彼女の陥落3h⑤
分割がうまく行かないので二話分にしての投稿。その1
艶鬼王ドウテツから転生した色王トキヤを相手とするボス戦、2回戦目。
なし崩し的なスタートではあるが、それなりの下準備もされてのものでもある。なので、各メンバーの概要を説明しながらの全体像を解説しよう。
先ずスタートの状況である。
舞台はドウテツを倒したピラミッド前の空き空間と同じだが、場所的な状況はやや変化している。
床を埋め尽くした結晶体は全て消え去り、石造りの地が表れている。表面が粗めの砂岩質なので、滑る事も無く走れる状態だろう。だがテンマルの爆裂攻撃の余波か、瓦礫や骨が垣根のように周囲へと吹き散らされており、まるで直径30メートルほどの円形闘技場のような舞台へと変化していた。
その舞台中心で、2人のトキヤがアドリブの殺陣で対峙している。
その流れが変わった時点が、戦闘再開のスタートとなる。
最初に基本的な壁役仕様の準備を整えたイワオが、恥ずかしい恰好で暴れるトキヤ(人間)の首根っこを掴んで背後に放り投げ、トキヤ(色王)へと対峙した形となる。
この時、トキヤ(色王)から『や、スマン助かった』的なジェスチャーがイワオへと成されたが、グダるので詳細は省略。
なお、“トキヤ”の名称で被る事により混乱するかもしれないので、『トキヤ(人間)→トキヤ』、『トキヤ(色王)→色王』と呼称を分ける。
テンマルは色王がイワオを攻撃する際の前方範囲攻撃を警戒して、イワオの左後方から遠隔攻撃の準備である。範囲爆裂攻撃は今は封印。トキヤと極似である以上、守護騎士の能力による反射攻撃を予想しての、様子見である。
カッツェは放られたトキヤを受け止め、精神状態を沈静化させるポーション『モグルホレ』で強制冷却中だ。本来はゲーム的な意味で精神的マイナス行動を取るのを解除する物なのだが、使用者曰わく『“賢者モード薬“効果アルヨ』との感想により、男性プレイヤーなら5本は常備する必須アイテムである。
頭からポーション塗れになったトキヤは一応正気に戻り、守護騎士としての基本装備を再装着していく。色王にはデータとしてコピーされただけであり、実際にアイテムを奪われる設定でなかったのは助かる状態である。
なら何故トキヤの装備が奪われたような演出を? となるが、それはコピーした時点でのアイテムファイルに一時的なリネーム処理が成されなかった事による。これは色王にはトキヤが持つ全ての装備可能アイテムがコピーされる仕様の問題だ。トキヤが所有するアイテムの中には、『ユニーク』対象となる基本複製不可能の物も含む可能性がある。それらのアイテムにはデータ上で複数化しないよう、複製不可能とするブロッキング機構が組み込まれている。その処理を有効のまま、コピーした物を全く同じ性能の別アイテムとして生成し直す間、オリジナルを干渉できない別サーバーへと退避させた事で、VR環境では消えたように処理されたのである。
なお、オリジナルの『鬼魂の鎧(色式)』は色王の核としてトキヤのストレージからは消滅。しかしクエストクリア後には同一デザインの別アイテムとして再生する予定である。
しかし現在は消滅扱いなので、トキヤは前に使っていた重装鎧を装備し直していた。
これで野郎組の説明は終了だ。
状況的に色王の相手はイワオとテンマルで対処している状態だが、トキヤへと戦闘の流れを説明する役目が、まだカッツェにはある。
加えてカッツェには、マヤヤとウスネの役割をサポートする重要な役回りもあった。
その少女組だが、実情、これから戦闘をする……という恰好では、決して無い。
先ず装備が、いまだに全損状態から回復していない。見た目だけ、辛うじて裸身は隠せておけるだけのマント一枚の姿である。
イワオから離れ、感性が何時もどおりに戻ったマヤヤは、単に肩がけ程度に羽織っているだけなので前の開けっぷりは説明自体がマズい状態であるし、逆にウスネはトキヤから弾きとばされた時点でマントが身体から離れて消失。ストレージ内に戻ったのを改めてアイテム表示し、ようやく前のみを隠せている状態。
正直絵面だけなら、何処かで拉致られ乱暴されてましたが、隙をついて何とか逃げて来た。という、犯罪臭プンプンの有り様である。
イワオに命じられて真面目に少女組のガードを担当しているカッツェには悪いが、そのカッツェを通して少女等のあられもない恰好を完全盗撮している“エロオヤジ”が大歓喜していたりする。
そんな世間様の目もあるのだから、もう少しマントの着付けをしっかりしなさい。と怒られそうな恰好のマヤヤがウスネの手を引き、カッツェの元に導いてトキヤと同様に戦闘の段取りを受けさせている。さらにストレージを開き、イワオから受け取ったとある“アイテム”をウスネと分け合い、反対にマヤヤはウスネからそのアイテムの使い方を簡単にレクチャーされている。
さすがに肉親なのか、渡されたアイテム構成からウスネはイワオの立てた計画を理解したようで、滋養治士の能力でより効果を上げる手段をマヤヤへと教え始めていた。
その内容にウスネ以外、マヤヤも含めて全員が何とも言えない微妙な表情を浮かべたのであるが、それを色王の中の人には作戦開始まで知られる事は、無かったのである。




