第五話 資料整理
昨日は一睡も出来なかった。それもそうだろう。婚約破棄、国外追放、身分剥奪…こんなにたくさんの事が一気に起きたのだ。ぐっすり寝れるほど私の心は強くない。
それから私はレオナルドに渡された資料に目を通した。資料にはエレナにどんな嫌がらせをしたのか明確に書かれている。
中には証人がいたが知らない人物が多かった。よくこんな情報を集めれたなと感心してしまう自分もいた。
資料に目を通していくと婚約解消する為の紙もあった。そこにはもうレオナルドと国王陛下の名前が記入されており、後は私と私の両親の名前を書くだけだった。
婚約解消すること以外にも書かれていたことがあった。それはーー
『アメリア・マルティネスが行っている事業をレオナルド・ネルソンに引き渡す』
と記されてあった。
私が行っている事業とは貴族が使っている化粧品のことだ。貴族の方々が使っている化粧品があまり良くなくて良い物が欲しいと聞いて私はそこに目をつけたのが事の始まりだ。
最初は化粧水から売り出した。その化粧品はとても肌を綺麗にしてくれるからとても人気が出た。今ではこの国の事業の中でTOP3に入るくらい儲けており国から表彰状を貰ったこともあった。
だが今は身分剥奪される事になっており信頼性が無くなると言われた。だから代わりにレオナルドが受け持つ、と。
簡単に言えば事業の略奪だ。流石、この国を受け持つかもしれない王子。そこまで頭は働くようだ。
だが王子はそこまで頭はいい方ではない。先程言った事業で表彰状を貰ったと言ったが私ではなくこの王子だ。私はレオナルドの成果を作っている。この愛してしまった人に言われて。
私は事業を王子に任せていいと思うが不安は残る。この事業を受け持っているのは表向きはレオナルドだ。もしも私という人物が無くなったら成果を残せなくなる。そしたら皆が疑問に思うだろう。私が身分剥奪され国外追放された後から事業が傾き始めていることになったら…と考えてしまう。そこまで頭が回らないのはやはり馬鹿だとしか言えない。
国外追放までさせたのは私と言う婚約者が邪魔だったからだろう。私と婚約解消して従姉妹のエレナと結ばれようとしているに違いない。既成事実はとっくに作られている。その原因は夜な夜なレオナルドがエレナの家に言っている噂はあったからだ。
この噂を聞いた当初はとても気分を害してしまった。愛したレオナルドがエレナに奪われてしまう、と。
だがエレナがレオナルドに目をつけて落としたのはすぐに分かった。エレナの誕生日の日に重要なお茶会があった日があったがエレナの家に向かっていった。私はその時にいずれ捨てられるだろうと思った。
まさかそれから1ヶ月もせずにやってくるとは誰もその時は思わなかっただろう。
久しぶりにレオナルドと一緒にお茶会に行けると聞いた時はとても嬉しかった。心が踊った。だがまさか婚約解消の話が出るとは思ってもいなかった。おめかしをして張り切っていた自分がとても情けなく思えた。
だが婚約解消され国外追放されることになったら回避は出来ない。これからは一人で生きていかなければいけない。
前世の私が15年間庶民で生きていたおかげで料理、洗濯など家事は一通り出来る。それに接客業や畑作りも出来るみたいだ。
今思うと前世の記憶を思い出したのは一人で生きていく術を神様に教えてもらうためなのかもしれない。
そんな事を思いつつも私は資料に目を通していった。サインしないといけない資料もちらほらあったから私はペンを握り一つ一つサインをした。
だがサインをしている途中に手が止まった。エレナについて書かれている資料だ。エレナに暴力や暴言をしたことを認めるかどうかの資料だった。私は認めないのでこれだけはサインをしなかった。
エレナ。私はこの世で一番嫌いだ。私にはない可愛さを持っていてみんなの心を容易く奪っていった。
だから私はエレナに負けないように勉強を頑張った。それに未来の国王の妃に相応しい器を鍛えた。だがそれは無意味だった。またしてもエレナはそれが意味の無いようにレオナルドの心を奪っていった。
エレナは私と違い勉強も出来ず、どちらかと言えば馬鹿だった。だがそれが男ウケが良かったみたいだ。
私みたいに何でも出来る女より何も出来ないからつい庇いたくなるエレナの方が人気が出た。
そんなエレナに心を奪われず私を支えてくれたのは両親だ。実の娘だから、と言ってくれていた。もしもエレナが私の姉か妹だったら両親の心も奪っていたのかもしれない。そう考えるだけでもゾッとする。
そしてサインを書き終わった私は両親にも書いてもらわないといけない事業の受け渡しの書類と婚約解消の書類を両親の部屋に運んだ。




