最終話 平凡な滅亡の日々
新連載「のじゃロリ魔王姫さまはNPCじゃありません!~ネタキャラ? いえ、レアキャラです!~」始めました!
VRゲームものです!
初日は2話同時掲載です!
『ガォォォォォォォン!』
「うわぁぁぁっ! 魔物の集団だぁーっ!」
周辺国から仕入れた食料を運ぶ馬車が魔物の群れに襲われていた。
当然護衛の騎士達が守ろうとするが、魔物の数が多すぎてとても相手にならない。
「何だあの異常な数の魔物は!」
「逃げろ! 逃げろ!」
「だが食料が!」
「馬鹿野郎! 死にてぇのか!」
結局輸送隊は食料を諦めて逃げ出す事となった。
更に国家間の取引だけでなく個人で食材を仕入れて来た商人達の馬車も襲われる。
「ああ! 商品が!!」
「駄目です旦那! 逃げるしかない!」
一応加減はしているので人間達の命は無事だ。
そんな感じで外部から運ばれてくる食料の供給はほぼ完全に失われていった。
その結果人々の飢えは限界となり、このままではいつ暴動になってもおかしくない、そんな時だった。
「食料はいらんかねー!」
「新鮮な食料ですよー!」
食料を売りに来た商人が現れる。
『売ってくれー!』
『金ならある!』
魔物の群れかと見まがうような形相で殺到してくる人達。
「パン一個金貨1枚です!」
『買った!』
「肉一塊、金塊1つです」
『買った!!』
ありえない金額でパンが肉が売れてゆく。
それというのもここ最近の金銀のバラマキと異常な額の取引が横行した所為だ。
今じゃ金貨や宝石なんてそこらじゅうに溢れてゴミ同然。いやウンチなんだけどね。
「まぁ、マッチポンプなんだけどね」
完全に金銭感覚がぶっ壊れた人達が少しでも食料を得ようと殺到する。
『もっとくれー! 金ならある!』
「順番に順番に! まだまだ食料はあります!」
そうして俺達は幾つもの町を渡り歩いて食料を売りさばいてゆく。
平民も貴族もたった一個のパンを求めて大金を支払ってゆく。
けれど、食料は食べれば減るもの。
当然再び飢える事になる。
『食い物を売ってくれー!』
「はい、パン1個金貨一枚です」
「金なら……あれ?」
だが懐を探っても金貨は出てこない」
「か、金が……」
あれだけ大量に金を使っていたのだから無くなるのは当然だ。
だがこちらも鬼ではない。
「お客さん、お金がないなら物でもいいですよ。鉄で出来た道具とか金になるものならそれでも」
「良いのか! ちょっと待っててくれ商売道具を持ってくる!」
普通ならありえない発言をして家に向かって駆けだす人々。
「これで売ってくれ!」
ナイフやハサミにランタンと言った日用品を差し出す人達。
そして職人ですら命より大事な仕事道具を差し出してくる始末。
だが仕方がない。だって農民たちですら財宝を得てはたらかなくなったんだ。職人達も言わずもがなである。
「過ぎた財産は身を亡ぼすなぁ」
「ふふふ、物だけではありませんよ。権利も買ってきました」
とククミスが何枚もの権利書を抱えて戻ってくる。
「権利書って何を買ったんだ?」
「お店の権利書に村との食料の納品契約書などですね。これを別の町の商人に食料と共に売りつけます」
「食糧不足のこの状況で納品契約書を売るとか言われても普通に疑われないか?」
「だからこそ食料も付けます。疑わしくとも食料は本物なので」
うーん悪辣。
「死んだことになっている私達が契約書の権利を主張しても無意味ですからね。売り払うのが一番です。トラブルになっても困るのは本人達だけですから」
やっぱり悪辣ぅ。
こうして国内からは食料だけでなく金や物もなくなっていった。
『ギュォォォォォン!』
「そして仕入れた道具から魔物達が生まれてこっちは戦力も増えると」
さらに言えば熟練の職人達が使っていた道具から生まれた魔物達はそれ自身が様々な技術や複数の能力を持っていた。
「大事に使い込まれた道具ほど能力の高い魔物になるのかな?」
だとしたら伝説の宝剣とか超一流の職人の道具から生まれた魔物は凄い事になりそうだなぁ。
「フォルス様、騎士団が聖域に魔物討伐の名目で食料を確保しに行くそうです」
「お、やっと動いたのか」
「食べるものが無くなって自棄になった住民達による嘆願で命の危機を察したようですね。近隣の森や山は葉っぱすら食べられて酷い有様でしたよ」
ガチで飢えてるんだなぁ。
聖域に入ってくる人間達もいるけど、魔物が居るからどうしても十分な食料が得られない。
護衛をしてくれる冒険者もいまや殆どいないからな。
そんな訳で騎士団が聖域に侵入してきたんだが……
「装備がバラバラだなぁ」
以前来た騎士団と違って今度の騎士団は装備が足りなくなっていたりちぐはぐな装備をしている。
「騎士も人間ですからね。下位の騎士や従者達は家族の食料を得るためにやむを得ず武具を売ったりしていたみたいです。今回の出動で慌てて装備を買いそろえてああなったようですよ」
元から騎士団は遠征で食料を確保していたがそれでも家族の分を確保するのは大変だったらしい。
彼等自身も満足に食べていないからフラフラしている。
「よし、騎士団を攻撃だ。けど本気で戦う必要はない。相手の体力を削るように戦うんだ!」
『ガォォォォォォン!』
魔物達が騎士団へと突撃してゆく。
騎士団は食料が向こうからやって来たと戦意も高く迎撃するが、魔物達は回避重点で騎士達をおちょくり、遠距離攻撃の出来る魔物が騎士団の中核に攻撃を放つ。
「くそっ! 何だコイツ等! 真面目に戦う気があるのか!」
「馬鹿にしやがって!」
騎士達が怒って突撃してくるが魔物達はすぐさま走って逃げる。
そうして騎士達を挑発しては逃げるを繰り返した事で騎士達は疲労も相まってすっかり疲労困憊になって倒れてしまった。
「憐れな」
国中でこのような戦いともいえない戦いが繰り広げられる。
俺達が居ない地域でも戦いは行われており、その中には上手いこと野生の魔物の群れとぶつかって食料を確保する騎士団もいた。
が、そんな時は隙を見て食料を奪えと言っておいた。
戦いで疲れた直後の騎士団はようやく手に入れた食料を奪われたショックもあって動けなくなり、結果碌な成果を出せずに撤退することとなった。
「周辺国が動きました。今度は不平等条約どころか堂々と国土の割譲を提案してきたそうですよ」
「うわぁ、足元見てるなぁ」
メシが欲しけりゃ領地寄こせとか、普通なら受けられないよね。
「流石にそれは戦争なのでは?」
無いなら奪え、ある国から奪えは前世の戦国時代でも普通にあった出来事だ。
「はい、ですから現在国は辺境の領地などくれてやれという中央の貴族と、ふざけるな徹底抗戦だろうという辺境貴族派と分かれています」
「それ、普通に中央の権力が勝つんじゃないの?」
王様の命令になる訳だし。
「いえ、辺境には辺境伯という独自の自治権を持った大貴族が居ます。彼等は国土防衛の為に独自の権限を持ち、国王と言えども粗雑には扱えない存在です。そんな彼等が国土を削れと言われて素直に応じる筈がありません」
実際にとんでもないことになった。
「南部の辺境伯が隣国に攻め込みました!」
「南部に接する隣国は我が国と敵対的でしたからね。そうなるのも当然です」
「更に東部は隣国に下り我が国の敵になりました」
「あっ、俺の故郷がある地域だ」
「東部の辺境伯は隣国の貴族令嬢を妻に迎え友好的な関係を築いていましたからね」
「北部が独立を宣言したみたいです!」
「北部は元々独立気質が強かったですからね。気候的な問題もあって国との戦いは泥沼になるでしょうね」
完全に国が割れてもう滅茶苦茶じゃん。
「西部が隣国に攻められて戦争がはじまりました!」
「国が割れたこの状況を好機と見たのですね」
「ちなみに西部は私の故郷があるので今頃激戦区ですね。きっと戦士として本望でしょう」
「……」
俺は知っている。ストレがこっそり魔物達に頼んで故郷の村周辺の魔物を襲って故郷の人間達が食料を確保できない様にしていた事を。
でも情けとして言わないでおく。
と、そんな感じで唐突に始まった西部の戦いだけど、いきなり2/5が無くなった国がまともに戦えるはずもなく、更に1/5は現在別の国と戦争中だ。
憐れ惨敗となりました。
そんで南部もまぁ悲惨な事に。
結果として東部と北部が生き残った感じだけど独立した北部は食料不足が今も続いているし、春まで持つかどうか。あと春になったらなったで周辺国から攻め込まれるだろうから、これからが大変だろうな。
「北部は良くてどこかの国の属国でしょうね」
「ついでに言いますと東部も完全に安泰という訳ではありません。祖国を裏切って他国に付いたわけですからね。ただこれは戦さの習わしでもあるのでそこまで問題ではないでしょう。特に弱小領主は生き残る為に常に勝馬に乗ることに必死だったそうですからある意味いつもの事かと」
異世界でも戦争になると寝返りや裏切りは常套手段なんだなぁ。
なんか教科書の出来事が現実に起きている気分だ。
「南部の辺境伯もなし崩しで戦いを始めれば国も動かざるを得なくなるという目算だったのでしょうが、狙いが外れましたね」
「ククミス様が国中からかき集めた金と武具を周辺国にばら撒いて戦争の準備を整えましたからね。弱った国が居たらそりゃあもう早い者勝ちになる訳です!」
「そう言うことです」
こうして、同居人が闇に落ちたことで俺達の国はあっという間に滅んだのだった。
いやー、人の恨みって怖いね。
◆
「なんて事があったなぁ」
魔物達に囲まれながら、俺は懐かしい記憶を思い出す。
「あれからなし崩しに周辺国同士で戦争が始まったんだよな」
「その際、重要な局面に限って謎の魔物達の襲撃に遭い、戦いは泥沼化。結果各国は大きく弱体化し、かつて王国があったこの地を手離す事になりました」
「世間では魔物が戦争に介入してきたのは聖域を血で汚した事に神が怒ったからだと噂されているそうです」
「実際には聖域で戦いは起きてないんだけどな」
「ですがそのおかげで聖域と認識される範囲は拡大し、フォルス様の支配する土地が広くなったわけです!」
「別に俺は聖域を支配してる訳じゃないんだけどね」
「ですが聖域の魔物の大半はフォルス様の支配下に置かれた訳ですし、実質フォルス様の領地なのでは?」
「ミッ!」
そんなククミスの言葉にダンテが同意の声を上げる。
「お前もデカくなったよなぁ」
俺達の眼の前には、巨大な大木がそそり立っていた。
ただしその木は葉っぱの代わりに大きな綿毛を生やしている。
そう、ダンテだ。
あれからダンテはどんどん成長していき、遂には一本の綿毛の木としてここに根を張り動かなくなった。
綿毛の木って何だよと思うかもしれないがまぁ異世界だしね。
そして動かなくなったダンテの代わりとばかりに……
『ミッミッ!』
小さなダンテが生えて来た。
「お前ってさ、もしかしてあの枯れた大木からこんな風に生まれて来たのか?」
「ミッ!」
肯定する様に声を上げるダンテ。
あの日、行き倒れた俺の前に立っていた朽ちた大木。そこから落ちて来た銀色の果実。
それこそがダンテだった。
「もしかして俺って、ダンテを新しい場所に根付かせる為の中間宿主だったのかもな」
なんてことを考えても答えは出ないんだけどさ。
「フォルス様ーっ、次はどこの国を滅ぼしますかー?」
「気軽に国を亡ぼすんじゃありません!」
「いいじゃないですかー。魔力無しを生贄に捧げる様な世界ですよ! 一回全部壊してしまいましょうよー!」
やれやれ、王家を滅ぼして吹っ切れたのはいいけど、これ以上暴走しないように見てないと駄目だな。
「フォルス様、南部のさらに向こうには海という魚が無限に採れる水場があるそうです! そちらを攻めませんか!」
「攻めないって! でも、海か。海も良いなぁ。今なら氷の魔法を使える魔物が冷凍庫代わりに食べ物を凍らせてくれるし」
魔物もどんどん増えて今じゃ前世と遜色ない程に快適な生活となっている。
なんなら前世よりも便利な場面もあるくらいだ。
「よし、次は南に行くか!」
『おおーっ!』
こうして、俺と魔物達の気ままな生活は続いてゆくのだった。
「海にはどんな魔物がいるんだろうな!」
―魔物畑で快適ライフ 完―
これにてフォルス達の物語は終幕です。
お付き合いいただきありがとうございました。




