第11話 グリードシティの戦い
激戦の続く首都グリードシティ最下層エリア。私がエデンを倒してからクリスター政府軍は勢いを取り戻し、次第に連合軍を圧倒するようになっていた。
「それっ!」
ルビーが槍でコマンダー・モルの脇腹を貫く。クローン再生した連合政府少将の1人が、血を噴きながら倒れる。
「これで終わりだっ!」
ヒスイが両手に持ったハンドガンを使い、連続して発砲された銃弾でコマンダー・レイの身体を撃ち抜く。彼女もまたコマンダー・モルと同じように倒れる。
「やった! ルビー准将とヒスイ准将が連合軍少将2人を倒した!」
「一気に連合軍を打ち破ろう!」
「みんなで攻め込め!」
ますます勢いづくクリスター政府軍。グリードシティの暗雲を生み出す装置まであと少しだ。装置を破壊すれば、クェリアの目論みは崩れ去る。
「喰らえっ!」
強力な斬撃を飛ばし、苦戦を強いられていたサファイアは、コマンダー・クナの足元に転がり込むと、至近距離から3本のアローを一斉に放ち、その身体を打ち抜く。コマンダー・クナも倒れる。
「さすがだな、サファイア」
コハクはマシンガンでバトル=メシェディを撃ち倒しながら、コマンダー・クナを倒したサファイアに声をかける。その足元にはコマンダー・フィルストが倒れていた。
これで連合軍幹部は残り3人と1体だ。いや、――
「ヘキギョク准将がコマンダー・ウォールを倒した!」
「さすがです!」
「これで連合軍少将は全滅だ!」
残りは2人と1体――キャプテン・アレイシアとコマンダー・ライカ、バトル=オーディンね。この3人はいずれも連合軍将軍だ。
「バトル=オーディンだ!」
「…………!」
クローン兵たちの声が上がった方に視線を向けると、そこには6本の腕で6本の剣を自由自在に操るバトル=オーディンがいた。数十人のクローン兵と戦っている。
その内、1人のクローン兵が飛びかかり、その大きな機械の身体を押し倒す。彼女はすぐに斬り殺され、大型軍用兵器は再び立ち上がろうとする。
だが、それと同時に大きなナイフを持ったクローン軍人――タンザナイトが飛びかかる。彼女は巨大なナイフですれ違い様にバトル=オーディンの首をハネる。頭部を失った機械の親玉は、フラフラと動きながら地面に倒れる。
「ソフィア将軍、残りはキャプテン・アレイシアとコマンダー・ライカだけです!」
側にいたカルセドニーが私に報告する。その表情はエデンが現れていたときとは打って変わって、明るいものだった。
「ええ、そうね。でも、最後まで油断しないように」
「イエッサー!」
「ソフィア将軍、キャプテン・アレイシアがこっちに!」
「…………!」
ギョクズイが叫ぶ。私は剣で、斬りかかってきたアレイシアを受け流す。アレイシアはすぐに起き上がると、再び剣を構える。
「久しぶりだわね、アレイシア。いえ、アレイシアの偽物さん」
「…………」
「あなたたち連合軍を操るのは――」
私の言葉を遮るようにして、アレイシアは一言も発さずに私に斬りかかってくる。そこには何の表情もなかった。まるで私の声など聞こえていないかのようだった。
アレイシアは激しく何度も私に斬りかかる。カルセドニーとギョクズイもの2人も剣を抜き取り、戦いに参戦する。私も、2人も指揮官だけど、戦闘の訓練は受けている。ある程度は戦える。
3対1の戦い。すぐに決着は付いた。カルセドニーがアレイシアの左腕を斬り飛ばす。それに続いてギョクズイが右腕を斬り落とす。そして、私がアレイシアを斜めに深く斬り付け、彼女は倒れる。
「このアレイシアも偽物……」
「まるで感情がなかったですね。何も言いませんでしたし……」
カルセドニーとギョクズイは血を振り払って剣を戻す。少し変だ。キャプテン・エデンやコマンダー・モル、コマンダー・クナもそうだったけど、彼女たちは何も言わない。もっと言えば、感情さえもないようだった。――まるでロボットのようだった。
そのとき、遠くの方でより大きな爆音が鳴り響き、強い光が発せられ、爆炎が巻き起こる。それも一度だけじゃない。二度、三度と連続して起こる。
「な、なんだ!?」
「大型のクローン兵がっ!」
「う、うわっ!」
爆発で起きた煙の中から、身長が3メートル前後ある長身のクローン兵が現れる。いや、長身というより、身体そのものが全体的に大きい。だが、姿は私たちとよく似ている。フィルド・クローンであることに間違いはなさそうだけど……
大型クローンは手のひらを混乱しているクリスター政府クローン兵に向ける。手のひらには小さな穴が開いていた。そこが黄色く光り、次の瞬間には向けられていた方向で爆発が起きていた。――起爆レーザーだ。
「…………! そういうことね……!」
その大型クローンの登場で、私はやっと理解できた。――連合政府はあの大型クローンを所有していない。この軍勢は連合軍じゃない。
「ひ、ひぃっ!」
「う、後ろからも……!」
最初に現れた大型クローン兵――デストロイ・フィルド=トルーパーの後ろから更に別のデストロイ・フィルド=トルーパーが歩いてくる。
「…………!」
煙の向こうから、大きな足音を立てながら現れるデストロイ・フィルド=トルーパーたち。その数は5体にもなった。
「さ、さっきのレーザー光線を飛ばすクローンがあんなにも……!」
「連合軍の強大さは健在か……!」
カルセドニーとギョクズイからさっきの明るい表情が消えている。あのデストロイ・フィルド=トルーパーの強さは、コマンダー・ウォールやコマンダー・フィルストら少将レベルを超える。無理もない。
あの軍勢は連合軍じゃない。アレは……世界中の組織と取り引きする巨大軍事企業――“ビリオン=レナトゥス”だ!
<<科学と軍事>>
◆デストロイ・フィルド=トルーパー(XFT)
◇ハンターX型ともいう。
◇フィルド・クローンの遺伝子を高度に組み替え、その身体も高度に改造されたクローン兵。
◇「ビリオン=レナトゥス」と呼ばれる組織が製造・所有している。
<<社会と組織>>
◆ビリオン=レナトゥス
◇連合政府の一角を担っていた組織。連合政府崩壊後は、後継組織のネオ・連合政府に加わらず、分離・独立した。




