第十二話 コウモリ
私はノアにまたしても会いに行った。だが前にいた場所にはいなかった。さて…どうやって会おうかしら。屋敷に行ったけど魔法で見えなくてどうしようもなかったし…。
ガサガサ…
あれは…コウモリ?なぜこんな所にいるのだろうか。コウモリって洞窟とか暗い場所にいると聞いたけど違うのかな。いや…コウモリが日中の森に出るなんて普通ではない。ならあれはーー
「ノア?」
吸血鬼は動物や霧に変身出来ると聞いたことがある。ならあれは変身したノアではないかと思った。それにコウモリがこっちをじっと見て動揺しているように見えた。これは図星なのかな。
「早く屋敷に入れて下さい。足が疲れましたわ」
私がそう言うとコウモリは何処かに行こうとしていた。咄嗟に私は持ってきたロープを投げた。だが当たらなかった。流石にロープで動物を捕まえる技術は持っていない。なら捕まえるのではなく…追い詰めることにした。確か、あっちは行き止まりだったはず。あっちに追い込むようにロープを投げることにした。
何度かロープを投げて私はコウモリを追い詰めた。コウモリは羽をバタバタとして焦っているように見えた。
「ノア…早く変身を解いてください。話せないのは辛いですわ」
コウモリは諦めたようにして地面に着地した。すると周りから光みたいなのが見えてコウモリを包んでいった。
そして目の前にノアが現れた。
「お前はなぜ俺だってことが分かった?」
「なぜでしょうね」
「はぐらかすか。お前は最初から胡散臭いことが多いい。せめてここで何か吐いたらどうだ」
確かに私は色々とノアからしたら妙なことを沢山言っているかもしれない。ならここで少しぐらい話して信頼性を高めるのが一番だと思った。
だからと言って前世の記憶が蘇って吸血鬼のことが詳しい、なんてことは言えない。余計に怪しまれて信頼性なんて出来ない気がした。なら他のことを言おう。嘘でもなく本当のことでも無いことを。
「資料を読んだことがありますのよ。吸血鬼は動物や霧に変身出来ると書かれている資料を。だから私はノアがコウモリだと分かっただけですわ」
私は前世で吸血鬼のことを本やインターネットで調べて知識をつけていた。ならこの事は本当だ。〝前世で〟という事を除いたらだ。これなら本当であり嘘でもある。
ノアは私が言ったことに納得したのかそれ以上詮索はしなくなった。