策略
王都・宰相府
「国外追放は、失敗だな」
宰相は、書類を机に投げた。
「王妃が動いたか」
「はっ」
側近が、深く頭を下げる。
「護送は王家直轄となり、精鋭十名と魔術師団の随行が確認されています」
「・・・面倒な」
宰相は、指を組んだ。
「ローゼンヴァルトは、死ぬべきだ」
書類を一瞥し、宰相の息子セドリック・ルートが言う。
「父上の言う通りです。レティシア・フォン・ローゼンヴァルトは、聖女エマの敵として処理する」
セドリックは、冷たく笑った。
「失敗したら、次へ進むだけだ。反逆の証拠を仕込め。・・・王家の護送を利用した逃亡計画としてな」
側近は、息を呑んだ。
「・・・承知しました」
宰相息子セドリック・ルートは、窓の外を見つめる。
「エマは、私の希望だ。彼女の名に傷をつける者はこの国に、必要ない」
◇◇◇
レティシアを乗せた馬車は、引き返していた。山道を越え、街道を戻り、再び王都へ向かっている。
本来なら、このままルミナリア王国の国外へ向かうはずだった。
「・・・王都へ戻るのですか」
私は、騎士団長ヴァルター・ゲーヴェンバウアーに問いかけた。
「そうだ」
彼の声は、硬い。
「あなたに関する新たな疑惑が出た・・・反逆の嫌疑だ」
馬車の中の空気が、凍りつく。
「・・・反逆?」
「武装集団と通じ、王家の護送を利用して逃走を計画していた」
私は、言葉を失った。
「それは、事実ではありません」
「そうだろうな」
騎士団長ヴァルター・ゲーヴェンバウアーは静かに言った。
「だが、証言が揃っている」
「・・・誰の」
「山道での襲撃者の供述。そしてあなたの署名が入った書状」
胸の奥が、冷たく沈む。
(前回にはなかった。山道での暗殺は騎士団の護衛で回避された)
否定しても、また信じて貰えないのだろう。
━━王都・城内━━
私は、馬車から降ろされた。
周囲には、王家の兵。
逃げ場はない。
「レティシア・フォン・ローゼンヴァルト」
裁定官の声が響く。
「貴殿は、国家反逆の嫌疑により身柄を拘束する」
手枷をかけられ、城の奥へ連れて行かれる。
(前回は、ここには来なかった。結末は、同じなのだろうか)
牢獄。
鉄の扉が、重く閉じられる。
冷たい石の床。
湿った空気。
細い明かり。
私は石の壁に背をもたれ座りこんだ。




