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ライバルは前世~生まれ変わりだから愛するのではなく今の私を貴方には愛して欲しいんです~  作者: リラックス夢土


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67 お芝居の観賞




 次の日、私は烈牙様と馬車で外出した。舞踏会用のドレスを買うためだ。

 馬車はしばらくすると一軒のお店の前で止まる。


 そこは私も知っている高位貴族御用達のお店でアリシアの時に何度も来たことがある。

 烈牙様が中に入ると支配人が出迎えてくれた。



「これは魔公爵様。いらっしゃいませ。奥へどうぞ」



 奥の部屋は特別なお客様を接待する場所になっているのだ。



「魔公爵様がいらしていただくなんて光栄に存じます」



 支配人は頭を下げる。



「この娘は真雪という。今度王城で開かれる舞踏会に着ていくドレスが欲しいのだ。三週間で作れるか?」


「魔公爵様のご注文でしたら必ず間に合わせましょう」



 え? ドレスを作るの?



 私はてっきり既製品のドレスを手直しして買うのだと思っていた。

 オーダーメイドとなるとかなりお金もかかる。



「あの、魔公爵様。私のためにわざわざドレスを作る必要はありませんわ。既製品で十分です」


「何を言うか。私の正式なパートナーとして出席するんだからこれは私のためだ」



 そういえばそうだったわ。

 今回の舞踏会は烈牙様の寵愛を受けている者としての最初のお披露目だ。

 ここは烈牙様に従った方がいいだろうと私は反論を控えた。



「ではドレスを作る布を決めましょうか」



 支配人の合図で店員が色とりどりの布を持って来る。

 私はどれが自分に合うかよく分からない。



「真雪。好きな物を選べ」


「あの魔公爵様。私にはどれが自分に合っているか分からないので魔公爵様が決めていただけますか?」


「ふむ。そうか」



 せっかく着るドレスだもの。

 烈牙様に選んでもらいたい。



 烈牙様は少し考えていたが青色の鮮やかな布地を手にした。

 ただの青い布ではなく布自体がキラキラと輝くようなものだ。



「やはり真雪は青いドレスが似合う。白銀の髪がよく映えるからな。これにしよう。真雪もこれでいいか?」



 烈牙様は私にもその布を見せてくれる。

 肌触りもよく私もとても気に入った。



「はい。これがいいです」



 布が決まると今度は支配人がいくつかの本を見せてくれる。



「次はデザインですがこれがデザインの見本です」



 ああでもないこうでもないといろいろ注文をつけてようやくドレス選びが終わった。

 そして再び馬車に戻る。



「装飾品は家にあるものでいいだろう。次は芝居を観に行くんだったな」


「はい」



 私はあまりお金をかけたくなかったので元から烈牙様がお持ちになっている装飾品で十分だった。

 馬車はお芝居が行われる劇場に着く。


 そして中に入るとなにやらロビーが騒がしい。

 何事かと思っていると烈牙様が「ちっ」と舌打ちなさった。


 その原因はすぐに分かることになる。

 なんと劇場に麗華王女が来ていたのだ。


 麗華王女は烈牙様に気付くと優雅に近づいてくる。



「魔公爵様。ごきげんよう。こんなところでお会いするとはやはり私たちは運命で結ばれているのでしょうか」



 麗華王女は私を完全に無視して烈牙様に声をかける。

 烈牙様は僅かに不愉快そうな表情になりながらも麗華王女に答えた。



「麗華王女殿。今日は私も個人的にここに来ております。私のことはかまいませんように。それに連れもいますし」



 そこで麗華王女は初めて私に気付いたような顔をする。



「あら、貴女、まだいたの? やはり育ちが悪いと自分の立場も分からないのかしら?」


「麗華王女殿。彼女を侮辱するのはやめてもらいたい。彼女は私が望んで傍に置いているのだから」



 烈牙様が私を庇ってくださるが麗華王女は私に蔑むような視線を向ける。



「魔公爵様もご冗談が上手いですわね。こんな女など傍に置かれても一文の得にもなりませんわよ」


「得かどうかは私が決めることだ」



 烈牙様はいつになく強く言葉を使った。

 麗華王女もその様子に少し怯んだようだ。


 周囲には他にも芝居を観に来た人がいてこちらの様子を伺っている者もいる。

 なにしろ魔公爵と王女が言い合いをしているのだ。関心を引いて当たり前だ。


 麗華王女もそのことに気付いたのか周囲に視線をやりながらこの場は退くことに決めたらしい。



「では魔公爵様。そろそろお芝居が始まるので失礼しますわ。まあ、貴女にはこの芝居の素晴らしさなんか分からないでしょうけど」



 後半は私に向けた言葉だ。

 そう言って麗華王女は行ってしまった。



「すまない。真雪。不愉快な思いをさせてしまって」


「いいえ。大丈夫です」


「それにしてもあの女と一緒になるとは思わなかったな」



 烈牙様は一人で呟いていたけれど私には分かった。

 麗華王女はどこからか烈牙様と私がお芝居を観に来る情報を掴んで再び私に釘を刺すために現れたに違いない。



 なかなか強敵ね。

 麗華王女の情報網もたいしたものだわ。



 芝居を観るための個室に入ると私は持参した刺繍されたハンカチを烈牙様に渡す。



「あの、烈牙様。今までいろいろお世話になったことのお礼とご心配をかけたことのお詫びの品です。受け取ってくれませんか?」



 烈牙様はハンカチを受け取り刺繍の柄を確かめる。



「見事な刺繍だな。真雪が作ったのか?」


「はい。あまりうまくはありませんが……」



 すると烈牙様は受け取ったハンカチに口づけをする。

 それを見た私の心臓の鼓動は跳ね上がった。

 まるで自分自身が烈牙様に口づけをされた気分になったのだ。



「ありがとう、真雪。大切にする」



 優しく微笑んだ烈牙様はそのハンカチを大切そうにポケットにしまった。



 喜んでもらえて良かったわ。

 でも私が烈牙様に告白して受け入れてもらえなかったらこのハンカチは捨てられてしまうかもしれないけど。



 そう思うと私も切ない気分になる。



 それでもいいわ。今までの感謝を伝えられただけでもよしとしましょう。





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