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13話 宿場町で

 盗賊らしき連中に襲われ(?)た俺達は、日が暮れてから目的の宿場町に到着した。


 町というよりは少し大きな村、といった感じだろうか。だが大きな街と街とを繋ぐ中継地点らしく、多くの旅人が宿場として使っているようだ。意外と賑やかそうである。


「止まれ! 身分証を確認する」

「へいへい、お疲れ様でございます」


 町へ入る門で、門番をする兵に止められた。

 おっさんはヘコヘコと挨拶をしながら身分証を提示し、俺とリディアもそれに倣った。

 昨日もこのようなことがあったのだろうが、俺は乗り物酔いでそれどころではなかったのであまり覚えていない。リディアが俺の身分証を勝手に見せていたような気がする。

 どうやら身分証が無ければ、町や村などに入るには結構な金額を要求されるらしい。未成年はそもそも一人で出入りができないようになっている。親や後見人の証明書などがあれば別らしいが、未成年は誰かが一緒に居なければ、出入りが厳しいようだ。

 特例として冒険者ギルドのカードがあれば別らしい。冒険者には10歳ぐらいからなれるようなので、冒険者の証である冒険者カードを持っていれば一人でも出入りできるそうだ。まあ、未成年が冒険者カードを発行してもらうにも親や後継人など、保証人を立てなければならないそうだから、身分証と同等ということだろう。


「ふむ、行商人か。積み荷はなんだ?」

「はい、カリパラの街に仕入れに行く途中でさぁ。積み荷はそんなたいしたもは積んでませ……あ、でもそこで盗賊に襲われたんで、そいつら積んでます」

「なに!?」


 おっさんがそう伝えると、門番は急いで荷台を確認しに横へ回り込んだ。


「な、なんだこれは‼」


 荷台に満載の10人もの盗賊を見た門番は、驚きを隠せない様子だ。


「こいつらをお前等が?」

「ええ、このお二人の優秀な護衛が退治してくれたんすよ」


 なんだ? おっさんよ、昨日までとは全然対応が違うじゃないか。

 まあ確かに、昨日はポンコツだったから心配だったのは分かるが、こうも煽てられたような言い方をされると寒気がするぞ。


「二人でこいつら全員をか?」

「ああ、そうだ。といっても俺は一人しか倒してないがな。残りは全部連れが倒した」


 俺がそう言うと、御者台でリディアは、えへへ、と照れ笑いをしている。


「なんだと? そのメイドの嬢ちゃんが? 冗談だろ……」

「いや、本当の事だ。雇い主も見ていたろ?」

「ええ、この嬢ちゃんは滅法強かったですよ。あっという間に9人伸しちまいましたぜ」

「……そ、そうか」


 門番は胡乱な表情でリディアを見ながら、納得できないような顔で了承した。

 きっと女にしか見えないリディアが、この賊達をほとんど一人で倒したとは、到底信じられないのだろう。残念だな、中身は男だぞ?


「ところで、こいつら引き取ってくれるのか?」

「お、ああ、門をくぐった所に兵士の詰め所がある、そこで引き渡してくれ」

「了解した、雇い主では行こうか」


 身分証明も済んでいるので、俺はそのまま門をくぐり馬車がその後ろから入ってくる。

 門を入ってすぐ脇には、少し大きめな建物があり、そこが兵士の詰め所ということだろう。


「ここでいいか?」


 詰所の入り口前で馬車を停め、扉前にいた兵士に説明をして賊達を荷台から引きずり下ろした。


「盗賊10人だ。全員生きている。後の処遇はそちらに一任する。よろしく頼む」

「あ、ああ、了解した」

「ちょっと待て兄ちゃん。こいつら賞金首かもしれねえぞ?」

「ん? 賞金首? なんだそれは」

「はぁ、それも知らねえのか? 知っているから運んできたとばかり思っていたんだが……」


 おっさんは呆れ顔でそう言った。

 だが知らないものは知らないのだ。俺はたんにこいつらの処遇を兵や父に任せるべきだと考えていただけなのだから。


 話に依ると、凶悪な盗賊集団などには、町又は領主から懸賞金が掛けられ、討伐した者たちに支払われるということらしい。国家的犯罪者には国から結構な額の懸賞金が掛けられることもあるということだ。

 その懸賞金をかけられた悪人や犯罪者どもは、盗賊に限らず賞金首と総称されているということだ。


「ふむそうなのか。で、衛士よ、こいつらはどうなんだ? そこの無傷の大男がリーダー格らしい奴だが」


 俺が倒した大男を差し兵士に訊いてみた。


「ん! こ、こいつは!」


 その男の顔を見た兵士は、険しい表情で男を見分しだした。思い当たる顔だったのだろう。


「こ、こいつ等は一級手配されている盗賊団だ。間違いない……」


 どうやら賞金首にも色々とランクがあるようで、五級から特級までの6ランクの格付けがあるらしい。犯罪の度合いに依ってランクが変わるということだ。

 この盗賊団は、近隣の他の領でも結構な盗賊行為を行っていたので一級手配にまでなっていたそうだ。最近このリーマン領に移動してきたらしく、神出鬼没の盗賊一味として手を焼いていたということらしい。


「よく捕まえられたな……」


 兵士は感心したように俺達を見た。


「ふむ、こいつらも油断したのだろう。おかま野郎とメイドが、まさか護衛だとは思わなかったのではないか?」


 おかま野郎がどういったものか分からないが、おそらくこいつ等は俺をそう見縊っていたのだろう。バカにされている感じだったからな。

 たぶん、先立って斥候を送り馬車の護衛の数や、護衛が自分達よりも格が上だと判断した場合は襲わなかったのだろう。

 俺達がたかが二人の護衛で、一人はメイド服を着た女と判断したから、楽勝と踏んで襲ってきた。そう考えた方が良さそうだ。バカな奴等だ。


「で、こいつらはその賞金首なのか?」

「ああ、そうだ。懸賞金は確か金貨200枚だったはずだ」

「そうか、そんなもんか」


 この盗賊団に賭けられた賞金、金貨200枚が多いのか少ないのか俺には判断はできないが、まあ妥当な金額なのだろう。


「おいおい兄ちゃん……そんなもんか、はねえだろう? 金貨200枚は大金だぜ?」


 おっさんが呆れたようにそう言った。


「そうなのか?」

「……兄ちゃん、本当にどこの御曹司だよ? 金の価値まで知らねえとは……良くそれで旅に出ようと思ったな?」


 まあ確かに金貨200枚は大金なのかもしれない。

 おっさんの護衛金額が宿代込みで銀貨80枚(ちなみに普通これくらいの護衛なら、最低でも金貨3枚は出さなければならないという話だった。相当ケチっている)ということだったし、リディアが15年間働いて貯めていた給金が、金貨50枚ぐらいだったことを鑑みれば、大金なのだろう。

 だが、籠の鳥のようにリーマン家から出られなかった俺には、お金などつい最近目にして、まだ数度しか使ったことが無い代物なのだ。価値観なんてまだ分からないのだよ。


「まあ旅に出てしまったのだからもうどうしようもない。これから覚えるさ。で、衛士よ、その賞金とやらは今貰えるのか?」

「いや、この町ではすぐには難しい。冒険者ギルドでも受け取れるが、この町のギルドは規模が小さいから無理かもしれん」

「カリパラの街なら大丈夫なのかね?」


 兵士がこの町では無理だと言うと、おっさんがカリパラという街なら大丈夫かどうか尋ねた。


「ああ、あの街ならこの町よりも大きいから大丈夫だ、冒険者ギルドも首都よりは小さいが、この町よりも規模が大きい。今捕縛証明書を出すから少し待っていてくれ」

「相分かった」


 盗賊一味は数名の兵士に身包み剥がされ身分証や貴重品を没収されていた。

 少し待っていると一枚の紙を持って兵士が現れた。


「これを冒険者ギルド、若しくは街の治安部に提出すると、賞金が貰える。それと、生け捕りにしていたからこいつらの隠れ家(アジト)も聞い出せるかもしれない。そこに隠している盗品や金品も、持ち主が現れなければ君達の物になるがどうする?」

「それも貰えるのか? だが持ち主が現れなかったらの話だろ?」

「いや、ほとんど現れない。持ち主だと確実に証明できるものが無ければ、いくら持ち主と言い張っても渡すことは出来ない決まりだからね」


 盗賊の隠れ家にある物は、盗賊を捕まえた者にその権利が移る仕組みらしい。

 お金とか商品などに、証明できるものは無いだろうから、ほとんど引き取りに来ないのが実情らしい。たまには貴族の紋章入りのなにかがあれば、その貴族の者が引き取りに来るらしいが、それは稀だという話だ。

 そもそも貴族が盗賊に襲われるほど無防備な旅はしないのだろうから。

 結局はおっさんが護衛をケチったおかげで、俺達はこいつらに襲われたのだろう。返り討ちにしたからいいが、本当なら死んでいた可能性が高いぞ? おっさんよ……。


「あー、俺達は明日にはこの町を出るからな……どうするかな?」


 行商人のおっさんに雇われている以上、おっさんの行程通りに旅を進める予定だ。


「シーベルト様、でしたらリーマン家へ届けていただくように手配してはどうですか? 旦那様でしたら、それを領地のために使われると思います」

「うむ、そうだな。父上なら有意義に使ってくれることだろう」

「えっ……リーマン家……旦那様……父、上……?」


 俺とリディアの話を傍で聞いていた兵士は、さーっと顔色を無くしていった。

 ここはまだリーマン領。話の内容から俺がリーマン家に所縁のある者だと知れてしまった。


「えええっ! も、もしかして君は、いえいえ、貴方様は辺境伯のご子息様であらせられますか?」

「はぁ? なんだと! に、兄ちゃん……聞いてねえよ……」


 おっさんも同様だった。


「ハハハ、元だ。元リーマン家の子だっただけだ。今はただのシーベルトという名のしがない旅人だ。そう畏まるな」


 俺は笑って流そうとしたが、兵士達は一様に緊張した面持ちで整列し始めた。

 失礼いたしました! と揃って敬礼しだす始末。そして、


「おい貴様! リーマン家のご子息様を、こんなおんぼろの荷馬車の護衛に雇うとはどういった了見だ‼」


 雇い主のおっさんが、兵士に詰め寄られた。

 おんぼろ荷馬車というところは強く肯定したい。もう少し程度の良い馬車ならあんなに酔わなかったものを、とね。

 だがおっさんが糾弾されるいわれもないのも確かだが……。


「うぇーっ! し、知らねかったんだよーっ‼ 女みたいな兄ちゃんが、まさか領主様のご子息様だなんて、知らねかったんだよーっ‼」

「貴様! 女みたいなとはなんだ! ご子息様へ失礼にも程があるぞ‼」

「うぇーっ! す、すびばせーん‼」


 おっさんは兵士に平謝りだった。転がっている盗賊の横で土下座をしている。

 ともあれ、俺はリーマン家を出てきた身だ。もうリーマン家との関係は切れたも同然なのだ。おっさんは悪くはない。



 おっさんと兵士を取り成し、この場を丸く収めた俺だった。


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