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第十話 洞窟探検

 子ドラゴンといっても、大きさは人間の倍はある。

 ドラゴンがもつ大きさの爪で引っ掻かれれば、一発で真っ二つだ。

 牙や尻尾なども例外ではない。

 とにかく、子ドラゴンから攻撃を受けることは避けたい。

「グゥォ”オオ”オ”オ”―――!!」

 子ドラゴンが咆哮し、前足の爪で走ってくるカレンを引き裂こうとする。

 カレンは素早くその爪を躱し、子ドラゴンの死角に入る。

 ドラゴンの弱点、それは柔らかい腹と眉間だ。眉間は直接魔石を破壊するわけではないが、眉間に攻撃を受けると、人間でいう致命傷となる。

 カレンのような小さい体ならば、高いところにある眉間よりも腹のようなもぐりこめるところの方が狙いやすい。

 ドラゴンの腹にもぐりこむのがまず至難だが、カレンとなれば話は別だ。

「ゥゴガァア”ッ―――!」

 カレンは己の尻尾を使い、ドラゴンの腹を縦に切り裂いた。

 地面にドラゴンの紫色の血が飛び散る。

 追撃をしようと振り返るが、子ドラゴンは翼を広げ上空に飛び上がった。

 さすがにカレンには翼がない為、空を飛ぶことはできない。

 しかし、カレンは瞳をきらきらさせていた。

 その瞳に宿っている感情は――――楽しそう、である。

 すると、子ドラゴンの左右に四つの魔法陣が描かれ、牙ような形をした岩が生成された。

 その岩はカレンめがけて降ってくる。

 カレンは移動し、連続して降ってくる岩を回避する。が、一方的な戦闘はなんだか気に食わないカレンは、子ドラゴンに向かって魔法を放つ。

 カレンはドラゴンに向かって手をかざす。

 すると、かざした手の前に魔法陣が描かれる。

 魔法陣の前にゴツゴツとしたカレンの顔より一回り大きい岩の球体が生成された。

 岩の球体は子ドラゴンの魔法を避け、子ドラゴンの顔横に命中した。

 子ドラゴンがふらつき、攻撃が止んだ。

 その時を狙い、カレンが勢いのままに上空に向かい、地を蹴って飛び上がった。

 そこで思い出す。

 浮遊魔法・・・あるじゃん。

 すまし顔で浮遊魔法を使い、ひるんだ子ドラゴンの頭上で足を振り上げ、子ドラゴンを上空から蹴り落した。

 尻尾に魔力を集中させ、子ドラゴンを魔石ごと真っ二つにするべく降下した。

 しかし、子ドラゴンの周りの地面に四つの魔法陣が浮かび上がった。

 魔法陣が浮かび上がった地面からは、先端がとがった岩の柱がカレンに向かって伸びてきた。

 降下の勢いが強すぎるため、浮遊魔法での回避は間に合わない。


 一方、ラーベとイレーネは言い合いをしていた。

「もう・・・! カレン行っちゃったじゃん!」

「テメェがもたもたしてるからだろ!」

 ついさっき、カレンは起きてしまった子ドラゴンの時間稼ぎに行ってしまった。

 計画通りに、なんて何を矢にするのか決まっていないというのに。

 まあ、いざとなったらラーベを矢にする気ではいるが。

「お前があいつの魔石を壊すわけでもねえんだ! 眉間狙って当たればドラゴンの動きを止めれるからやれって言ってんだよ!!」

「あ、当たるか分からないし・・・!」

「だーかーらァ! やってみねえと分からねえつってんだよ!」

 いつまでたっても終わらない。

 堂々巡りだった。

 イレーネはチラリとカレンの様子を見る。

 翼を使い上空で攻撃を仕掛ける子ドラゴンに、カレンは浮遊魔法を使い、子ドラゴンを蹴り落した。

 子ドラゴンは地面に激突し、地に少しのひびを入れた。

 砂埃が舞う。

 地面には子ドラゴンが仕掛けたであろう魔法陣が浮かび上がっており、そこから岩の柱が伸びる。

 その先端はとがっていた。

(まずい・・・!!)

 イレーネはラーベに掴みかかっていた。

「さっさと矢になれぇー!」

「おあァ――?! なんなんだよお前ッ!」

「黙れ早くしろぉ!!」

 イレーネはラーベを横に引っ張り無理やり長くしようとする。

「おいテメェやめろ! さっきと変わりすぎだろ! 急に人格でも変わったのかよ―——?!」

 ラーベが矢の形になったのを確認し、弓にセットしながらカレンの様子を確かめる。

 カレンは危機一髪で尻尾で柱を破壊したようで、傷を負った様子はなかった。

「カレンー!!」

「おい誤射んなよ!」

 カレンはイレーネに視線を向けた。

 イレーネとは逆の冷静な顔で一つ頷くと、立ち上がろうとしていた子ドラゴンの頭上から再び蹴りを入れ、眉間が真正面になるように馬乗りになる。

 イレーネは子ドラゴンの顔の正面が見えるとこまで行くと、ラーベをセットした弓を構える。

(あー! まってまってこれ失敗したらカレンに当たる可能性―——?!)

 そんなことを考え、全く射撃に集中ができていないイレーネ。

 失敗する可能性大である。

 今もカレンを振り落とそうともがく子ドラゴン。

 いつまでもつか分からないこの絶好のチャンスを逃すのはもったいないと分かっていることではあった。

 しかし、手は震え、狙いは定まらない。

(このままじゃ・・・・・ 早く早く早く! 早くしないと―――!!)


 ―――「おい! 集中しろ馬鹿野郎!!」


 不意に聞こえた激励に、イレーネの雑念は吹っ飛んでいった。

 そうだ。集中。

 イレーネは矢をしっかりと引き、ドラゴンの眉間に狙いを定めた。

 微動だにしない手で、矢を離した。

 放った矢は見事に子ドラゴンの眉間に命中した。

 地面に飛び散った血と、荒々しくもがいていた子ドラゴンの動きがぴたりと止んだのが証拠だ。

「よ・・・かったぁ・・・」

 イレーネは姿勢を崩し、地面にへたり込んだ。

 カレンは子ドラゴンの眉間に突き刺さったラーベを引っこ抜き、イレーネのもとに駆け寄る。

 イレーネはしばらくカレンを凝視し、涙目でカレンに抱き着いた。

「カレン”―! うわあああよがっだよ”ぉー!!」

「おい聞けよカレン。そいつ、お前が死にそうになったら人格変わりやがったんだぜ?」

「なんて?」

「早くしろとか・・・とにかくうるさかったぜ」

 そうラーベはケラケラ笑う。

「ラーベより?」

「テメエ俺様をうるさい基準にすんのやめろ!」

 騒ぐラーベを横に、カレンはイレーネに言う。

「ちゃんとできたんだし、助かった」

「カ・・・カレンー!!」

「無視してんじゃねえよ!」

 泣き喚くイレーネとキーキー騒ぐラーベに挟まれ、耳を塞ぐカレン。

 その時、地面に暗い影ができ、頭上から膨大な魔力を感じ取ったカレンは、ラーベを尻尾で、イレーネを片手で持ち、立っていた場所から離脱する。

 砂埃がまきおこった。

 さっきの子ドラゴンとは比べ物にならないほどの巨体を持ったドラゴンが、牙を剥き出して降下してきたのだ。

 脆いであろうこの山がそんな巨体の突進に耐えられるわけもなく、ゴトゴトと音をたて地面がひび割れて崩壊していく。

 足場が不安定になり体勢を崩してしまったカレンは、せめて怪我を少なくしようと注意しながら足場の崩壊に吞み込まれていった。

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