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第九話 やってみないと分からない

 冒険者ギルドの受付カウンターに立ちながら突っ伏してしているのは、観光から帰ってきて数日たった暇人、もとい、イレーネとカレンである。

「楽しかったねぇー・・・」

「んー」

「・・・暇だね」

「んー」

「依頼でも探してきたらどうなの」

「ないしー・・・」

「カレンちゃんもこんなのに付き合わなくてもいいのよ?」

 イレーネと一緒に突っ伏しているカレンだが、全くもって暇とは思っていないのであった。・・・とはいっても、特にやることもないのだが。

「うん」

 カレンは突っ伏するのを止め、掲示板の方へ走って行った。

「カレンー・・・」

「あんたも行きなさいよ。一見つまらなそうでも、それから意外なことが起きることもあるんだから」

「えー・・・?」

「とりあえずやってみればいいじゃない」

「オリヴィアが言うなら? やってみないこともないかも―――」

「じゃあ早くやりなさい」

 オリヴィアに食い気味に言われ、渋々カウンターから離れてカレンの横に並び、掲示板を見る。

 イレーネはこうみえてCランクというなかなかの腕をもつ冒険者である。

 だいたいの魔物討伐の依頼は引き受けることができる。が、魔物討伐の依頼を引き受けることは他の冒険者に比べれば少ない。

 理由は簡単だ。イレーネ本人が魔物討伐よりも探検、冒険や料理の方が好みであるためだった。あとは気分屋であることも関係してるのだろう。

 今までで魔物討伐の依頼を引き受けた数は両手足を使えば数えられる程だ。

「あれ」

 カレンが一つの紙を指差した。

 イレーネが紙に顔を近づけて見てみると、それは子ドラゴンの討伐依頼だった。

「ん~・・・なんか危なそうじゃない?」

 引き受けることができる冒険者ランクはCと書いてあり、引き受けることができる。

 しかし、子ドラゴンとはいっても魔物の上位に位置するドラゴンだ。安易に、やってみよう、とは言えない。

 依頼の情報を見るに、親のドラゴンの目撃情報は長らくないらしい。

「こんくらいじゃねぇとつまらねえ!」

「ええ・・・でも、アタシドラゴンと戦ったことないし・・・」

「ァアン? そんなもん、やるまで全員ハジメテだろうが」

「な、なんだって・・・? ・・・ラーベのくせに、それっぽいこと言うじゃん・・・」

「ラーベのくせに」

「お前らァ!」

 うるさいラーベをおいて考えてみると、初めてドラゴンと戦うのもいい冒険になるだろう。

「やってみて損はないか! 死んだら話は別だけど!」

「そうだ! 戦う以上におもしれえことはないしなァ!」

「それはない!」

 ワーワーギャンギャン騒いでいるうちに周りから注目を浴びていることを知るのは、オリヴィアに怒鳴られてからだった。


 カレンたちは今山の前に立ち、大きい山を見上げていた。

 依頼の情報によれば、この山の頂上に子ドラゴンが居座っているらしい。

 登山を始めると外からは見えていなかった荒々しいところが見えてくる。

 草木は生えているが所々岩石や土がむき出ており、落石がいつ起きてもおかしくないほど脆いように見える。

 時々、石が転がる音がする。

「本当にここドラゴンいるのかな?」

「いるぜ。ずっと上の方に魔力の塊がある」

「意外と静かだね」

「寝てんだろ」

 いつもより声量をおとし、時々休憩をはさみ、変わらず雑談をしながら山頂を目指す。

 「・・・魔物がいない」

 ぽつりとカレンが呟いた。

 山には木などの障害物が多く、隠れやすいところがあるため、危険と隣り合わせの魔物には都合がいい環境だ。

 そのため、山などの木々があるところには魔物がいるのが普通だ。

 しかし、ここの山に入っても魔物とは一度も遭遇していなかった。

「アア? わかんねえのかァ? お前はまだまだだなァ」

 一人でマウントをとるラーベを横に、イレーネはカレンに説明を始める。

「えっとね、ドラゴンって魔物の中でも特に強いんだよ。あと、強い魔物は魔力量が多くて、魔力を感知するのに長けてる魔物は魔力量が多いドラゴンの魔力を感じ取って距離を置くんだよ。わざわざ勝ち目のないドラゴンが住む所に近づいても殺されちゃうかもしれないしね」

「・・・だからドラゴンが居るこの山には魔物が近づかない」

「そういうこと!」

 カレンが気になったことの答えを知りスッキリしたところで、少し平らになり広間の様にひらけている山頂に到着した。

 その真ん中には身体を丸めて眠っている子ドラゴンが居座っている。

 サッと木の陰に隠れ、眠っている子ドラゴンを垣間見る。

 子ドラゴンが起きる気配はない。

「・・・どうする?」

 そうイレーネが二人に問うた。

「強そう」

「そりゃ・・・強いからね」

「ドラゴンは眉間にブチかませば一発よ!」

「そうだけど・・・」

「お前弓使えんじゃねえのかよ!」

 実際、イレーネは背に弓矢を背負っている。

「使えるけど・・・失敗したら怖いし・・・」

 ずっとブツブツ言い訳を言っているイレーネに痺れを切らしたラーベが、イレーネの弓を奪い取り、無理やりイレーネに持たせる。

「まず言っておく。お前が今持ってる矢じゃ、あいつの眉間は貫けん!」

「じゃあ意味ないじゃん・・・」

「だからだな、とりあえずそいつが時間をかせいでやるから、お前はあいつの眉間貫けそうなやつ作れ!」

 あまりのラーベの無理難題にイレーネは思わず苦笑し、カレンは真顔で言った。

「そんな時間ない」

「やってみなきゃわかんねえだろ!」

「それならラーベが矢になればいい」

「あ?! なんでこのラーベ様が矢なんかに! てか、もっと他にあるだろ!」

「最適解だし。・・・やってみないと分かんないもんね」

 カレンの言葉にラーベは言葉に詰まり、悔しそうに押し黙る。

「・・・なんていうか・・・・・ざまあってやつ?」

 気まずげに言ったイレーネの言葉に、ラーベが沸騰する。

「なんだとおまえらァアああ!!」

 ラーベの大声に、子ドラゴンが目を覚ました。

「僕関係ないのに・・・ ドラゴン起きた」

「え?! まって!」

「じゃあ・・・計画通りに?」

 そう言ってカレンは木の陰から飛び出し、子ドラゴンに突っ込んでいった。

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