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「おおい! お前たち、ご苦労さん!」
太い大きな声に、武尊たちは振り返った。
「最上のオッサン!」
最上は二人の側まで駆け寄る。強面ではあるが、人の良さそうな男は、苦笑いを浮かべる。
「オッサンじゃねーよ。『最上さん』って呼べって、言ってるだろう」
最上は、武尊の頭をぐしゃぐしゃとなでる。
「おっ、また、デカくなったんじゃないのか?」
「育ち盛りなんでねー。もうすぐ、オッサンも抜かすぜ」
「そりゃ楽しみだなー。ところで彼が新しい相棒か?」
「紹介するぜ。井久見恭介」
「井久見? 君、どこかで……」
最上は見定めるように、恭介を見た。その視線に、恭介は居心地が悪そうにうつむいた。
「……いや、失礼した。俺は警察庁対怪魔局特別対策課の最上慎一郎。武尊たちには、捜査協力で世話になっている」
「オッサンはな、こんなにでかい体だけど、弱っちいんだぜ」
「それは、怪魔に対してだっ! 対人間の場合は、それなりに役に立つ!」
「どうだかなー」
二人のやりとりに、強張っていた恭介も思わず笑みがこぼれる。
そしてもう一人、スラリと背の高い、スーツの男性が近寄って来た。女性なら誰もが振り向かずにはいられないその人は、にこやかな笑みを浮かべた。
「お疲れさまです、先輩」
「葵か。また、世話になったな」
「いえいえ。このくらいのこと」
その言葉に、武尊が思わず口を尖らせる。
「戦ってるの、俺たちなんだけど」
「大丈夫でしょう、武尊様なら」
武尊は、澄ました葵の顔をちらりと見た。
「まぁね。俺たちにかなうやつなんて、そうそういないからな」
恭介の肩を抱き寄せると、大人二人に向けてピースサインを見せた。
「武尊、調子に乗りすぎ」
そんな武尊を、恭介は呆れたようにたしなめる。
「先輩見てください。この『札』」
葵はポケットから紙を取り出す。何か複雑な図形と文字が書いてあるが、今は判読できないほど焦げていた。
「怪魔を呼び寄せた学生によると、この札は従姉妹からもらったそうです」
最上は葵から札を受け取ると、裏返しながら細かく観察する。
「コピー用紙に印刷されているな」
葵が頷く。
「従姉妹がどうやって手に入れたのかは、聞き出せたのか?」
「友だちからもらったそうです。というか、おまじないグッズとして、校内で流行っているらしいです」
「どこの学校だ?」
「京都の私立高校、白鳳学園だそうです」
最上の眉間のシワがますます深くなる。
「やばいところなのか」
「ああ、かなり厄介なところだ。京都、というか西日本最大の殺魔師の家が関わっている学校だ」
鋭い瞳で葵を見る。葵は静かに頷いた。
「また、お前たちの力を借りることになるかもしれないな」
いつになく、緊張した声色で最上が武尊と恭介を見る。
「俺と恭介に任せておけば、問題ねーよ。オッサンは大船に乗ったつもりで待っとけよ!」
その言葉に、最上は毒気を抜かれたように、うなだれる。
「お前んとこの当主様は、大丈夫か?」
「はい。物部家の当主の売りは、若さと勢いですから」
「ったく、武尊、いいか、もっと慎重に動け。じゃないと、いつか足元をすくわれるぞ」
「そんな心配ばっかしてるから、老けるんだぞ」
「武尊!!!!」
青空に、最上の怒鳴り声と武尊の笑い声が響く。
しかし、このときの最上の言葉が、武尊の未来を予言することになるとは、今は誰も気がつかなかった。
読んでいただいてありがとうございます。
舞台が変わって続きます。次回もよろしくお願いします。
2026年6月11日 一部書き直しました
本作品は個人創作です。
一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。
「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。
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