第16話:変遷する世界
ーーー【死の都タナトス】ーーー
死界律の支配する大地の地下深く…広大な地下空間にて黒い霧に包まれた石造りの巨大都市があった。
天井にびっしりと生えた灰色の水晶群が放つ淡い明かりによって照らされているその都市内には、かつては知性があったであろう人々が亡者のように徘徊し、中央に鎮座する宮殿を守っていた。
未だミーシャ達が辿り着いていないその地で、異変が起きていた…
かつて兵士であったであろう長槍を持つ屍と、首のない鎧の騎士は街灯の明かりの下で、靴底と鎧の金属音を鳴らして整備された道を彷徨っている。
「アァ゛…?」
その時、兵士の屍よ視界の端に何かが動いたのを捉える。そこは、家と家の間にある細い路地であり、今や補修する者がいなくなったことで崩れた外壁が散乱している。
街灯の水晶の明かりさえ届かないその暗闇へ体を向けて歩き出し、その隙間へ頭を入れた瞬間…勢いよくその身体が細い路地へと引きずり込まれ、バキボギッ!!グチャ、グチャ…と何かが砕ける乾いた音と水っぽい湿った音が鳴る。
首無し騎士も異常を察し、腰の長剣を抜いて構えながらその路地へとにじり寄っていく。
だが、その路地は一寸先さえ見えぬ闇であり…首無し騎士が目の前まで迫った時、彼がやっとそれが暗闇などではない事に気づいた頃にはーーー全てが遅かった。
「ーーー!?」
得物を振るう時間さえなく、黒いナニカから現れた同色である無数の腕が殺到し…首無し騎士は鎧が歪むほどの怪力で掴まれ、引き千切られながら抵抗できずに路地の奥へと消えていった。
そしてその日を境に、死の都では次々と屍達と共に明かりが消え、暗闇に呑み込まれていった…
………
……
…
「おい、やめろって…」
「いやっ!!」
鮮血律の支配する旧バサク帝国の城、その謁見の間にて玉座に座るブラディオへしなだれかかるように、全体重をかけてカルスティナが抱き着いていた。
ドレス姿でも分かる凹凸の大きい豊満な身体が押し付けられても、ブラディオは居心地が悪そうな顔をし
、抵抗するカルスティナの顔を掴んで引き剥がそうとしている。
「それで、俺とティナに聞きたいことってなんだ?ミーシャ」
「?」
「あの…」
ブラディオとカルスティナから不思議そうな表情の向けられている人物…ミーシャは、意を決してその言葉を捻り出す。
「勇者ミサって…誰なんですか?」
「…」
「ーーー誰から聞いた?少なくとも、ベロニカは知らねぇ筈だし…知っているなら、尚更その話題を俺達に対して振らせるような事はしない」
「それは…言えません」
「そうかーーーなら俺達も、お前らに教えることはない」
ブラディオは怒るでもなく、ただ淡々とそう言って話を切って場を離れようとし…扉の前で立ち止まって振り返った。
「それを教えた奴が誰か知らねぇが、俺達に素性を隠している時点でほぼ確実に碌でもない奴だ。利用するのはいいがーーー利用されんなよ?信用して踏み込みすぎたら…取り返しのつかない事になるぞ」
ブラディオの瞳が、不安そうにしているミーシャを映していた…
これで第二章は一旦完結です。
本当はもっと長くする予定だったけど…私が亡者になる、許せ()
第三章は9月から週一更新を再開します、それまでは…不定期更新です!!




