↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/160

EP.5 - 54

 ゾンビ男(仮称)は、どうやらエルミー達とは違う言語圏の人間らしく、言葉が通じないようだった。


(異世界も多言語なのか……)


 異世界と言えどその規模は"世界"レベルな訳で、当然と言えば当然だ。

 恐らくは異世界の宇宙に存在し、数多の星々のうちの一つであるこの惑星には様々な文化圏が存在し、そこに住む人々はそれぞれ独自の言語を使用しているのだろう。


(お嬢には遠出させないようにしないと……)


 うっかり遠くに旅立たれて別の言語圏に入られて、異世界言語を一から覚え直す破目になったら心が折れそうだ。


「おい、さんば」


 そんな事を考えていると、コアンがゾンビ男(仮称)に話しかけた。


「なぁさんば、おまえなんでいきかえったん?」

(死んでなかったんだよ……っていうかサンバは名前じゃないぞ)


 相手は異世界人、こちらは日本語なので当然ながら通じない。

 なので彼女の疑問は彼女自身が根本的な間違いに気付くまで解けないままだ。

 そしてきっとゾンビ男(仮称)の本名も不明のままだろう。


(それは兎も角、俺はアイツの真意が知りたい……)


 ゾンビ男改めサンバは、食堂で神父たちに倒されたのだから、この家を襲撃したメンバーだろう。

 にも関わらず敵地の真っ只中で明らかに力で勝っているであろう子供達に対し危害を加えるどころか敵意が無い事を示している。

 改心したと見るのは早計過ぎるだろうが、ならばいったどんな考えを持って彼は行動しているのだろうか。



 いくつかの謎を残したまま、サンバと俺達は行動を共にする事になった。



 明かりも人気も無い廊下を歩く一行。

 サンバは一行を先導し、進行方向からコアン達を庇うような体勢をとって歩いている。


(うーん、頼りになりそうな感じではあるけど、信用していいのかなぁ……)


 信用という点において不安はあるが、コアン達だけで襲撃者に狙われた屋敷の中を歩かせる訳にもいかない。

 一か八か、彼に頼るしかないだろう。


「なぁ~、ど~なんだ?」

「シーッ!」

(注意されてやんの)


 サンバに、静かにするようジェスチャーで指示を受けるコアン。

 エルミーの地元では人指し指と中指を交差させて口に当てる仕草が"静かにしろ"の合図だったが、彼の地元では立てた人指し指のみを口に当てるらしい。


(多少違いはあるけど、どっちも元居た世界と似てるんだな)


 このジェスチャーの生まれた経緯が似ているのかもしれない。

 何せ異世界人も、俺が元居た世界の人間と同じ"人型"で、且つ酷似した生態の生き物だ、そういった事もあるだろう。


「なんだよけちっ、おしえてくれたって………………おっ?」


 質問をスルーされたことが不満だったらしく、ぶつくさ言っていたコアンが何かに気付いたらしい。


「おーい、きーす! こっちこっち!」

(静かにしろって注意されたばっかりなのに……まあいいか)


 どうやらキースがこちらに向かってくるようだ。

 暗くて俺にはまだ視認出来ないが、コアンはその姿が見えているのだろうか。


(声か何かで判断してるのかなぁ、暗くて何も見えないや)


 集中して暗闇をフォーカスしてみるが、そこに人影は映らない。

 キースの姿を確認するにはもう少しかかりそうだ。


(ま、あいつと合流できればひと安心かな……)


 サンバも今のところ不審な動きはない。

 エルミーとリニーの安堵の声も聞こえ、何とか事無きを得たかと思ったその時であった。


(あれ、モエナさん!?)


 廊下の窓から僅かに差す月光を受けて輝くクリーム色の髪が闇に踊る。

 前傾姿勢のモエナが物凄い勢いでこちらに走ってくるのが見えた。


(…………あっ、まさか!)


 襲撃者の仲間であるサンバがコアン達を連れているこの状態。

 事情を知らない人間であれば危機的状況と判断してもおかしくない。

 モエナは明らかに戦闘態勢だ、このままサンバに攻撃を仕掛ける可能性は極めて高い。


(やばい! 同士討ちになっちまう!)


 猛スピードで近付いてくるモエナ。

 その手には小振りのナイフが握られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。