NAI・NAI 2
はい論破!!
見た?
あの猫猫とかいうふざけた名前の女の、あの引きつった顔を!
本当にいい気味だわ!
どうせあの女、学校ではヒエラルキーの頂点で図に乗っているんでしょ?
周りをイエスマンで固めて、あのデカパイでバカな男子をはべらしてさ!
きっと間違っても誰も指摘してくれないから、先輩に対してあんな無礼な物言いが出来るんだ!
あいつそれを指摘されて何も言い返せなかった。
あれは間違いなく図星をつかれて固まってた。
きっと三十過ぎてから男に捨てられて路頭に迷うタイプだ。
しごできのウチの言う事を聞いて置けば、少しは自分の愚かさに気づけたかもしれないのに。
ホント、ウチの周りの奴らはバカばっか!
プークスクス!
「ツインテール、注意するクポ。一応、彼女達の”メンター”が亡くなったのは事実みたいだクポ」
「は? だから何?」
まさかコイツまでウチに説教する気じゃないわよね?
「ここ最近、魔法少女の死亡者は出てなかったクポ。でもそれは比較的、周辺の邪気が――」
「うるさいわね! 分かってるから黙っててくれない?」
ああもうっ!
せっかく口うるさい先輩魔法使い共から解放されたのに、今度は使い魔が私に説教をしてくるの?
こんな嫌な気分にされるんだったら”臨時”なんて受けるんじゃなかった!
さっきまでちょっといい気分になりかけてたのに、これで全部が台無しよ!
でも、大人の女はこの程度でムキになったりしないの!
とっととトンネルを抜けて、あいつ等の所に――。
――きゃっきゃ。
!?
「何!? なんの音!?」
今、なんか笑い声みたいなのが聞こえなかった?
「……チッ」
モグりんやガキどもがあんな事言うから、何か怖くなって来たじゃないの……。
何か急に気温が下がってきた気がするし、ちょっとおしっこ行きたくなって来たし……。
…………。
いま丁度、トンネルの真ん中くらいかしら?
……ここで走り抜けるような事したらダサいよね。
いや、これは決してビビってるわけじゃ――。
「ツインテール! 待つクポッ!」
「きゃっ!? ちょ、ちょっとぉ! いきなり大きい声出さないでよ!!」
悲鳴を出しちゃったじゃないのよ!
まさか、あいつらに聞こえてないよね!?
……あれ?
「トンネルが伸びてるクポ! これは多分、霊障だクポ!」
え?
は?
「霊障? 何それ?」
いや霊障ぐらい知ってる!
あのポルターガイストとかオーブとかのやつだ!
「……気のせいよ!」
「そんなわけ無いクポ! これ、まずいクポ!」
気のせい気のせい!
もうみんな寄ってたかってわたしをビビらせようとして!
「全力で来た道を戻るクポ!」
「黙れ! そんなダサいこと出来るわけ無いでしょ!」
どいつもこいつもウチのやる事に口出ししやがって!
ここでは私が一番先輩なのよ!
「あああああ!!」
イライラムカムカイライラムカムカ!!
――ぬぷっ。
!?
「冷っ!?」
!?!?
……は?
「え? 何これ……足が」
埋まってる?
……え、埋まってる!?!?
……何で?
ここアスファルト……。
「何なにナニ!? 何これなになに!?!?!?」
「落ち着くクポ! とりあえずゆっくり浮いて足を引き――」
「キモイキモイキモイ!! 何これ何これ何これぇえ!?!?」
うひぃいいい!!
何これ何これ!?!?!?!?
「浮く! 浮き上がるんだクポッ!!」
「あっ!! 浮くっ!!」
浮かないとっ!!
!?
何で何で何で!?!?
ウソウソウソ……どんどん埋まるっ!?!?
「そんなバカなクポ……何でこんな強力な幽霊が……」
「何やってるの!? 助けなさいよモグりん!!!!」
「”決死機構”を開放するから、足を引きちぎる勢いで思い切り飛び上がるクポ!!」
「へぁあ?! 決死?? 何??」
バキィイイイインッ!!!!
「えっ!? 何コレ何これ!?」
「思い切り飛ぶクポッ!! 上っ!!!!」
意味わかんない!!
一体何がどうなってるの!?
「何やってるクポッ!! もう膝まで埋まってるクポぉ!!」
――はっ!!
「えいっ!!」
「そうじゃ無いクポ!! 全力と言ったら全力だクポォ!! ぷふぇっ!!」
イラッ。
何その言い方!!
使い魔の癖にムカつくっ!!
全力でやればいいんでしょ全力でぇ!!
「どおりゃあああああああぁぁああ!!!!」
ブチブチブチブチブチッ!!
え?
何?
ぶちんっ!
――!?
「ぎゃっ!?」
ゴンッ!!
「痛たぁあ……頭打ったぁあ……」
「痛くないクポ!! すぐにまた飛び上がるクポ!! そして全力で――」
ああああ全力全力うるさいなぁ!!
でも、これで足が抜けて――。
??
「……え?」
……あし……が??
????????????????????????
「えっ? ウチの……足????」
「逃げろクポぉおおお!!!! ツインテールぅううう!!!!」
「ぎゃあああああああああああああ!!!! 足がああああああああああ!!!!」
ないないないぃいいいいいい!!!!
ウチの足が無いぃいいいいいいいいい!!!!!!!
「大丈夫だから地面からすぐに離れるクポぉおお!! 痛覚は切ってるから痛みは無いはずクポォオ!!!!」
「無くなっちゃったぁあ!!!! 足がなぐなっだあああぁああ゛あ゛!!!!」
こんど陸上部の試合があるのにぃいいいいい!!!!
足が速い事だけが取り柄なのにぃいいいい!!!!
下ネタしか能のないクソ下品な男子どもを黙らせないとなのにいぃぃいいいいいいいい!!!!
あああああああああああああああ!!!!
「足は再生できるクポ!!!! とにかくそこから動くクポォオ!!!!
「うっ…うえぇえ……ずびびび……え? 足……だいびょぶなの??」
「だいじょぶだいじょぶぅうう↑↑!! くっぽぉ!!」
あっ……大丈夫!!
「だからぁ↑↑!! すぐにそこからぁあ↑↑!!」
……あれ?
「動くクポぉ!!」
「ね、ねえ? お尻が……埋まって……動かないんだけ……ど??」
「……………」
…………は?
「詰んだクポぉ↓↓」
…………うそ……。
地面に触れたお尻と手に、冷たい感触が広がっていく。
いつの間にかトンネルは出口が見えない事になってる。
――ぞわぞわぞわぞわ。
「え? ……何?」
この沼みたいなの……動いてる?
……手?
小さい手がいっぱい、ウチを掴んで引き込もうとしてる!?
「キモっ!? ええぇえキモっ!?」
『きゃっきゃっきゃ!! きゃっきゃっ!!』
「あはぁあ!? だから何ぃい!?」
赤ちゃんの笑い声?
どこから!?
『きゃっきゃっきゃ!!』
!?
この下!?
……この下に何かいるっ!?
ゾクゾクゾクゾクゾクっ。
「えっ!? 怖い怖い怖い!! 嫌ぁあ……嫌ぁああ!!!!」
怖い怖い怖い怖い!!!!
冷たい冷たい冷たい冷たい!!!!
「救難信号を出してからまだ二分……厳しいクポぉ……」
寒い寒い寒い……。
「ガチガチガチガチガチガチ」
冷たい……あっ……。
…………。
…………温かい……。
「もうこうなったら、ジタバタしてもどうにもならないクポ。せめて気持ちを強く持つクポ。それで多少は時間が……あっ」
「モグりん……ウチ……おしっこ漏らしちゃった……」
「……あぁ……クポぉ」
もう来年高校生になるのに……。
魔法少女の服ってクリーニングとかどうなんてるんだろ?
でも、そんな事もうどうでもいいか。
ウチ、これから死ぬんだし……。
全国大会、行きたかったな……。
ははっ、県大会で入賞も出来ないのにそんなの無理か。
だったらせめて、ダメもとで告白しとけばよかった。
変なプライドなんか出さずにさ……。
あ、スマホのデータって死んだら親に見られるのかな?
うわ、男に興味ない振りしてたの嘘なのバレるじゃん。
エグイ変態なのバレるじゃん。
それ一番最悪……。
…………。
…………死ぬのって、痛いのかな?
「ツインテールさん!!!!」
!?
え?
声??
「ツインテールさん!! 大丈夫ですか!!?」
……猫猫?
「……マジかクポ。この中に入って来たクポ?」
この声は間違いない。
この太々しくてハスキーな低音ボイス。
「あっあっ!! 猫猫!! 猫猫ぉおおお!!!!」
かすれた声で、ウチは思い切り叫んだ!!




