プロローグ とある記事
プロローグは読んでも読まなくてもいいです。
「魔王」とは、一体いかなる存在なのだろう。
読者諸君も、一度はそう疑問に感じたことはないだろうか。
魔物の王か。魔術の王か。それとも、魔界の王か。
一体、奴は何の「王」であったのか。
歴史の舞台に現れてから四百三十二年ものあいだ、人類にとっての絶対的脅威であり続けた魔王。
我々は何と戦い続けたのか。
本記事では、その実態について触れていきたいと思う。
人類が魔王軍の侵攻に脅かされ、必死に抗い続けた絶望の歴史。
なぜ、魔王は長きにわたって不滅で在り続けたのか。
そして、いかにしてその存在に終止符が打たれたのか。
記憶に新しい読者諸君も多いだろうが、魔王に引導を渡したのは昨年のことだ。
我らが人類の英雄「七人の王」によって、その悲願は成し遂げられた。
「七人の王」はこの長い戦いの歴史の中で、対魔王の魔術を研鑽してきた。
その特異すぎる魔王の生態。
それを打ち破るための魔術を。
では、対魔王特化の魔術を生み出さなければならないほどの、その特異性とは一体何なのか。
この性質こそが、魔王の正体を知る手がかりとなる。
歴史の歩みを辿りながら、その特性を紐解き、魔王の正体を解き明かしていこう。
当初、「魔王」という呼称は「魔物の王」という意味で冠された。
人類は魔王への対抗策のため、魔王が生物として何者であるかを知る必要があった。
明らかであったのは二つ。
魔王が人の形をしていること。
驚異的な身体能力を持っていること。
一見すればその特徴は魔術師と一致するため、当初は人類に近しい存在であると考えられた。
だが、魔王は人類の魔術では到底不可能な、ある性質を備えていた。
「再生能力」と、それによる「不死性」である。
察しの良い読者諸君ならお気づきであろう。
魔物もまた、強力な再生能力を有している。
そして、魔物は魔王が生み出したものであることも周知の通りだ。
魔物の特徴を持ち、魔物を統べるその姿は、まさに「魔物の王」と呼ぶに相応しかった。
しかし、長い戦の歴史の中で、この認識は覆る。
魔王は「魔術」を使用したのだ。
知っての通り、魔物はその生理学的構造上、魔術を行使できない。
つまり、魔王は魔物ではなかった。
ここで再び、人類の近縁ではないかという仮説が浮上する。
魔物か人類か。
そのいずれであるかによって、用いる戦術は根本から異なる。
長きにわたる研究の末、ひとつの結論が導き出された。
魔王は、魔物でも人類でもない。
その「どちらでもないなにか」である。
根拠は、魔術師の原則に照らし合わせた事実にあった。
魔術とは、「脳を介して」行使されるものである。
これは魔術師における絶対的なルールの一つだ。
だが、魔王は違った。
魔王は、脳を介した魔術の行使をしていなかったのである。
以上の事実により、魔王は史上初めて観測された未知の生物と定義されることとなった。
魔物以上の再生能力を持ちながら、人類の枠を逸脱した魔術を行使し、魔術師の原則すら無視する存在。
結論として、人類は魔王を新たな生物種として以下に分類した。
──「魔人」と。
魔人の王。
故に、魔王。




