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第四話 エレナと私

 私とエレナは庭にあるベンチに腰をかけた。隣にエレナが座るなんていつぶりだろうか。何年も一緒の所に座って無かったから少し違和感を感じてしまった。エレナと座らなくなったのは仲良かった友達をエレナに取られた時からだったけ…あれは結構堪えて私はエレナを避けるようになって逃げ出した。今思えば本当に自分が情けない。

 そう思っていたらエレナの方から私に話しかけて来た。目的はなんなのだろうか。


「ねぇ、アメリア?久しぶりじゃない?隣に座って話すなんて」


 エレナも私と同じことを思っていたらしい。だが私が言いたいことはそんな事ではない。レオナルドの事だ。いつから近付いていたのだろうか。


「エレナ、私は話をする為に座ったのですよ。早く話をしましょう。夜遅いですので」


「まぁアメリア。私に気遣ってくれるの?」


「貴方に何か問題があれば私が疑われかねないですので」


 こんな夜遅い時間に問題が起きたら真っ先に私が疑われるだろう。そしたら国外追放だけでなく死刑まで追いやりそうな気がした。国王ではなくこの国の王子が出来ることでは無い気がするがあのレオナルドの事だ。上手く周りを黙らせるだろう。それだけの権力がある。

 エレナは本当に羨ましい。私がどんなに危険な目にあってもあの人は…気にしないだろう。一度、そんな出来事があったから身に染みている。あれは私が13歳の時だったっけ…。公爵家の令嬢と言う理由で私は誘拐されてしまってお母様とお父様が助けてくれた。

 誘拐された時のレオナルドを聞いたがいつも通り剣術の稽古や勉学に励んでいたと言うことだった。この時、私はこの人の眼中に無いのだなと凄く感じてしまった。

 だけど私はレオナルドの事を愛していたから何度もめげずにアプローチし続けた。だが結果惨敗。お陰様で今の現状だ。本当に何をしているのだろうか。

 だけどレオナルドの事は恨んではいない。愛しているとそんな事は些細な出来事でしかなかった。だがレオナルドはエレナに夢中だ。その事が一番、嫌でしょうがなかった。


 そうこう思っているうちにエレナは立ち上がり私の前に立った。


「アメリア。貴方はレオナルドを奪われてどんな気持ちになっている?顔を見る限り泣いていたように見えるけど」


「ええ。確かに泣いていましたわ」


「フフ。アメリアを泣かしたのはこれで何回目かな。やっぱりこれ…やめられないわ」


 エレナは悪魔のように私に話しかけて来た。本当にエレナは一体何を考えているのだろうか。


「エレナ。貴方は何を考えているのですか」


「そんな怖い顔しないで?私はしたい事をしているだけよ。それにこの遊び…止められないわ」


「遊び…ですか。」


「ええ。アメリアから奪った玩具はそろそろ飽きてきたわ。レオナルドが私に捨てられた…なんて知ったらどんな顔をするかしら」


 目の前にいるのは本当に乙女ゲームの主人公なのだろうか。ゲームの設定と全然違う。こんな悪魔では無いはずだ。乙女ゲームの主人公はお人好しで心が広く優しい女の子だ。今のエレナはどちらかと言えばゲームの悪役令嬢ーーアメリアみたいだ。この世界はゲームで言うバグが起きているのだろうか。そうでなければ示しがつかない。私がエレナに虐めをしていないのもエレナが悪役令嬢みたいな性格なのも。


「貴方が持っている玩具はとっても楽しいけど奪った後はどうも面白くなくて使い道に困っているの。だから玩具はーー最後にゴミ箱に捨てないとね」


 エレナは微笑んだ。一体ゴミ箱とは何だろうか。今までの私から奪った物は一体どうしているのだろうか。今の言葉を聞く限り全て捨てていると解釈してしまう。では私と仲の良かった友達は今頃どうしているのだろうか。とても私は不安になってしまった。


「アメリア。私は用事が済んだからこれで帰るわ。次に会う時はきっと別の玩具を探しているでしょうね」


 フフとエレナは笑って私の家の外に置いていた馬車に向かって歩き出した。一体…何を考えているのか私には分からなかった。


 だがこれでスッキリした事がある。レオナルドはエレナに夢中で私との婚約は破棄する気持ちしか無いだろうと言うことだ。どんなに抵抗しようが上からの圧で婚約破棄するだろう。

 だが私の家も力のある公爵家だ。すぐに対処は不可能だろう。それでも時間の問題だ。私がいることで評判が悪くなっていく。それならすぐに家から出るのが得策のような気もする。

 出来れば家に迷惑をかけたくなかったから私は家から出ることにした。レオナルドとの婚約はとても心が苦しくて気が進まなかった。

 そしてレオナルドから渡された資料を整理し始めた。

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