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白夜物語  作者: 神津 有栖
第一章;出逢い
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第三節;一輪


 和宮と華宮が、お茶をしながら話していれば、涼しい風が吹き始める。

華宮が、丹精して育てた花たちはその流れに身を任せ揺れ動く。



「お姉様…また、美しく咲きましたね…」



和宮は、嬉しそうに。

だが、微かに悲しげに華宮に話しかける。

華宮は年々儚げに…また美しくなっていく。

まるで綺麗に咲き、枯れていってしまう花のように。


―お姉様は、離れていきませんよね…?


そっと、華宮の顔色を窺いながらそよそよと吹く風を肌に感じる。



「今はこの花が咲くのを待っているの…」


「っ!?」



微笑む華宮は、いつも以上に儚く

…手を伸ばしても、手が届かないような気がした。


華宮の好きな花が咲くと言っているのも理解しているつもりだ。でも、


―花は咲いたあと枯れてしまうもの…ですよね…

お姉様…



枯れた花を静かに摘み取る華宮を和宮は見たことがあった。

そして、それを華宮が自分自身に重ねているような気がしたのだ。


見なければよかった。

そう思ってしまった。姉は、自身のことをどう思っているのか。

それを考えさせられてしまったからだ。



「後、何年この花を見ていけるのかしら…」


そっと、華宮の口から紡がれた言葉。



「…何年でも、何年でも見ていけますよ…

例え、お姉様が居なくなってしまわれても…

私が、和宮がお姉様の変わりにっ!!」


自分で言っておきながら和宮は、涙が出そうになった。

なぜ、私は姉がいなくなることを恐れているのに、

姉がいなくなると。

いつか消えてしまうのだと、思っているのだろう。

考えたくない、でも考えなくちゃいけない。

それは、とても嫌な未来しか生まないというのに…


自分の考えに嫌になり俯くと、

華宮は和宮の頭を優しく撫でてくれる。



「ありがとう…」



優しげに微笑む華宮。

その笑みが、なぜかとても和宮には重く、

心を貫く槍のようだった。




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