57話
前回までのあらすじ。
聖女に憑依して眷属化を最大の力でする。
聖女事件の後始末を行うため、護衛の遺体を共同墓地へ運んだ。(いまここ)
〇シスディナ視点
眼が覚めたが横たわったまま思うように体が動かせない。
ただ、布に包まれ体が動かせないというわけではない。
ぼろきれのような布なのですぐに引きちぎる事ができそうだった。
私は・・・死んだはずだった。
だが、今目を開ける事が出来ている。
つまりはあれは現実で「悪魔」が実在していたという事に他ならない。
しばらくすると体が辛うじて動くようになった。
布の中で左腕をゆっくりと動かして胸の上に手を置いてみる。
今まであった鼓動が無くなっていた。その事で初めて死を実感した。
この「蒼穹の翼」を立ち上げてリーダーとして頑張ってきた。
たった数年でのし上がり今やAランクのパーティだった。
しかし、今やそれらはすべて失ってしまった。
何か間違った事をしただろうか・・・
思わず涙が零れてきた。
横たわったままのその瞳からしずくが流れ出る。
私だけじゃなくパーティメンバー全員死んでいるのだ。
悔しくて、悔しくて仕方がない。
ひとしきり涙を流すと現実へと戻る事になる。
これからあの「悪魔」の眷属として生きていくのだ。
もう復讐と言う名の希望しか今はすがる物が無くなっていた。
このまま冒険者に戻れるはずもない。
死んだ事は誤魔化せても地位や名誉等、聖女を守れ無かった事ですべてなくなっている。
あの「悪魔」がもし王女を眷属にしたとしても同じ事だろう。
大分動くようになった身体を使い目の前の目の前のボロ布を引きちぎる。
周りには同じような遺体を包んだボロ布が雑に並べられていた。
深夜なのだろう月明りだけだがなんとか周りを見回す事が出来た。
共同墓地横に野ざらしの遺体が転がっていた。
身元がはっきりしているものは数日はこのまま置かれ家族で葬儀が行われるのが一般的だ。
ただ、身元不明の場合は墓地の奧にある穴にゴミでも捨てるように埋められる。
そういう意味ではAランクパーティの身元が確かでよかったのだろう。
布を排除しながら起き上がると声が聞こえた。
「起きたのね?」
魔法使いのフォスティがそこに居た。
それだけでこみ上げてくるものがあったが、同じ眷属としてここに居るのだろう。
だから最初に言うべき言葉は一つだった。
「すまない」
謝罪の言葉である。
「その謝罪はリーダーが寝坊した事に、かしら?」
笑いながらそんな事を言うフォスティ。
「他の2人はどうした?」
「まだ、寝てるみたいね。私が一番乗りみたいよ」
すると、私が2番手ということか。
少し確認するとまだ目を覚まさないメンバーを二人で待つことにした。
そして二人で考えてみる眷属化とは一体何なのか?
「私も聞いた事は無いわね」
それにしても真夜中で月明りしかないと言うのに明らかに視界が良好だ。
身体強化でもされているかのようだった。
「それに関してはちょっとわかるの」
フォスティが言うには動かなくなった心臓の代わりに魔石が生まれたのではないか?という推察だった。
それは同じ魔石を核とする魔物と同等の扱いになり下がったということだろう。
フォスティに言われるまま魔力を集中するとどうも心臓辺りに力を感じそれが体中のすべてに作用するように感じた。
恐らく魔力操作によって今までと同じように身体が動かせるようになっているのだろう。
そういう意味では魔力の扱いに長けたフォスティが最初に動けた事に納得してしまった。
「次の子がお目覚めみたい」
フォスティが言うと、ボロ布の一つが動き出した。
死体が動き出すと思うと何やら奇妙な気分になる。
「うーーん!なんか取れない!」
どうも布と格闘しているらしい。
ただ、目覚めたばかりでうまく身体が動かせていないのかもしれない。
「よし、手伝ってやろう」
声で誰かはわかっている。
少し間の抜けたそれでいて明るい声だ。
ボロ布を剥がすように取り去ると顔をだした人物に私は声をかける。
「おはようだ。パミラ」
「あれ?ディーナ?それにティちゃん?あれ?」
目覚めたパミラを引っ張り起こして立たせてやるときょとんとした顔で聞いていたので再度答えてやる。
「そうだ。新生・蒼穹の翼へようこそ」
「あー、ただいま。えへへ」
可愛く笑うハーフエルフのパミラにこれまでの経緯を聞く。
同じく「悪魔」の誘惑に乗ったと言う。
やはり眷属化しているらしく心臓ではなく魔石らしきものを感じられると言っている。
魔力量と魔力操作に長けているかどうかでこの眷属化の時間が変わるとみて間違いないだろう。
「そうなってくると・・・この筋肉バカの目覚めはいつになるのかしらね?」
「あーガルちゃん零一だからね~」
全力か無しかの二択のガルーラ。
全力で大剣を振るうその様は頼もしいのだけれどいささか加減ができない。
だが、そんな事も杞憂におわる。
「うぉぉぉおりゃぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
勇ましい叫び声と共に辺りにボロ布が飛び散る。
確かにゼロイチだなと思える動きで起き上がってきたのは言うまでもなくガルーラだ。
「遅いお目覚めだな?ガルーラ」
「つかよう。お前らがはやすぎんじゃねーの?」
文句を言いながらも笑っている。
恐らく今回の一番の立役者だ。
「悪魔」との契約がこのガルーラの一言から始まった。
皆が説得された理由がガルーラの一言だ。
「うんじゃ、またパーティ組もうぜ?リーダー」
ああ。
それだけで救われた気持ちになった。
生まれ変わってしまった私達をなんと呼ぶかそんなの決まってる
リベンジャーだろうさ。
評価、ブックマークありがとうございます。
ほぼ増えないけど・・・減らないだけありがたいかな えw




