第三節;一輪
和宮と華宮が、お茶をしながら話していれば、涼しい風が吹き始める。
華宮が、丹精して育てた花たちはその流れに身を任せ揺れ動く。
「お姉様…また、美しく咲きましたね…」
和宮は、嬉しそうに。
だが、微かに悲しげに華宮に話しかける。
華宮は年々儚げに…また美しくなっていく。
まるで綺麗に咲き、枯れていってしまう花のように。
―お姉様は、離れていきませんよね…?
そっと、華宮の顔色を窺いながらそよそよと吹く風を肌に感じる。
「今はこの花が咲くのを待っているの…」
「っ!?」
微笑む華宮は、いつも以上に儚く
…手を伸ばしても、手が届かないような気がした。
華宮の好きな花が咲くと言っているのも理解しているつもりだ。でも、
―花は咲いたあと枯れてしまうもの…ですよね…
お姉様…
枯れた花を静かに摘み取る華宮を和宮は見たことがあった。
そして、それを華宮が自分自身に重ねているような気がしたのだ。
見なければよかった。
そう思ってしまった。姉は、自身のことをどう思っているのか。
それを考えさせられてしまったからだ。
「後、何年この花を見ていけるのかしら…」
そっと、華宮の口から紡がれた言葉。
「…何年でも、何年でも見ていけますよ…
例え、お姉様が居なくなってしまわれても…
私が、和宮がお姉様の変わりにっ!!」
自分で言っておきながら和宮は、涙が出そうになった。
なぜ、私は姉がいなくなることを恐れているのに、
姉がいなくなると。
いつか消えてしまうのだと、思っているのだろう。
考えたくない、でも考えなくちゃいけない。
それは、とても嫌な未来しか生まないというのに…
自分の考えに嫌になり俯くと、
華宮は和宮の頭を優しく撫でてくれる。
「ありがとう…」
優しげに微笑む華宮。
その笑みが、なぜかとても和宮には重く、
心を貫く槍のようだった。