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それは何処かの世界で始まった

暗い玉座に小さな人影があった。それは淑女とは言い難い少女の姿だ。

しかし、ただの少女ではない。爪は鋭く、肉食獸のような牙が見える。腕や頬、背中など身体に爬虫類と思わしき鱗に尻尾。それらが人ではないことを物語る。そんな黒いドレスに身を包んだ少女は・・・


「・・ぐぅ」


頬に手つき舟を漕いでいた。

どこか幸せそうな笑みを浮かべ惰眠を貪る様は、容姿に似合わず可愛らしい。


ーー!


「・・・むっ!」


突然少女は目覚めると尾を上げ、天を見上げた。


「魔王様?」


そんな様を見て、側に控えていたメイド姿の侍女が声をかける。

黒い羽をはためかせ心配そうに見つめる侍女を魔王と呼ばれた少女は、一瞥すると確信めいた口調で応えた。


「どうやら剣を抜いた者がおるようじゃ」


「剣というと・・勇者の剣ですか!?」


「うむ」


動揺する侍女とは対称的に少女は落ち着いた様子で応えると、からっと笑みを浮かべた。


「ふふん。最近体を動かして無かった故、丁度いい暇潰しができそうじゃ」


「また魔王様は・・」


そんな様子に溜め息をつきながらも、侍女は安心していた。何故なら彼女には実績があるからだ。


「最初は何処の野党が襲い掛かってきたのかと苛立つこともあったが、今となっては恒例行事のようなものよな」


「それでも努々油断はしないで下さい。勇者はともかく、あの剣は危険です。」


「うむうむ、わかっておるさ。心配性じゃなヒルデは」



苦笑いを浮かべ侍女ヒルデを手で制しながらも、魔王は浮わつく心を抑えられそうに無かった。



「所詮この魔王レイラの敵ではないわっ!」



高笑いが木霊する、ここは魔界の奥地の魔王城。

どんな相手でも蹴散らしてきた魔王様に、悲劇と喜劇が襲い来る御話の始まり始まり。

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