61話
前回のあらすじ
牢獄でアストがシルヴィアと逢う。
思い出した魔王と再開する魔王代理
それからどうなるの?(今ここ)
「嘘だと?」
外れてしまった腕の枷が転がり音を立てる。
久しぶりに動かせる腕を慣らしがてら足の枷をぶっ壊しシルヴィアと同じように石畳の地面にクレーターを作り上げる。
足の枷も取り外せた事で普通に立ち上がる事ができるようになった。
明らかに目の前の美女の方が背が高い。
俺の方は13歳という年齢だから仕方がないと言うのもあるのだろうが、微妙に苛立ちと敗北感を覚えた。
「チッ」
そしてでる舌打ち。
記憶の中では魔族だった事もあり遥かに高い位置から見下ろしてた相手が今や見上げる相手になっている。
しかも、それが・・・。いや、やめておこう。
昔の話で終わった事だろうしな。
「で、わざわざ何しに来た?陣中見舞いか?だったら余計なお世話だな。
魔族領があるのか知れねーが帰ってクソして寝てろ」
「む。わからんのか?」
まどろっこしいのは好きじゃないんだがな。
さっさと帰って欲しい所だ。
「わかるかよ」
言った瞬間に顔面に拳がめり込んでいく感覚がありそのまま牢の壁に打ち付けられる。
「がはぁ、ってめぇ、なんのつもりだゴラァ!!」
ペッと口に溜まった血を吐きだすが口の中を鉄の味が占めている。
瞬間的に身体強化を行ったためそこまでのダメージは無いが・・・。
「てめぇ、どういうつもりだ。今の俺に殴られる言われはねーんだがなぁ?」
「だまれ、キサマには無くともわれにはあるのじゃ!」
シルヴィアに引く気はなさそうだと言う事は伝わってくるが今更何がある。
「何か勘違いしてねーか?俺はティアストじゃねぇ。記憶はあるがそれだけだ」
だから、お前とは関係が全く無いんだよ。
だから、関わって欲しくはないんだよ。
だから、生きていてくれたそれだけでいいんだよ。
「だからよぉ。さっさと帰れや」
「聞けんなぁ、今更お主が誰であろうとも構わぬ。
その記憶を持つ者と言うだけでわれの関係者じゃ」
シルヴィアの瞳が怪しく光る。
魔力により身体強化を行ったと冷静に判断した。
チッ、マジでやる気かよ。
一瞬で間合いを詰められてからの右拳でのボディブローが飛んでくる。
素早く身体強化を行い左腕でのガードを行う。
が、そのまま力負けしてまたも壁に飛ばされる。
「くっそ!」
ダメージは無いが力負けする事実に愕然とする。
くるりと空中で回転して壁にぶつかる前に両足で壁に着地。
そのまま蹴りだしシルヴィアに向かって反撃を試みる。
「オラァァァ!!」
力で負けるのなら速度で補うしかない。
体重の置いても小柄な俺の一撃は軽く、速度で補うのにも限界がある。
身体強化のレベルを引き上げて限界のレベル2まで上げている。
それなのに、簡単に片手で突き出した拳が受け止められた。
「ふん、お主・・・こんなもんじゃったか?」
っざけんな!と叫びたいが・・・今の人の身体ではこれが限界だ。
これ以上となると下手をすると計画が達成できない。
が、女に膝を折るなんて俺が我慢ならねぇんだよ。
「ウラァァ!! レベル3だぁぁ!」
受け止められ握りこまれた拳を強化した身体を酷使してさらに押し込むように振り切る。
数歩下がりそれを簡単に受け流しやがるシルヴィアに内心焦りを覚える。
まともにダメージを与えられる未来が見えないのだ。
「レベル3か、やはり使えるか」
「軽く受け流してくれやがって、よく言うぜ!」
相手も肉弾戦を求めていると思っていいだろう。
こんな所で魔法をぶっ放すわけにもいかない。
そんな事をすれば大騒ぎだろう。
「で、ここにとどまり何をする?」
顔面向けて拳を平気で打ってくるシルヴィア。
その右フックを左腕受ける。
今度は踏ん張りが効いた。さすがに魔力を纏い限界上を発揮すれば耐える事はできた。
「関係ねぇだろうが!」
受けた拳の力を利用してくるりとコマのが回るように回転し回し蹴りを叩きこむ。
限界以上の力を振るう制限時間はあまりない。
身体と魔力が持たないのが一番の原因であり、毎日殴られほとんど回復していないのだから。
「はっ、どうで自爆覚悟の玉砕じゃろう?」
その蹴りだした右足の脛に正確に拳を当てて弾いてきた。
「ぐっ、だまれ!」
骨でも折れてるんじゃないかと思うような衝撃がくる。
思わずうめいてしまった。
「そして結局目的を達成する事もなく果てるのじゃろう!」
足に叩き込まれたはずの拳が今度は腹に向かってくる。
なんて速さだ。
「お主が国王を殺そうとも貴族を殺そうとも喜ぶ奴らがおるのじゃからな!」
身長の差があるため打ち下ろすように繰り出された拳が腹にめり込みズドンと衝撃がくる。
「だから、なんだっていうんだ!」
その衝撃に耐えながら撃ち込まれた腕を掴む。
身長の差をリーチの差を埋めるには近接するしかないのだ。
身体を犠牲にして腕を掴んだまま、ねじりあがる様に回転しシルヴィアのこめかみめがけてけりを入れる。
「短絡思考のバカ野郎じゃというておるのじゃ!!」
それも、もう一つの腕にガードされた。
馬鹿で悪かったな。
「言わせておけば、言いたい放題だな!」
本当にムカつく奴だ。
まともにあてらんねーじゃねーか。
あの時からお前を黙らせるのが容易じゃない事は分かっていたが。
「言う権利はあると思うておるさ。お主を500年待ったわれにはな!」
「もう、終わった事だろうが!!」
当たらないのであれば最初から狙いわず拳を地面に叩きつけて衝撃波で距離を取る。
この頑丈に作られた牢獄でさえ吹き飛ばすつもりで魔法を放ってやる!
「いい加減消えろ!『爆裂魔法』!」
今使える最大級の魔法だ。
問題は魔力が枯渇しかけていてこれの威力があまり出ない事か。
だが、うるさいこいつを黙らせる事くらいはできるだろうし、
駆けつける衛兵やらに俺はまたしょっ引かれるだろうがな。
この日の深夜轟音と共に衛兵詰め所とそこに隣接された牢獄は全壊した。
そこにいた衛兵と罪人の生き残りはおらず、全員死亡扱いとなった。
それから1か月後。
ゼネデイロ聖王国は第4王女アクシア・ゼネデイロの死亡の連絡を受け、
オラフティア王国への再三の聖女の亡骸、罪人の身柄を要するが受けてもらえずに開戦へ向けて動き出していた。
この大陸にあるもう一つの大国ワークリア帝国はこれに静観を決め込み一切関与してこないのだった。
その他いくつかの小国もそれに倣い静観をしている。
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