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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
8章 第二次侵攻戦
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第87話 時代の犠牲者






 アルゴンが新たな姿になった頃。

 フォルティスは自力でヴィクテムの応急処置を施し、再びの戦線復帰を目指していた。

 だがブースターの動作が不安定であり思うようには動けない。


「吹かし過ぎたか……だが、グズるなら調整するだけだ」


 それを出来るのがマニュアル操作の強みである。

 操作盤から出力レベルを細かく調整し、ヴィクテムはアルゴンとシヴァの戦闘エリアへと合流した。


「前を開けろ!!」

「ん? 良いのか?」

「多少の傷、構いはしない!!!」


 アルはシヴァを取り囲んでいたビットをいくつか動かして障害を排除する。

 爆炎の晴れた先にあるのは真正面から待ち構えるシヴァだ。


『そんな見え透いた攻撃、そう簡単に受ける訳が無いじゃないか』

「クッ……!」


 片腕が使いにくい状態で大剣を使うのは骨が折れる。

 その上ブースターの調子も悪いと来れば、流石のフォルティスでも空中に長く留まることが出来ない。


 空中では勢いを殺す余力が無く、フォルティスは草原に着地すると同時に大きく回転させる事で何とか勢いを殺す。


「左手はほぼ使えないが……ブースターは動く、ならまだ手はある」


 追撃しようとしたシヴァにはアルゴンが横槍を入れ、そのままビットで囲んで叩いている。

 上を見上げたヴィクテムは剣を置いて大きく跳躍すると、ブースターを全開にして飛び蹴りを仕掛ける。


「ハァッ!」

『まだ来ると言うのかい? いい加減キミもしつこい男だね』


 攻撃を受ける価値も無い。

 フォルティスの悪足掻きは当然のように回避される。


「ッチ……!!」


 もうヴィクテムに何も出来ないと判断したエルは視線をアルゴンに向ける。


 だがフォルティスはまだ諦めていない。

 彼は隙間風が吹き、警告の鳴り響くコックピットの中で次の一手を探していた。


「フォルティス! コレを使って下さい!!」

「了解した、心遣い感謝するッ!」


 アルはビットを飛ばして数枚のシールドを作る。

 着地出来るコースに居るヴィクテムはそのままシールドに着地するが、衝撃には耐えきれず崩壊する物がほとんどだ。

 それでも残った最後の一枚を踏み込み、今度はシヴァの背中へと顔を向ける。


「俺はいつも誰かに助けられてばかり、情けない英雄だよ全く!!」


 大きく跳躍すると同時に、フォルティスはいくつかのスイッチを操作して右脚を爆破する。

 シヴァが気付いた頃には迎撃するしか無い程の加速力を持ち、拳を握り込んでいた。


『シールドをッ、踏み台にしただと……!?』

「アル、ビットを俺ら側に集めろ!!」

「了解です!!!」


 ジンの指示はフォルティスの決定打を更に確実な物とする布石である。

 シールドを形成していたビットがアルゴンへと集まれば、自然とシヴァの視線もそちらに流されてしまうだろう。


『キミ達が何をしようとも、どれだけ足掻こうと……!』

「無駄にはしないッ!!」


 ヴィクテムは武器を持っていない。

 故にエルの優先度が僅かに下がった。


 だが唯一残されていたシールドビットはソードビットへと変形し、ヴィクテムの手へと収まる。

 これまで彼が持ってきた武器に比べて小さなそれは、瞬く間にシヴァの背中に深々と突き刺さり確かなダメージを与えた。


『何……!』

「エル、知ってるか? 俺達は背中が弱点らしいぜ」

『そんな物ォ!!』


 エルは機体スペックに絶対的な自信があるからこそ、ヴィクテムを無視出来ていた。

 だがフォルティス相手に行うそれはただの慢心でしか無い。


 最高の使い手を得たヴィクテムは嬉々としてチャンス(ソードビット)を掴み、深々と差し込んだ。


「流石ですね……」

「あぁ、覚悟のレベルが違う」


 絶体絶命の状況でありながら反撃に出る判断、そして確実に突き刺す妙技は流石の熟練度と言える。

 シヴァも必死に引き剥がそうと動くが、ヴィクテムの食らいつき具合はそれ以上だ。


『あまりにもしつこいのであれば、キミを破壊するだけだ!!』

「くっ!」


 ヴィクテムは突き刺した剣を決して手放さない。

 だがそれも次の一撃には繋がらず、スペックのゴリ押しで装甲を剥がされるという結果に終わる。


『中々やるよ、相変わらず。でも……右手を壊せばキミはもう戦えないだろう!!』

「フォルティス!!!」

「俺に構うな!!」


 シヴァの猛攻は止まらず、フォルティスの足掻きも終わらない。

 彼は弱点を叩く事が自身の役割であり、犠牲となってでもジンに繋げる事が唯一の贖罪だと考えているからだ。


『いい加減に! 落ちろ!!』

「ぐぅ!!」


 振り下ろされた拳を受け止めた右腕は半壊してしまう。

 ブースターを使うも、勢いを殺しきれずヴィクテムは再び墜落する。

 フォルティスは素早く右腕のエネルギー供給をカットし、関節の固定ボルトを爆破して右腕パージした。


「まだだ!!」


 装甲の頑丈さに何度も助けられたが、損傷具合は酷いの一言に尽きる。

 そんな状況を自覚しながらも、諦めきれないフォルティス機体と自身に鞭を打つ。

 左脚もブースター代わりに爆破して飛び上がり、アルの用意したシールドも足がかりに片腕だけで食らいついた。


『知らなかったよ。ヴィクテムのポテンシャルも、キミの愚かさもッ!!』

「今更だな!!!」


 強引な運用によって竜の牙は既に折られている。

 武器としての機能はほとんど失われてもなお、必死に牙を突き立てて装甲を引き剥がそうとした。

 だがヴィクテムにはそれをするだけの余力すら残されていない。


『今度こそ地に堕ちるがいい、過去の英雄よ』

「「フォルティス!!!」」


 自爆すら視野に入れていたが、肘打ちで強引に引き剥がされたヴィクテムは回し蹴りで地面へと叩き落された。


 アルゴンはシヴァに睨まれ動けない。

 近くに居たルクシオンがアルの報告で向かったものの、その(救援)は届かずヴィクテムは爆散した。


『英雄様と言っても所詮は過去の栄光。ボクの敵じゃ無かったようだね』

「この野郎ォ……!」


 死者の冒涜は許さない。

 それはジンの心得であり、ゲームだろうが現実だろうが関係無い。


 燃えたぎる怒りはアルゴンに力を与える。


『さぁ……これで邪魔者は居なくなった。ボク達はボク達で、思う存分に戦うとしよう』


 シヴァは両手を広げて宣言する。

 その背中にヴィクテムの破片が襲いかかった。


『おっと』


 シヴァが避けたのは、ヴィクテムの中でも最も硬いと言われていた竜の頭部パーツ。

 左腕を構成していたパーツの一つである。


「よく避けてくれましたね」

『何をだい?』

「掴みますよ、ジン!」

「あたぼうよ!!」


 シヴァと向き合っていたアルゴンは素早く反転して竜の頭を追いかける。

 そこにあるのは瓦礫とケーブルと煙に包まれた大剣であった。


「借りるぞ、フォルティス……」


 アルゴンは大剣を掴み、余分な物を振り落とすようにして振る。

 持ち手に絡みついていた細長い煙も同時に離散した。


「接続確認。登録名はエクスキューショナーズ・ソードです」

「断罪者の剣か。良い名前してんじゃねぇの」


 サブモニターに表示が増えると共にエネルギーを受け取った刀身が発光を始める。

 アルゴンはシヴァへとその切っ先を向けた。


『不意打ちで失敗したと言うのに……今更そんな武器を持った所で何になると言うんだい?』

「武器は敵を攻撃する為にある。当たり前だろう!!」


 両手で構えたアルゴンはシールドを足場にし、一気に踏み込んで斬撃を繰り出す。

 シヴァは難なく防御したが、それと同時に背中が爆発した。


『なっ、何だ!?』

「流石は英雄。置き土産もしっかり忘れていませんね」

「凄まじい執念だぜ、ったく」


 ヴィクテムの突き刺した剣はシールドを構成していたビットの一つが変形した物。

 目視範囲であればアルの指示で動かす事も形を変える事も出来るが、十数秒の形状固定指示が与えられていた。


 フォルティスはこのタイミングで使えるように仕込んでいた。


『謀ったな……!』

「そうだ。お前が馬鹿にした英雄様が、やってくれたんだ!!」


 役目を終えたビットは再びアルゴンの近くに戻される。

 背中を破壊されたシヴァは急激な出力低下を見せたが、対するアルゴンは出力が上昇し続けていた。


『ありえない……こんな結果、あるはずが無いッ!』


 エルは必死に機体を制御しようとする。

 だがブースター出力は安定せず、攻撃せずとも高度は落ち続けていた。


「不可能を可能に出来るのがゲーム、そしてプレイヤーって生き物だ!!」

『バカが、ここは現実だぞ!!!』

「お前にとってはなッ!!!!」


 ジンはフォルティスから託された大剣をアッパーカットの要領で大きく振り上げた。

 それも単調な故に今まで通り防がれてしまい、アルゴンも重量によって振り回されるという結果で終わる。

 だがシヴァは衝撃を受け止めきれずに弾き飛ばされた。


 何度か打ち込めば感覚を掴み順応していくアルゴンに対し、シヴァの装甲はいくつか剥がれ落ち始めている。


『こんな事が、あるはずが無い……!』


 シヴァは崩壊しつつある機体でレーザーキャノンを構える。

 全方位から襲いかかったソードビットのほとんどは装甲で弾かれるが、中には装甲に突き刺さる物も出てきた。


『このっ!』

「覚悟しろ……」


 突き刺さったソードビットは僅かな推力を効かせ、シヴァを空中で貼り付けにする。

 追加で展開されたシュータービットは四肢のレーザークローと腰のレーザーライフルを破壊し、足を止めたアルゴンは正面へ構えた大剣に左手を当てて沈黙している。


「……チャージ完了!」

「よし来た、んじゃ行くぞ!! ブレイズエクスキュージョンッ!!!」

『ウソだ……』


 天高く掲げた剣から炎が溢れ出す。

 その勢いはアークプリズンで展開したドームシールドすら突き破り、デリート・エフェクターに負けず劣らずの巨大な炎の柱を作り出した。


『ボクが、遊び半分で世界を越えた、余所者に!!』

「お前は、世界を楽しむ人間に!!!」

「『負けるんだ(はずが無い)!!!!』」


 勢い良く振り下ろされた刀身に炎の柱も追従する。

 わざわざ展開したアークプリズンは切り裂かれて崩壊し、シヴァは最大火力のレーザーキャノンで必死の抵抗を見せた。


『お前ら、人間なんかに!!!』


 エルは制御信号を必死に送る。

 だが機体は答えず出力を低下をさせた。


『お前もボクを裏切るって言うのか!?』

「はぁぁぁ!!」


 振り下ろされた炎の柱がシヴァを包み込む。

 地面まで達した所でアルゴンは剣を振り抜き、炎を止めると今度は横向きに剣を構える。


「トドメだ!!!」

『まだだ!まだ……!!』


 シヴァは融解しつつある機体で抵抗しようとする。

 だがブースター全開のアルゴンが一気に近づき振り抜くと、ワイバーンユニットの装甲ごと両断した。


「――っしゃぁ!!!」

『ハッ、ハハ……アハハハ!!!!』


 もはや反撃する余力も残っていない。

 力なく墜落したシヴァはデリート・エフェクターへと激突し爆散した。


「おいバカ! 落とす方向は考えろ!!」

「あっ、やべ!? ……いや、でもアレくらい大丈夫だろ!!!」

「さぁな。残党狩りと調査はこちらでやっておく、貴様は施設に潜入しろ」

「りょーかい。地上は頼んだぜ、ルナクスさんよ」






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