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ライバルは前世~生まれ変わりだから愛するのではなく今の私を貴方には愛して欲しいんです~  作者: リラックス夢土


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37/60

37 お守り




「ふわあ」



 私は大きな欠伸をする。

 起床の仕事はしなくてよいと言われていたので昨夜は遅くまで裁縫作業をしていた。



 おかげで目的の物は作れたけど眠いわね。



 私は自分の手の中にある昨夜作った物を見る。

 それは「お守り」だった。  


 首からかけられるタイプでお守りの袋の中には私の白銀の髪が入っている。

 前世の人間だった時に人間界で戦いに行く夫や想い人の男性に女性が渡していたのがこの「お守り」だ。


 自分の髪の毛をお守り袋に入れるとその人物の元に戦に行った夫や想い人の男性が必ず帰って来ると信じられていた。

 それを思い出し作ってみたのだ。



 これを烈牙様に渡してみよう。

 受け取ってくれるかは分からないけど。



 烈牙様は夜中に出て行ってまだ戻らないようだ。

 盗賊ごときに烈牙様が負けるとは思わないが烈牙様の安否を思って過ごす時間が前世のアリシアと重なる。


 アリシアも烈牙様が仕事で戦いに行く度に無事の帰りを祈って待ち続けていた。

 あの時の自分は人間だったから烈牙様のことを普通の魔族程度にしか思っていなかった。

 だから相手が圧倒的に烈牙様より格下の相手であっても「烈牙様がケガをするのでは」と心配だったのだ。


 だけどこの身が魔族に変わり烈牙様の近くにいると時々烈牙様の魔力を感じる時がある。

 それは思わず背筋がゾクリとするような強大な魔力だ。


 烈牙様も普段は魔力を制御しているが剣の稽古などの時に時折漏れ出る魔力はそれだけで相手を吹き飛ばせるぐらいの力がある。

 剣の稽古の相手が魔力の強い公子たちだからこそ烈牙様の剣を受け止めることができているだけ。


 魔族に生まれ変わった私にはそれが分かるようになった。


 普通の魔族なら烈牙様の剣の稽古相手にはなれないだろう。

 だから私に教える時はその僅かに漏れ出る魔力も制御しないとなので烈牙様にとっては面倒なことのはずだ。


 でも烈牙様は嫌な顔ひとつ見せない。

 本当に優しい方なのだ。


 そのお礼も兼ねてこのお守りを渡したい。

 もちろん一番は烈牙様の無事を祈ってだけれど。


 そんな思いを抱いて烈牙様の帰りを待っているとその日のお昼頃に烈牙様はお戻りになられた。

 出迎えた私を見て烈牙様は「お茶を持って来い」と命じたので私は大急ぎでお茶の準備をして烈牙様の私室に向かった。


 私室に入ると烈牙様はお風呂に入ったのかゆったりとした室内着に着替えて黒い髪も濡れた状態でソファに座っている。

 無防備にも見えるそのお姿は烈牙様の美貌と重なるととても魅惑的な雰囲気を醸し出す。


 思わず胸がドキドキとしてしまうがその想いを抑えて紅茶を淹れた。

 どうやら烈牙様に大きなケガをされた様子はないようだ。



「お疲れ様でした。烈牙様」


「うむ。弱いくせにいろいろと罠を仕掛けて来るので少し手間取った」



 烈牙様は私が淹れた紅茶を飲む。



「盗賊の件ですか?」



 思わず私の口からその言葉が出てしまった。

 本来なら私は烈牙様の仕事に口を出せる立場ではないが烈牙様は気にする様子もなく答えてくださる。



「ああ。最近都から地方に物資を運ぶ商人たちの一行が盗賊にあう被害が増えてな。調査の結果、盗賊のアジトが分かったので殲滅してきたのだ」


「それはお疲れ様でした。さすがは烈牙様ですわ」


「なに、特別組織的な盗賊たちではなかったからな。ただ単に金品や女が欲しかったみたいだ」


「そうなんですか」


「盗賊は皆殺しにして女どもも解放した。これで隊商も安心して旅ができるだろう」



 皆殺し……

 まあ、当たり前か。烈牙様が直々に出向いて行って盗賊が無事に済むとは思えないもの。

 それでもアリシアにはそんな話はしなかったわよね。



 アリシアの時には仕事であっても敵を殺したとかいうことを烈牙様から聞いた覚えがない。

 やはり人間だったアリシアを気遣ったのだろう。



「真雪も人攫いの輩には気をつけろよ。お前の容姿は珍しい上に美しいからいい獲物になる」



 烈牙様に美しいと言われると嬉しいわね。

 たとえそれが単なる注意事項のひとつだったとしても。

 でも確かに獲物にならないように気をつけなくちゃ。



「私は大丈夫です。それともし良かったらなんですが…」


「なんだ?」



 私はポケットからお守りを出す。



「これはお守りです。烈牙様がおケガをしないようにと祈りを込めて作りました。受け取ってもらえますか?」



 お守りを渡すと烈牙様は受け取ってくれたが明らかに戸惑った様子。



「真雪が作ったのか?」


「はい。そうです」


「……私のために?」


「はい。ご迷惑でしたでしょうか?」



 私が不安に思って訊くと烈牙様は首を横に振る。



「いや、ありがとう。大事にする」



 烈牙様はさっそく首にお守りをかけてくれた。

 袋の部分を服の中にしまってしまえばお守りを持っているようには見えない。



「真雪が私の心配をしてくれるのはいい気分だ」


「もちろん心配いたします。烈牙様は私の大切な主人あるじなのですから」


「そうか。主人か……」



 本当は想い人だからと言いたかったが言えば私の想いが烈牙様にバレてしまう。

 「真雪を妻に迎えるつもりはない」と言われた言葉が私の頭を過ぎった。



 今は烈牙様のお傍にいるだけで満足しなければ。

 焦ってはダメよ、真雪。



「今夜の咲夜祭の約束は覚えているか?」


「はい。もちろんです。夕食後に馬屋の前ですよね」


「そうだ。今夜は楽しもう。では私は少し寝る」


「承知しました。おやすみなさいませ」



 今は盗賊退治の疲れを癒して欲しい。

 でも烈牙様と行ける咲夜祭は楽しみね。





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