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12話

手っ取り早くお金を稼ぐのが目的である僕は冒険者登録をすることにした。

冒険者とは冒険者ギルドに登録して依頼をこなして報酬をもらうもの達だ。

簡潔に言えば日雇い何でも屋だと思う。

簡単な材料資源の採取から危険なモンスターの盗伐まである。

当然だが兵士の次くらいに命を落とす確率が高い職業である。

だからそんな冒険者稼業を甘やかし気味の両親が許すはずがない。


なので、アストではなく偽名のアルトでこっそりと登録した。

登録は10歳からできるが15歳未満である場合は家族の了承が必要となるが、

短く揃えられた黒髪を赤く変えて印象操作を行いアードラの弟として登録したのだ。

兄弟でのパーティを組んでの登録は珍しくはないらしい。


最初の数か月は地元のギルドでの採取活動を地道に行い。

小銭を稼ぎつつ簡単な討伐依頼をする事でランクを上げた。

その後は各地へと遠征した。

数日あけることも多々あり、両親をごまかすのに苦労した。

「友達の所に泊まりに行った」や、「出かけて遅くなったので泊ってきた」

等のごまかしをするのにかなり苦労したものである。


そうやってだましつつ、冒険者稼業を続けて2年が経つ。


「姐さん、まずは僕が行く」


片手剣を素早く鞘から引き抜き目の前の敵に向かって駆け出す。

相手は災害指定の巨獣であるレッドドラゴンである。

はぐれドラゴンらしく、討伐依頼が出ていたので受けた相手だ。


近隣の森に住みつたドラゴンは近くを荒らして回っていたため

討伐の依頼が領主から出されていた。

当然だかSランクの依頼である。

竜種の討伐は高ランクとなり最低でもワイバーンクラスの

Bランク討伐依頼となる。

竜種によって変わるが今回のレッドドラゴンはSランクである。

僕らが受ける前にすでに2回の討伐が行われて失敗している。

それはつまり人間の味を覚えたドラゴンだ。


周りの木を超え10メートルは在りそうなレッドドラゴンが

鼻をひくつかせながら視界に入った僕にその鋭い爪で攻撃を仕掛けてくる。


さすが竜種だ。攻撃のスピードが速い。

僕は真っ正直に正面からではなく横から向かったはずだが

すでに正面にとらえられていた。そういう意味でも感覚が鋭すぎる。

一瞬のサイドステップを入れて爪の一撃を躱す。

爪はすぐ横の地面にグチャっと音を立てて突き刺さった。

その腕に魔力を通した片手剣を凪ぐように払い切るとそのまま

レッドドラゴンの後ろへと回り込むように走る。


「グァァァァァァァァ!」


普通に痛かったのだろう。叫び声を上げるレッドドラゴン。

その後上に向かって息を吸い込むような動作をした。


ドラゴン特有のブレス攻撃だ。

ドラゴンは強大な魔力を体内に有しており、ブレスはその魔力の放出である。

このレッドドラゴンの場合は主に炎のブレスになる。


首を振る勢いに合わせて炎のブレスが辺りに吹き荒れる。


僕は身体強化レベル1をすぐに発動させてブレスの範囲からすぐに離脱。

辺りが一瞬の高熱で焼かれ蒸し返すような温度になる。


「アイスジャベリン!」


魔法の発動と同時にレッドドラゴン周囲に槍状の氷が数十飛来する。

アードラが後方からの魔法を放ち気温を中和すると同時に

レッドドラゴンに攻撃したのだ。

足元に突き刺さった氷を見るレッドドラゴンは何事があったのか

理解できていないようで戸惑いを見せている。


この隙に大剣などで首でも切れれば討伐できるが、子供である僕にそんな力はない。

なので、魔法を発動する。


「アイスフィールド」


これは水属性の派生である氷属性魔法になる。

アードラの作った氷槍を利用してドラゴンの足を凍り付かせていく。

苦し紛れに僕を殴りつけようともがくレッドドラゴンだが、

固定されていてこちらまではその攻撃が届かない。


「とどめだ!」


既に走り出していたアードラは10メートル程の上空へ飛んでいた。

レッドドラゴン頭に上空から大剣を突き刺し、

地面までの10メートルの距離を貫いていく。

見事としか言いようがない一撃だった。


「さっすがねぇさん」


「まぁ、アルトと連携がツーカーだからなぁ、これくらいはね」


「かなりの修羅場くぐってきましたもんね?」


「だなぁ、私までさらに強くなれるとは思ってなかったくらいだ」


出国申請でかなり鍛えられたんだけどなぁとしみじみとしているアードラ。

そのアードラを姉として2年間の長いようで短かった修行の時間が終わった。

今回の依頼を最後にパーティは解散する事になっている。


ドラゴンの死骸をアイテムボックスへと収納する。

白い四角い箱に魔法陣がいくつも書かれておりその一面に

収納可能な大きさなどの記載がある。


収納にはそのアイテムボックスを手にし対象物に触れながら

魔力を流して魔法を発動させる必要がある。

取り出し方法は中に入っている場合に限り全部出てくるのだ。


冒険者にとっては必需品に近い。

あまり容量に拘らなければ安価で買える物も多い。


そのままボックスへ収納したのを確認し身支度を済ませて帰る事にする。





「依頼達成ありがとうございました!」


街のギルドへ帰り報告と証拠の提出を行うと若手受付の男の人に言われる。


「あー、今回でパーティを解散する事になっているんだけど・・・」


「はい、伺っています。『赤の双牙』のお二人が辞めると・・・」


すごく惜しまれます。とかなんとか言っている。

ちなみに『赤の双牙』というパーティ名は勝手に付けられた物である。

Sランクともなるとそういうパーティ名を付けるらしい。

無い場合は勝手に付けられる。なんというかちょっと恥ずかしいのである。


「あー、うんそうね」と曖昧に受け答えをするアードラ姉。


なんだかんだと若い男性受付に言われながらも手続きはしてくれたようで

パーティの解散と登録している冒険者カードの一時停止を行った。

これで冒険者としての僕の活動は一旦終わることになる。

アードラとの契約もこれで終了だ。

この後どうするのかを聞いた所、実家に帰るそうだ。


その後、僕はアードラの宿に戻り変装していた魔術を解くと言う事があった。

アードラにこれまでの師事に感謝を込めて、


「先生、今までありがとうございました!」


深々と頭を下げる。


あと、最後に魔族だった時に名乗っていた前世の名前を教えておいた。


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