第十四話 狼
それから私はノアの山に毎日訪れて行くようになった。手土産も一緒にもっていった。ノアが「今日は何だ」と言って私は「何でしょう」と言うのが当たり前になった。
ノアは一週間経ってもネルソン王国に行かなかったので私はひとまず安心した。だが油断は禁物だ。
私は今日も手土産を持ってノアの元へ行った。だがいつもと何か違う気がした。山に覇気が感じられない。どちらかと言うと殺気を感じる。
そう思いつつも私は山に足を踏み入れていつもの場所へ行った。だがそのにはノアではなく大きい狼みたいなのがいた。毛並みは白くて、とても綺麗だった。それは伝承にある白銀の狼そのものに見えた。だがその気持ちは一瞬にして消える。なぜならその狼をよく見ると口元にはノアがいたからだ。
私は頭が真っ白になった。このままではノアが食べられるのかもしれない。
そう思ったら私は咄嗟に動いていた。狼に向かって護身用の剣を刺しにいった。だが狼の尻尾に弾き飛ばされた。
「アメリア!何をしている!俺は無事だ!だから逃げろ!!」
この人は何を言っているのだろうか。ノアを置いて逃げれるわけがないだろう。私はこの人を命に変えても守ってみせると誓ったのだ。そう簡単にこの誓いを崩せるわけがない。
「ノア!今助けますわ!!待っていてくださいませ」
私は前世の知識…で侍が使う剣術を真似て狼を斬った。中にはアニメーションと言う知識も入っていたが気にしない。ノアを助けられるのならどんな知識でもほしかった。
私はこの時思った。この人を愛したのだと。よく懲りずに私は好きになったなとは思った。だが恋とはいつの間にか好きになっているもの、と前世の記憶から出てきた。
まさにそうだった。恋は一生するまいと思っていた。だがノアの事を好きになってしまった。愛してしまった。自分でも馬鹿だと思う。
そう心に秘めながら私は狼と戦って勝利してノアを助けた。その時の私は傷だらけで血も沢山出ていた。
大きい狼は血を吐き出して倒れていた。表面には私が切り込んだ傷が沢山あった。
「ノア、怪我はありませんか」
私は今出来る最大の笑顔でノアに尋ねた。笑顔が作れたのは一瞬。血が足りず貧血を起こし倒れた。貧血を起こしたのはノアに初めてお菓子を作った時以来だ。
今思えば懐かしい記憶でもある。たった一週間前の記憶な筈なのに。
「お前は馬鹿か…。なぜそこまでして俺を助けた」
「はは…貧血で倒れている人に質問するなんてノアはSですね。そんなの決まっていますよ。私はノアの事が愛しているからです」
「あ、愛し…!?」
ノアは顔を赤くして手で隠した。初めて見る顔だ。それを見れただけでも嬉しい。
「お前はよく懲りずに好きになれるな…」
「私もそう思いましたよ。ですが恋とはいつの間にか好きになってしまったものですわ。回避するなんて無理な話ですわよ」
「それだけで助けるなんて…お前はやはり馬鹿だ。大馬鹿だ。…心配したんだぞ!」
今回は怒るのか。だけど全然嫌ではない。逆に嬉しくてしょうがない。私のために怒ってくれているのだと思うと、とても嬉しい。
「馬鹿でもいいですよ。ノアを守れたのですから。」
「お前みたいな奴…本当に初めて見た。どんなお人好しでも命をかけて人を守らないぞ」
「そうですかね。私は咄嗟にノアを助けてしまって…よく覚えてないのですよね。無我夢中で狼と戦っていて……」
実際、私は狼と戦った記憶は曖昧でどう倒したのか覚えていない。だがノアを助けられると思ったら、そんなことはどうでも良かった。
「俺はもしかしたらーー」
「何ですか?」
「アメリア、俺はお前の事を愛してしまったのかもしれないな」
「………えっ!?」
「何だ、もう一度言わせる気か?」
何と言った…。ノアは私を…?聞き間違いなのかもしれない。
「ノア、私は愛していると聞こえたのだけれど…聞き間違い……?」
「聞き間違いではない。」
そう言うとノアはアメリアの額に口付けをした。
アメリアには顔の体温が上がって顔が赤くなってしまっている自覚が少しあった。だから咄嗟に顔を隠してしまった。
「アメリア…やっぱり君はいじりがいがあるな。顔を見せてくれ」
「い、嫌です!」
「見せてくれ」
耳元で甘い声でそんな事を囁かれたら、つい顔が緩んでしまう。だからより一層顔を隠した。だがノアは困っているアメリアを楽しむように耳元で甘い言葉を言い出した。
「アメリア、愛している」
そんな事を言われたらまた顔が緩んでしまう。好きな人と両想いになるのはこんなに嬉しいことなのか。
今なら分かる気がする。レオナルドが私を国外追放させてまでエレナと一緒にいたくなる気持ちを。
吸血鬼は白銀の狼が苦手のようで天敵でもあるみたいらしいです。白銀の狼は吸血鬼を狩る…と言う説もあり何か凄いですね(笑)
吸血鬼はルーマニアから伝わったと友達から聞いて吸血鬼は聖なる物が嫌いなので白銀の狼が苦手らしいです。(実際はどうか知りませんが)




