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ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。  作者: クワトロばなな


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乱舞!メレンヘア学園舞踏会第二部(ガチ)

華やかな音楽と高揚感が廊下まで染み出してくる、メレンヘア学園の舞踏会。しかし、その喧騒とはかけ離れた、一触即発の空気が流れる場所があった。

【大ホール】

リゲルは苛立ちを隠そうともせず、カノープスの眼前に詰め寄った。その鋭い眼光がカノープスを射抜く。

「お前さー」

カノープスは視線を逸らし、気まずそうに黙り込んでいる。その態度がさらにリゲルの神経を逆撫でした。

「何なの?」

「あっ?」

ようやく口を開いたカノープスが小さく声を漏らすと、リゲルはさらに顔を近づけて凄んだ。

「ん?」

返事はない。カノープスは完全に心を閉ざしたように押し黙っている。

「おい! 聞いてんのかー!」

リゲルが声を荒らげたその瞬間。カノープスの姿がパッと消え、そこには一本の不骨な丸太が転がっていた。

二人のすぐ脇に立っていた生徒が、ぼそりと声を漏らす。

「……木です」

「あの忍者野郎ーー!」

身代わりに木片を残して逃げられたリゲルは、怒りが収まらぬままその場を立ち去った。

リゲルが立ち去った後、一人残されたハダルは、カノープスが空蝉の術に使用した木片をじっと見つめていた。

ハダルはその木片を回収すると、おもむろに覚えたてのスキルを発動させて勢いよく放り投げた。

「ロングスロー(遠投)!!」

手から離れた木片は、凄まじい放物線を描いて黄昏の空へと消えていった。

【中庭の小道】

その頃、少し離れた中庭の小道を、スピカは赤くなった顔を両手で押さえながら歩いていた。心臓の音がうるさいほどに耳の奥で鳴り響いている。

「やだ私、ドキドキしてる……。なんか雰囲気に流されて、あのまま……」

リゲルとのやり取りを思い出して、危うく妄想の海に溺れそうになったその瞬間――。

ゴンッ!

「いで!」

スピカは派手に何かにぶつかり、額を押さえてよろめいた。足元を見ると、どこからか飛んできた木片が転がっている。

「なんでこんな所に木が……?」

スピカは不審に思いながらも、額をさすってその場を後にした。

【夜の庭園】

一方、夜の庭園。ハダルは慌てた様子でカノープスの姿を探し回っていた。

ふと、不自然に茂る木に目が留まる。その葉の隙間から、見覚えのあるものがはみ出ていた。今朝、カノープスに贈った『幸運のお守り』だった。

「先輩! こんな所にいたんですね」

ハダルが声をかけると、木の中からカノープスが観念したように顔を出した。その表情はひどく沈んでいる。

「ごめんよ。せっかくの君とのダンスを台無しにしてしまって……」

「そーですねー。これは貸しにしておこーかなぁ」

ハダルが少しおどけて見せると、カノープスは自嘲気味に呟いた。

「何で君は僕の事を気にかけてくれるんだい?」

「だって先輩は優しいし、学園一の凄腕忍者じゃあないですか。尊敬してます!」

「僕は凄腕忍者じゃない」

カノープスはぎゅっと拳を握りしめ、地面を見つめた。

「あの時、僕はリゲル王子が怖かった。僕は臆病者だ……」

ハダルは言葉を失い、先輩のそんな弱音をじっと受け止めた。重苦しい沈黙が流れる。ハダルは自分の腕をさすりながら、明るいトーンで言った。

「ちょっとここは寒いですね。これに包まりましょう!」

ハダルが取り出したのは、隠密行動用の忍者壁紙だった。二人はそれを広げ、身を寄せ合うようにして夜の寒さから身を隠した。

【生徒会室】

静寂に包まれた生徒会室。時計の針を見つめていたシリウスが、静かに立ち上がった。

「そろそろ時間だ。僕は舞踏会一部の終わりと、二部の始まりの挨拶に行ってくるよ」

彼はブレザーの裾を整え、穏やかな、しかし威厳のある声で言った。

デスクで書類をめくっていたデネブが、冷ややかな視線を向けた。

「お忙しいこと」

「スピカ君が来たら、その事を伝えておくれ」

シリウスがそう言い残してドアへ向かおうとすると、デネブの手がぴたりと止まった。

「スピカ庶務……」

デネブの声には、明らかな不満が混じっていた。

「少し、肩入れをしすぎなのではないかしら、殿下」

「もう少し君と話したい所だが、ここで失礼するよ。デネブ書記」

シリウスはそれ以上追及させないような完璧な笑みを浮かべ、流れるように部屋を後にした。

しばらくして、生徒会室のドアが開き、スピカが恐る恐る入ってきた。

「あっ。デネブさん、お疲れ様です」

「ご苦労様、スピカ庶務」

デネブは冷徹なまでの美しさを湛えた瞳でスピカを見据えた。

「シリウス会長はいかがしましたか?」

「いま舞踏会一部の終わりの挨拶と、二部の始まりの挨拶を行っているわ」

その言葉を証明するかのように、遠くの外から凄まじい歓声が響いてきた。

『キャー! シリウス様ーー!』

スピカは思わず窓の外に目をやった。

(本当だ、ここまで歓声が聞こえてくる……)

「スピカ庶務!」

デネブの鋭い声に、スピカはびくりと肩を揺らした。

「はい!」

「あの方は特別な方よ。恵まれた環境に生まれながら、決して自分を磨く事を怠らない。天性のカリスマと才能を持つ、この世界を導くべき存在なのよ」

スピカは何も言えず、ただ黙ってデネブの言葉を聞くしかなかった。

「貴方は決してその妨げになってはならないわ。分かるわね」

「……」

「分かってもらえたなら嬉しいわ!」

デネブは一転して、凍りつくような引きつった笑顔を浮かべた。

「貴女とは仲良くなれそうね」

しばしの沈黙の後、コンコンと上品なノックの音が響き、ドアが開いた。

「失礼するよ」

戻ってきたシリウスの姿に、デネブは瞬時にいつもの完璧な書記の表情に戻った。

「どうぞ!」

デネブは手早く書類をまとめ、立ち上がる。

「私は退室するわね」

「お疲れ様。少し長引かせて悪かったね」

「そのようなお気遣いは無用ですわ、会長。では、ご機嫌よう」

バタン! とドアが閉まる。

廊下に出たデネブは、ふうとため息をつきながら一人ごちた。

(これだけ釘を刺しておけば大丈夫よね。……でもあの小娘、油断ならないわ!)

考え事をしながら早足で歩いていたデネブは、足元に転がる木片に気づかなかった。

「いで!」

デネブははしたなくもつまずき、石畳に手をついた。

「何でこんなところに木が……?」

忌々しそうに木片を睨みつけたデネブは、ふと、不安そうにつぶやいた。

「殿下とあの小娘……やはり、きになるわ」

【生徒会室】

生徒会室では、シリウスがスピカの暗い表情を覗き込んでいた。

「何か元気がないね。デネブ書記とは何を話したんだい?」

「いえ、特になにも……」

スピカが言葉を濁した瞬間、遠くから華やかな二部の開始を告げる音楽が聞こえてきた。

「二部の舞踏会が始まったみたいだね。一部の舞踏会は楽しめたかい?」

「あっ、はい。私、ダンスに自信がなくて、さっきも多分ずいぶんぎこちなかったと思います」

「君も舞踏会を楽しめたなら何よりだよ」

シリウスは優しく微笑み、少しだけ声を落とした。

「君が誰と踊ったかは、聞かないでおこうかな」

ドキリとしてスピカが顔を上げると、シリウスは真っ直ぐに彼女を見つめていた。

「スピカ君!」

「はい!」

「ダンスなら僕が教えてあげるよ」

「いえ、もったいないです」

「いいから手を貸して」

「いや、でも……」

躊躇するスピカに、シリウスはさらに一歩踏み込んだ。

「二部の言い伝えとか気にしなくていいよ。これは練習だよ」

シリウスの真剣な、だけど強引すぎない瞳に押され、スピカはごくりと唾を飲み込んだ。

(ガチでない奴なら……練習なら、いいのかな)

「まず、肩の力を抜いて……そう! 背筋を伸ばして……」

シリウスにリードされ、ゆっくりとステップを踏み出す。その瞬間、スピカは目を見開いた。

(あっ。凄い上手、とても踊りやすい。繊細で、とても優しい……)

「視線は……僕を見て」

言われるがままにシリウスの瞳を見つめる。その心地よさに、スピカの胸はざわついた。

(会長はどういうつもりで私と踊っているんだろう。また、リゲル王子の時みたいに、雰囲気に流されそう。――あれ? なんでこんな踊りやすいんだろう? なんか、この部屋いつもより広々してる……)

ふと、スピカの視界の端に、ソファの脇に落ちている輝くものが映った。

それは、デネブが身につけていた美しいコサージュだった。

心臓が冷たくなるような感覚がスピカを襲った。

「シリウス会長!」

「なんだい?」

「この部屋で……デネブさんとも踊られたのですか?」

シリウスの動きがぴたりと止まった。彼は一瞬だけ視線を泳がせ、静かに答えた。

「ああ」

その言葉を聞いた瞬間、スピカの頭の中が真っ白になった。

「っ……!」

スピカは拒絶するように、強い力でシリウスの手を振り払い、彼を突き放した。

バン! と音を立てて生徒会室のドアが勢いよく開く。

「スピカ君!」

シリウスの制止する声も聞かず、スピカは廊下へと飛び出した。

【廊下】

「なんだなんだ!」

「編入生が生徒会室を飛び出してきたぞ」

「あっ、シリウス会長だ! どうしたんだ?」

野次馬の生徒たちのひそひそ話が耳に刺さる。スピカは涙をこらえるようにして走った。

(あれ、どうしたの私? なんで部屋を出たの? デネブさんとシリウス会長がダンスをしようが、何しようがどうでもいいじゃない……!)

自分の感情の正体が分からず、ただただ惨めで、逃げ出したかった。

前がよく見えないまま走っていたスピカの足に、またしても硬い感触が激突する。

ゴンッ!

「いで!」

スピカは今日二回目となる衝撃に、その場にへたり込んだ。

「なんでこんなところに木が……!」

視線を落とせば、そこには相変わらず理不尽なほど堂々と転がっている木片があった。

「あーもー、最悪……!」

スピカは泣き出しそうな顔で立ち上がり、再び走り去っていった。

【生徒会室】

静まり返った生徒会室。

トントン、と遠慮がちなノックの音がして、ドアが開いた。

「シリウスさん」

入ってきたのは、この国の絶対的な権力者であり、シリウスの父親である王だった。

しかし、シリウスは呆然と立ち尽くしたまま、しばらく微動だにしなかった。

「どうした?」

王の重みのある声に、シリウスはようやく我を取り戻し、深く頭を下げた。

「これは父上、失礼しました。特に問題はありません」

「そうか」

王は部屋の中をぐるりと見回し、少しだけ寂しそうな、あるいは全てを察したような顔をして言った。

「パパ帰るね」

「本日はありがとうございました。お気をつけて」

「達者でな、シリウス」

「父上も」

王は威厳を保ちつつも、どこか哀愁を漂わせながら生徒会室を後にした。

【女子寮・スピカの部屋】

女子寮の自室。スピカはベッドに倒れ込み、枕に顔を埋めて絶叫していた。

「あー! やってしまった……!」

思い返せば思い返すほど、自分の行動が信じられない。

「これって職務放棄よね。私って、生徒会役員失格だわ!」

「… 明日……会長に辞表を出そう。」

「あー、でも……どんな顔をして会長に会えばいいんだろう」

悶々と頭を抱えていると、突然部屋のドアが激しく叩かれた。

コンコン!

「スピカいる!?」

「はい!」

鍵を開ける間もなく、クレアが勢いよく飛び込んできた。

「入るわよ!」

「クレア? どうしたの?」

「スピカ! 大変よ! 学園中が貴女の噂でもちきりよ!」

「はぁ……」

また生徒会室の一件が広まったのかと、スピカはガックリと肩を落とした。しかし、クレアの口から飛び出した言葉は、スピカの想像の斜め上を行くものだった。

「貴女とリゲル王子とシリウス王子が……」

「一緒にお風呂に入ったって噂になっているわ!!」

「……え?」

スピカは思考が完全に停止した。

(その噂、どこで混ざったぁぁ!!)

メレンヘア学園の夜は、混迷を極めたまま更けていくのだった。

ep.19いかがだったでしょうか?

ep.17の伏線回収はポルック君の一緒にお風呂に入ろうねー。でした。

次回噂の渦中の中

スピカは辞表を出して生徒会を辞めてしまうのでしょうか?シリウス王子の対応は?ご期待ください。

だーれーかー。そろそろファースト評価ポイントお願いします。

ファーストブックマークの方!今でも崇拝してます。だーれーかー。お願いします。

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