表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

2.売られるシオン

「ド○ドナどーな~子うしをにょせてぇ~○ナドナどーな・・・」

 一部しか知らない替え歌フレーズを、俺はヤケクソで繰り返す。


 ただいま絶賛売り出し中のシオンくんです。


 麓の村に保護されて、ぐったり安心したのもつかの間、翌々日には、タイミングばっちりに来訪した奴隷商人のバスタールさんに売られました。


 売値は野菜の種増量、おまけと等価交換だそうです。グスッ。

 お安い俺は、同じく口減らしされる姉妹二人と、生まれたばかりの子豚と共に、旅に出発しております。目指すは沼向こうの街だそう。


 売られたってへっちゃらです。

 ガタガタ揺れるオンボロ荷馬車にも負けません。嘘です、ツライです。


 あちこち打ち付けて、痛くて舌を噛みそうですが、売られる不安を込めて歌いました!


「ド◯ドナどーなって、なぁに?」

 隣で荷馬車に一緒に揺られていた女の子が、不思議そうに聞いてくる。妹の方のスザンナだ。


「しゃぁ~ない(知らない)」

 売られる子牛の名前だったか、売られる様子だったのか。

 とにかく旋律の物悲しさが、今の俺の心を表す!


「もうあきちゃった。それにあんた歌ヘタクソ」

 姉のナリアが、ばっさり切り捨ててくる。

 3歳の俺より年上のせいか、滑舌の切れ味がイイです。

 でも売られる者同士、もすこし仲良くしてください。

 あ、子豚さんは仲良くしてくれなくていいです。鼻を押し付けるのやめてください。


「スザンナ、うたう~」

 歌うのを止めた俺の代わりに、可愛い幼児の声がほのぼの沼地に響き渡る。


 う、上手い。


 敗北感を噛み締めているうちに、本日の休憩ポイントにたどり着いてしまいました。


「おーい、下りろぉ。休憩だ」

 商人のバスタールさんが、御者台から大声で知らせてくれる。


「水袋も一緒に持って下りてきて」

 奥さんのミズリさんがそう言うと、小型犬のハッパがワンワン駆けて来る。


 俺とナリアが、荷馬車の奥から皮袋を一つずつ持っておりた。

 そこは枯れ草を踏み固めた空き地だった。

 足元が柔らかい。

 多分、土地に含まれる水の量が多いのだろう。生えている背の高い雑草の間に黒い泥が見える。


「もうすぐ湿原は抜けるわね」

 水袋をミズリさんに渡すと 手のひらに5粒ずつアーモンドのような木の実をもらう。


「わっ、まんぷくのみだっ」

 スザンナとナリアは嬉しそうにすぐに口に入れた。


「まんぷくのみ?」

「しらないのぉ~?」

 スザンナに驚かれて、こくりと頷く。


「この子、異国の子だもん」

 ナリアに言われて、またこくこくと頷く。

 元日本人の霊山育ちでございます。異世界知識ください。


「おいしいよ」

 俺も、ぽりぽり音を立てて食べてみる。味はーー完全にアーモンドだ。


「霊山に捨てられたら、コレを食べろって教えてもらったわ」

「そしたら、いきのこれるのねっ」

 嬉しそうに教えてくれる姉妹に、おっさん泣けてくる。それだけあの村の生活は、過酷なんだね。


「栄養があるのよ、その実。でもあの霊山でしか取れないの。2、3日くらいで腐って変色するから、売り物にはならないよのねぇ」

 ミズリさんがそう教えてくれる。

 5粒ポリポリしたら、あっという間に食べ終わる。


 これが本日の昼食である。というか、この世界の人は1日2食しか食べないらしい。

 合間に何か飲んだりつまめたりしたら、御の字なのである。

 

 普通にツライーー飽食日本が懐かしいようっ・・・。


 1つの水袋を子どもたちで回している間に、ミズリさんとバスタールさんは、馬と犬に水を与えて休ませている。どっちも走りっぱなしだからね。


「村、遠くなったね」

 ナリアがポツンと呟く。

 湿原の草の向こう、踏み固められた草道さえ見通せない。


「あたし、商家に売られたいなぁ。農奴だと動けなくなったら終わりでしょ。でも商家なら色々仕事があるはずだもん」

「スザンナはねぇ、こぶたと、にわとりのおせわをするの」

 希望を抱く二人に胸が痛い。夢見すぎて、残酷さを味わなければいいと願ってしまう。

 それで、つい余計なことを聞いてしまった。


「ナリアは売られてもいいの?」

 悲壮感のない二人がいっそ不思議である。


「しょうがないよ。お父さんお母さん死んじゃったから、あのまま村にいても、みんなが困っちゃうし、食べ物ないもん。」

「・・・」

「あんたは?」

「おれぇ?・・・おれはおじいさんが、おうとにいるからーー」

「ふーん、身内がいるんだ。よかったねっ」

 ぷいっと顔をそらされて、ナリアは犬の方に駆けてい

く。


(しまった。言葉をミスった)

 両親を失った子供に、俺はなんてことを言っちゃったんだ、と後悔する。

(でもシオンだって父親死んで、母親に捨てられたわけで・・・実際同じように売られてココにいるんだけど)

 同じく先行き不安だって、弁明したい。


 だけど逃したタイミングは戻ってこない。

 なんとなく気まずくて、1人空き地の隅に座り込む。することがないので、異世界観察をすることにした。


 雑草は、細長くてまるで刀のようだ。素手で触ったら、指を切りそう。草の間はベタつた泥が見えていて、透明な水がうっすら湧き出ている。虫はいない。

 以上、終わり。


 ほけーっ、とお膝を抱えてたそがれる。それでも程なくして短い休憩は終了した。


「そろそろ出発するぞー」

 バスタールさんの声で荷台に向かうその途中で、雑草の間でふと光る欠片に気づいた。


(赤い、光?)


「ーーイタっ」

 なんだろうと、雑草をかき分けた手を、葉で切ってしまった。たいしたゲガではないが、血が滲んだ右手の甲に、いつぞやの紋章が浮かび上がっている。


(なになに!?)


 驚く俺。

 雑草の間に隠れていた欠片が飛んできて、紋章の真ん中に吸い込まれていった。

 

 なにごとー。


不定期更新です。

豆腐メンタルで、頑張ります。


*ドナドナの正しい歌詞はお調べください。

子牛が売られる歌です。

著作権残ってるかも、で伏せ字です。

文中は主人公の替え歌になります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ