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第33話 意外な味方

コンコン!


 ドアのノック音が再び鳴った。

 訪ねてくる相手と言えば、シリルの使者だろうと考えた。一日早い来訪とは思わず、着ている服があまりにも簡易的だったのもあり、ミシャーナは肌が見えないようショールを一枚肩にかけた。


 それにしても簡易的すぎるが、今は変装もしていない。使者にはミサの知り合いとでも言い、用件だけ聞けばいいと考えてドアを開けた。


「え?」


 ミシャーナの前には、シリル本人が立っていた。使者だとばかり思っていたので面食らい、次の言葉を発することができない。

 一方のシリルも同じく驚いた様子で、ミシャーナを凝視している。しばらく緊張状態が続いたあと、シリルが顔を耳まで赤らめて目を背けた。


「失礼、妙齢の女性がそのような服装は、いささか目のやり場に困るのだが……」


 ミシャーナはショールを羽織っていたとはいえ、胸元が大きく開いた楽な服装で、身長の高いシリルからは強調された谷間を上から覗く形になっていた。

 それに気が付いたシリルが慌てて顔を逸らしたのだ。


 ミシャーナは急に恥ずかしくなり、胸元を抑えると「少しお待ちください」とドアを閉め、慌てて服装を整えた。

 ドアを再び開けると、シリルは腕組みをして扉に背を向け待っていた。


「どうぞお入りください」


 ドアを開けて中に通そうとすると、シリルは一瞬迷ったようだったが、言われるままに部屋に入った。

 質素な安宿の広くも無い部屋を珍しそうに眺めていたが、ミシャーナがテーブルの椅子を引いて腰掛けるよう声を掛けると、気まずそうに曖昧な返事をして椅子に座った。


「すまない。このような場所は初めてで」


 顔を背けるシリルに、ミシャーナは話を切り出した。


「ミサから話は聞いております。ご使者様――でしょうか」


「ああ」


 シリルは短く返事をし、驚いた様子でミシャーナの顔を凝視した。


「貴方は、ミサ……さん?」


 何故か変装していたことが知られている。ミシャーナは驚き、そして観念した。


「はい、仰る通りです。侯爵様をたばかった罪で罰せられても仕方がありません」


「罰?」


 シリルはミシャーナの意図が分からず、暫く考えたのち再び口を開く。


「貴女が何か隠していることは薄々感じていた。応接室での話しぶりと、目の前のあなたの声色や立ち振る舞いが一致している。変装には何かあるのだろうとしか思っていなかったが、まさか――」


 シリルはそのあと呟くように「こんなに美しい女性だったとは」と続けた。覆うように口元を右手で抑え、自分の思考を整理するように何かブツブツと呟いている。


「シリル様、どうかされましたか?」


 ミシャーナが問うと、シリルは慌てて姿勢を整え、咳ばらいをひとつした。


「ンンッ! さて、早速本題に入ろうか。こちらに資料を用意した。結論から言おう。貴方の告発は正当なもので、ベジャール領の不正な金の動きに関して本格的に資金調査と内部捜査を行うことになった」


「本当ですか!? それでは、ベジャール領の税は……!」


 シリルは大きくひとつ頷くと、話を続ける。


「ああ、即刻以前の税に戻し、必要であれば領民に還元することを約束しよう。奪われた金が使われていなければ、という話にはなるが」


「ええ、ええ。それでも嬉しいです。ありがとうございます」


 ミシャーナはシリルの手を取り喜んだ。シリルはまた耳まで赤くなり苦言を呈す。


「申し訳ない。貴女のようなうら若い女性が、気安く男性の手を取るものではない。お互い独身だろう」


 指摘されたミシャーナは赤面すると慌てて手を離す。俯いて小さく「申し訳ございません」と謝罪し、恐る恐るシリルを見た。


 シリルはミシャーナを見据えていたが、少し口元を緩めて仕方ないとでも言うように、肩をすくめた。


「それで、貴女はどうしてあのような変装を?」


 ミシャーナは迷ったが、少しでもご令嬢の負担が減ればと真実を話す決心をした。


「――実は、エリザ令嬢のお連れの男は私の元婚約者です」


 流石にこれにはシリルも驚き、言葉も出ないようだった。ミシャーナは丁寧に今までの経緯をシリルに話して聞かせ、先程届いたばかりのセドリックに関する報告書の内容を伝えた。


「あの男は、私を捨てるような行為に及んでおきながら、なぜか執着しているのです。私の姿を見たらまた暴力を振るわれるかもしれず、あのような変装を……」


 シリルはいきなり立ち上がると、ミシャーナに近付き手を取った。


「なんと、貴女のような聡明で美しい女性にそのような傷を負わすとは、けしからん男だ。我が愚妹が貴女に負担をかけたことも、併せて詫びよう」


 そう言うとそのまま(ひざまず)き、ミシャーナの手に口づけを落とす。


「わたしは、貴女をあの男から守ると誓おう。そして、この国から追い出すことを約束する。あんな男に愚かとは言え妹を好き勝手されたくないからな」


 ミシャーナもシリルの手を握り返し、強い眼差しで誓った。


「私も、エリザ令嬢をセドリックの魔の手から解放するのを、微力ながらお手伝い致します」

シリルいいですよね、シリル推しの作者です笑

ざまあカウントダウン5

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