非常に不本意に思いながら、仕方なくデバフスキルボトルのボタンをタップする。


『デバフスキルボトル入りまーす!! お姉さんいける口ぃ?☆彡』


 だからさぁ……。


⇩■ジャミング(範囲・小 消費・小)

自身の周囲に探知系スキルの効果を阻害する効果を展開する。

範囲は自身を中心に円形で展開され、味方のスキルには干渉しない。


「…………」


 これさぁ。


「言いたいことは分かるにゃ」


「ハイディングの方が強くね?」


 てかこれ、普通にサポートスキルじゃね?


「だから早まるなガウ。ハイディングは飽くまで姿を隠すだけで、探知系スキルには普通に補足されるガウ」


 ああ、なるほどそうなのか。


 ……って、それって最初に言ってくれないと結構マズかったんじゃないか?


「ということは、ハイディングと組み合わせることで、猫猫殿はほとんど敵に発見されなくなるのでゴザルか?」


「まあそういうことだにゃ」


 そう聞くと、このスキルはかなり有能な気がして来た。


「この上位スキルはどんなのがある?」


「範囲強化か効力の強化だにゃ。補足としてスキル範囲内に敵が入った場合、相手の探知・探索スキル自体が発動し無くなるにゃ」


 それだけ聞けば、一応デバフ的なスキルに聞こえない事もない。


「それは最強ではゴザらんか猫猫殿!」


 ……いや。


「残念ながら、そのせいで近くに誰かが隠れていることがバレることにも繋がるホエー」


 そうそう、そう言う事が聞きたいんだよ私は!


「要するに範囲を広げるのは悪手か」


「そうとも言えないにゃ。範囲を広げた場合、その範囲も魔力に応じて可変が可能になるから、逆に小さくすることもできるようになるし、なんなら猫猫の魔力ならかなり広範囲をカバーできるようになるから、かなり遠距離から相手の探知スキルを封じる事も出来るにゃ」


 そうそう、今回は良い感じだ!


「まあ、でも発見されない事が第一なら、あえてリスクを冒してそんな事をする必要は無いな」


「効力強化の方はどうなんでゴザル?」


「単純に、更に強力な阻害が可能になるホエー」


「具体的には?」


「相手がスキルを無効化するようなスキルを持っていたり、探知・探索系の上位スキルにも対応できるようになるホエー」


「上位スキルって、ようするに”スキャン”に対する”アナライズ”的な?」


「そう言う事にゃ。ちなみにいう通り、”アナライズ”の阻害は通常の”ジャミング”では不可能にゃ」


 となれば、やはり強化するのであれば効力一択だろう。


「しかしながら”スキャン”の派生スキルは探知よりも分析に特化したものだから、相手がいると分かって無ければあまり脅威ではないホエー」


「って事は、探知に特化したスキルが存在するって事だな」


「そうだにゃー」


 ”アナライズ”に指向性があるのには、そんな意味があったのか。


「でも、これって大会だとあんまり効果ないよな? 隠れるような場面が見当たらないし」


「”ハイディング”と組み合わせた場合、そうとも限らないんじゃないかガウ?」


「えぇ……流石にあの枠内で隠れるのは厳しくないか?」


「ああ、そうかにゃ。ちょっと猫猫は勘違いをしているにゃ」


「は? 勘違いだって?」


 私のどこに、勘違いをしている要素があるんだ?


 確かに、あの狭いフィールドの中でも、姿を消して背後に回るような戦略は可能――。


「多分、猫猫はこの前見た模擬戦形式でチーム戦をやると思ってるにゃ。あれは飽くまで個人戦形式であって、パーティー戦はある程度広いフィールドで複数パーティーと戦うから、隠れる事はかなり有効な手段だにゃ」


「はぁ?! 初耳だが??」


「テルミドール三世は、そんな事もまだ説明してなかったのホエー」


「面目ないにゃ」


 ホントにこの使い魔はぁ……。


「だったら、取り敢えず効力を上げとくか」


「こういう所は思い切りがいいんだにゃ」


「効果が分かってるのと分かってないのでは雲泥の差だろう?」


「この上位スキルと言う物を、どんだけの魔法少女が持ってるのかって話ガウ」


「アップグレードはかなりのポイントを消費するからホエー」


「あのさぁ……。お前らは私に何をやってほしいんだよ?」


 てか、そもそも私の思ってたデバフスキルとかなり違う気がするんだが……。


「ねぇこれどういう意味ぃ! ひまわりにも説明してぇえ!!」


――――――――


――――――――


⇩■スーパージャミング(範囲・小 消費・中)☆

ジャミングの派生スキル。

より強力な阻害が可能となる。


⇩■アーマーブレイク(対象・敵1名)(効果時間・短 消費・小)

対象一名のアーマーを弱体化する。

発動には武器での直接接触が必要。


「この黒い■が、対象が敵であるって事か?」


「そう取ってもらって差し支えないにゃ」


 そもそもこのアイコン、何となく意味は分かるのだが、法則がイマイチはっきりしていない節がある。


 なんにせよ、ようやくデバフらしいデバフに出会う事が出来た。


「もう一本! もう一本!」


 ああもう、うるせぇなぁ……。


「このアーマーブレイクというのは、遠距離武器では発動しないのでゴザルか?」


「それで発動したら強すぎるホエー」


「幽霊にも有効なんだよな?」


「当たり前だガウ。そもそも、対人戦はオマケで魔法少女の本分は幽霊退治だガウ」


 この使い魔、なんか妙に私に当たりが強いよな。


「もう一本! もう一本」


 ああくそうるせぇー!!


「拙者も何か引いてみるでゴザルか」


「よっ! 待ってましたぁ!」


 黄色のテンションが妙に高いのがウザいが、他人のガチャを引くのを見るのは初めてなので、実は私も少し楽しみである。


「スペシャルボトル入れちゃえよぉ!」


「いや、それは勘弁してほしいでゴザル」


「いいんじゃないか? スイさんも結構ポイントあったよね?」


 そういえばいつの間にか魔法少女の名前で呼び合っている事に気づくが、なんか本名を知っているのは実際、仕事中に誤爆しそうで危険な気がする。


「そ、そうでゴザルか……?」


 彼女の様子的に、本当はスペシャルガチャを引いてみたかったが、あと一歩それに踏み切れなかった感がある。


 しかしどうやら、私の一言が後押しとなったようで、彼女はすんなりとスペシャルボトルを入れる事となった。


『やったー! スペシャルボトルでぇー……乾杯☆彡』


 このボイス、意外とバリエーションがあるんだよなぁ。


〇エクステンション・ユニット(パッシブ)☆☆☆

自身の周囲に複数の魔法少女の武器を展開する事が出来るようになる。

武器は自身の所持している物と同種の物で、数は魔法少女の能力に依存する。

魔法少女はこれを手を使わずに自分の意思でコントロールできるようになる。


「でたー! ☆三スキルにゃー!!」


「すごいホエー!」


「マジかガウ……」


 え、これってあれの事だよな?


「武器の展開って、どういう意味でゴザルか?」


「ファン〇ルじゃん」


 黄色がもろ言った。


「ファン〇ル?」


 しかし、スイクンはその作品になじみが無いのか、イマイチ分かっていない様である。


「周りに武器を浮かせて、それを手を使わずに使用できるって事だろ?」


「その通りホエー」


「ヤバすぎるだろガウ」


 え、私もめっちゃそれ欲しいんだけど。


「ひまわりもそれ欲しいぃぃいい!!!!」


 …………。


「……いや待て、そんなの魔力消費がハンパ無いんじゃないか?」


「そのためにキミがいるんじゃないかにゃ?」


 ?


「……あっ」


 ”無償の愛《アンコンディショナル・ラヴ》”!!


「そ、それはどういう意味でゴザルか?」


 そういえばパッシブスキルの事は二人には伏せているんだった。


「私のパッシブに、相手が使うスキルの効果を肩代わりする物があるんだ」


「!! ま、まさか”無償の愛”かガウ!?」


「!! 何かおかしいと思ったんだホエー! いくらスイの魔力が多いとしても、魔力の減りが妙に少ないなとホエホエホー!!」


 また何かスイクンの使い魔が気持ちの悪い動きをしている。


「なんでひまわりだけ魔法が少ないのぉおおお!! ずるいぃいいい!!」


「それがあるならぶっちゃけもう敵は居ないも同然ガウ。オマエの魔力があればスキルも使い放題だガウ」


「待ってくれ。まあこの際、私をバッテリーみたいに使うのは良いとして、このスキルはあくまでスキルに対して発動するのであって、全部が全部肩代わりできるわけじゃないぞ?」


「実はシューターの通常攻撃はスキル扱いだから、猫猫がコストを肩代わりする事は可能なんだにゃ」


「もーまた新事実っ!」


「ということは、拙者が武器を大量に展開して、その攻撃に使う魔力は猫猫殿が肩代わりしてくださるという認識で良いのでゴザルか?」


「まあ、実際どこまで出来るのかはボクらも分からないから、今日の仕事で実践してみるにゃ」


「こんなの初めてホエー!! ホエホエホー!!」


「ねぇええええ!! 何でひまわりだけぇええええ!!!!」


 だぁあああうるせぇー!!


 ……ばろろろろろ。


 ……?


「ギャースカギャースカギャースカ(黄色が何か騒いでる声)!!」


「何だ、車の音?」


「こんな遅くに、お客さんかにゃ?」


 時刻は既に夜の九時である。


 まあ、別にそこまで遅い時間でもないが、来客には少し遅い気がする。


「まあ珍しい事じゃないか。工場の誰かが父に何か用があるのかもしれないな」


 ……ばろんっごっごっぼろんっ。


 何か、妙に調子の悪そうなエンジン音だな。


「よく聞こえたでゴザルね。さすが音楽家の耳……」


「いや、ここまで結構な坂を上らなきゃだから、自然とエンジン音が……」


 その時、スイクンの顔がサッと青ざめたのに気づいた。


 彼女は目を見開いて、音の聞こえるカーテンの向こうを注視している。


「は? 何、車?」


 ようやく静かになった黄色も、そのカーテンの方に目を向ける。


 何か嫌な予感がする。


「この家に来てるホエー?」


「この音は、家の前の坂を上っている音だと思う」


 周囲にも民家はあるが、現在の母屋はひと周り高台の奥まった場所にあって、スロープのような急坂を登る必要がある。


 この離れに来る道のりも、隣接しているといってもそこそこ急な階段を下りなければならない。


 それに母屋側の先は林で行き止まりなので、あの方向からする音はその坂を登ろうとしている音に違いないだろう。


「妙な立地だガウ」


「元々あの場所は不便で使わなくなった倉庫があった場所だからな」


 これは、祖父が今の離れである旧母屋を解体するのに反対した弊害である。


 立地的には、ここを母屋にしたほうが確実に利便性が良かったのだ。


「マニュアル車の音だにゃ」


「ああなるほど、それで苦戦している分けか」


「そ、そんなはずは……」


 だが、隣のスイクンは私たちとは違って明らかに動揺しており、額には冷や汗のような物まで浮かんでいる。


「どうしたのスイさん?」


 私は直接、その理由を彼女に尋ねる。


 しかし彼女から返答はなく、代わりに彼女の使い魔がこちらを向く。


「あれはスイの父親の車の音だホエー」

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