手記 ある一人の魔法使い
十三章(その4)、手記 ある一人の魔法使い
私がこの組織に来て、半月になる。新米の私だが、皆に頼りにして貰えるのが嬉しい。魔法学校では落ちこぼれだったが、ここには私の出来る仕事がたくさんある。今日は家を持たない人の為、土魔法を使って住居を建てた。紛争で故郷を離れざるを得なかったというあの親子はとても喜んでくれた。私は、彼らのような人の助けになるなら、身を粉にして働こうと思う。
医者が足りないのだと聞いた。貧民街で良くない病気が流行っている。ああ、魔法に病人を治せる力があればいいのに!この時代、まだ魔法には病や怪我を治す力は無い。いつか作り出されるのかも知れないけれど、それはいつ?精霊を召喚できる仲間は少ない。彼らは必死に働いているけれど、魔力が切れて、一日に何人も助けられるわけじゃない。私も精霊魔法を覚えるべきだろうか。
町の人に寄付を呼びかけた。軽かった募金箱が、少しずつ重くなっていくのが、とても嬉しい。私達ほど有名な組織なら、多かれ少なかれ寄付をしてくれる人がいる。これであの子ども達にパンを買ってあげられる。
今日は、新しい仲間が増えた。エルモ・アントーニさん。この人は私と違って、とても優秀な魔法使いだ。もともとはピットエット地方の魔導師ギルドで働いていたらしい。自分の魔法を生かすなら、ギルドより我らがルシフェリオ・ダテンで人々の役に立つほうが良いと思ったのだと、彼は言った。まだ若いのに、立派な心がけだと思う。私が先輩として、彼にいろいろ教えることになるけれど、すぐに私を追い越して、組織での階級も上がるだろう。少し羨ましい気もする。
エルモさんが精霊魔法を習ったことがあると言うので、教わることにした。とても難しい。魔法陣を正しく書くのって、こんなに集中力を使うのか。でも、これを覚えれば、私だって。
エルモさんが、遠くに行くことになった。能力のある彼のことだから、もっと忙しい現場に派遣されるのかもしれない。彼は少し疲れた顔をしていた。最近は夜遅くまで働いているのだとか。
エルモさんが、亡くなったという知らせが届いた。何がどういうことか分からないので、しばらく頭を整理することにする。
事故死?
どうやら本当に、彼は死んでしまったようだ。神様、あなたはそんなに彼を、召されたかったのですか?我らが神、ルシフェルよ。組織の幹部の方々が、彼の為に祈りを捧げてくれた。どうか、彼が天国で安らかに眠れますように。
私は、彼の分まで、人々に尽くそうと思う。
今日はいい天気だ。学校に行けない子供達を集めて、広場で小さな学校を開いた。青空教室だ。私も先生達に混じって読み書きを教えた。
精霊魔法が少しだけ出来るようになった。でも、精霊は私の呼びかけにまだ応えてくれない。私もまだまだだ。




